第14回 認知症の人とのかかわり方のヒント(4)−本人が何度も繰り返す間違いへの対応
何度も質問を繰り返していませんか?
認知症の人とともに暮らす家族には、さまざまな悩みが出てきます。そのひとつに、「本人が言っていることの間違いをどの程度まで訂正するべきなのか」という課題があります。
以前(第6回)にも書きましたが、認知症の人をケアする家族の心にはいくつかの段階があって、「否認」の段階にある時には本人の症状を無意識のうちに否定し、まるで病気ではないかのように何度も確認します。家族が「認めたくない」と無意識に思っているのですから無理もありません。何度も質問を繰り返して、本人が答えられるかどうかを確かめ、答えられれば安心し、間違えると家族の側が不安になって、正しい答えが返ってくるまで何度も同じことを問い続けるようなことさえあります。
繰り返しがあまりにも過剰になると、聞かれている本人も不安と自信喪失からイライラが増します。中には「馬鹿にするな」と怒り出す人もいるでしょう。家族にとっては確認のために聞いているのに、本人が怒り混乱すると、その人の認知症は悪化します。私たちは自分の不安を払拭するために認知症の人への質問を繰り返していないか、もう一度胸に手を当てて考えてみましょう。
以前(第6回)にも書きましたが、認知症の人をケアする家族の心にはいくつかの段階があって、「否認」の段階にある時には本人の症状を無意識のうちに否定し、まるで病気ではないかのように何度も確認します。家族が「認めたくない」と無意識に思っているのですから無理もありません。何度も質問を繰り返して、本人が答えられるかどうかを確かめ、答えられれば安心し、間違えると家族の側が不安になって、正しい答えが返ってくるまで何度も同じことを問い続けるようなことさえあります。
繰り返しがあまりにも過剰になると、聞かれている本人も不安と自信喪失からイライラが増します。中には「馬鹿にするな」と怒り出す人もいるでしょう。家族にとっては確認のために聞いているのに、本人が怒り混乱すると、その人の認知症は悪化します。私たちは自分の不安を払拭するために認知症の人への質問を繰り返していないか、もう一度胸に手を当てて考えてみましょう。
ストレスで疲弊しないために
では、家族は認知症の人が何十回も同じことを聞いてきて、理解できなくなってきても、毎回にこやかに対応できるでしょうか。
私がかつて行った臨床観察からは、どんなに熟練した「聞き手」であっても、同じことを5回以上聞かれると過剰なストレスになって、ケアする家族の心が疲弊してしまうことがわかりました。「たったの5回で?」と思う方も多いでしょう。ケアする日々の中では、何十回も同じことを聞き返されながら耐えている家族もいるのですから。
でも、私は常に家族介護者に対しては、5回以上同じことを聞かれた場合には、「やんわりと」であればそのことを指摘してもよいと言うようにしています。何十回も耐えた後、ついに家族が我慢できなくなって大声を張り上げ、「もう、そのことは何十回も聞いたじゃないか」と怒鳴ったとしましょう、それを聞いた本人にとっては、「その時はじめて聞いたにもかかわらず、家族が怒鳴り声を上げて自分を叱った」と同じことになるからです。
だから介護家族が疲弊しない程度、5回を過ぎたあたりで穏やかに「もうそのことは聞いたョ」とさりげなく口に出す程度で良いのではないでしょうか。あくまで雰囲気は柔らかく、できれば表情も笑顔で……。
認知症のケアは、理論として書くのは簡単なのですが、それを実践するのはとても大変です。その大変さに向き合っている介護家族のみなさん、あなたは良くやっているんですョ。
次回は「その人のためにつく嘘について」考えましょう。
私がかつて行った臨床観察からは、どんなに熟練した「聞き手」であっても、同じことを5回以上聞かれると過剰なストレスになって、ケアする家族の心が疲弊してしまうことがわかりました。「たったの5回で?」と思う方も多いでしょう。ケアする日々の中では、何十回も同じことを聞き返されながら耐えている家族もいるのですから。
でも、私は常に家族介護者に対しては、5回以上同じことを聞かれた場合には、「やんわりと」であればそのことを指摘してもよいと言うようにしています。何十回も耐えた後、ついに家族が我慢できなくなって大声を張り上げ、「もう、そのことは何十回も聞いたじゃないか」と怒鳴ったとしましょう、それを聞いた本人にとっては、「その時はじめて聞いたにもかかわらず、家族が怒鳴り声を上げて自分を叱った」と同じことになるからです。
だから介護家族が疲弊しない程度、5回を過ぎたあたりで穏やかに「もうそのことは聞いたョ」とさりげなく口に出す程度で良いのではないでしょうか。あくまで雰囲気は柔らかく、できれば表情も笑顔で……。
認知症のケアは、理論として書くのは簡単なのですが、それを実践するのはとても大変です。その大変さに向き合っている介護家族のみなさん、あなたは良くやっているんですョ。
次回は「その人のためにつく嘘について」考えましょう。