第10回 認知症ってどんな病気?(10)
周辺症状が現われるのには理由がある
認知症の周辺症状の治療について、私は医者としていつも悩みます。周辺症状を治療するというと、よく「暴力や混乱を押さえておとなしくさせること」と誤解されます。しかし、それは治療ではありません。本来認知症の人が持っていた「その人らしさ」を回復できてこそ、周辺症状を改善して治療したと言えるのです。
ケアの世界では、認知症の人に周辺症状が現われるのには理由があることが知られています。ケアする側が不安になっていると、認知症の人もその気持ちを察知して不安になるといった具合に、ケアをする側と受ける側の微妙なバランスの乱れが周辺症状につながることがあるのです。
たとえば、中等度の認知症の人が周囲に対して暴力的な行為をとった場合、その人が「攻撃される!」と思うような雰囲気が作り出されている可能性があります。そのため、自分を守ろうとする手段として暴力的な行為がみられるのです。それを「攻撃的になった」と短絡的に解釈することは、パーソンセンタードケアにはなりません。
ケアの世界では、認知症の人に周辺症状が現われるのには理由があることが知られています。ケアする側が不安になっていると、認知症の人もその気持ちを察知して不安になるといった具合に、ケアをする側と受ける側の微妙なバランスの乱れが周辺症状につながることがあるのです。
たとえば、中等度の認知症の人が周囲に対して暴力的な行為をとった場合、その人が「攻撃される!」と思うような雰囲気が作り出されている可能性があります。そのため、自分を守ろうとする手段として暴力的な行為がみられるのです。それを「攻撃的になった」と短絡的に解釈することは、パーソンセンタードケアにはなりません。
薬物療法には細心の注意を
時にはその説明だけでは語り尽くせないこともあります。認知症のために脳が萎縮する場合や脳血管が詰まることで、どうしても避けられない病気の症状として、本人の気持ちや心とは別の興奮や攻撃性が出ることもあるからです。そのような場合には、抑制にならない範囲で薬物療法を行います。混乱をそのままにしていると、脳や心臓などへの負担が高まり、結果的に認知症の悪化が早まってしまいます。それを防ぐことが目的です。
しかし、現在では精神か領域で使われる非定型抗精神病薬を使うことで、突然死が発生する可能性も大きくしてしまうことがわかり、薬用量には細心の注意を払うとともに、使用する機会を限定しなければなりません。そのかわりに漢方薬によって安静を図ることや薬以外の方法によって周辺症状を改善することが主流になっています。
くり返しますが、周辺症状の治療目的は決してその人を「おとなしくさせる」ことではありません。周辺症状がおさまり安定した認知症の人からは、こちらが思ってもみないほど鮮やかな感情が見えることがあります。その表情を再び見ることができてこそ、「治療の一助になった」と感じることができるのです。
次回は、9月8日に公開予定です。
しかし、現在では精神か領域で使われる非定型抗精神病薬を使うことで、突然死が発生する可能性も大きくしてしまうことがわかり、薬用量には細心の注意を払うとともに、使用する機会を限定しなければなりません。そのかわりに漢方薬によって安静を図ることや薬以外の方法によって周辺症状を改善することが主流になっています。
くり返しますが、周辺症状の治療目的は決してその人を「おとなしくさせる」ことではありません。周辺症状がおさまり安定した認知症の人からは、こちらが思ってもみないほど鮮やかな感情が見えることがあります。その表情を再び見ることができてこそ、「治療の一助になった」と感じることができるのです。
次回は、9月8日に公開予定です。