Vol.7 脳トレと結晶知能
キーワード
☆<結晶知能>☆
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
脳のグレードアップ
計算ドリルなどを用いた脳トレでは、速く、そして正確にできたとしても、新しい知識が加わるわけでありません。ところが、結晶知能を磨くと、思考内容そのものが変化してきます。つまり、結晶知能は、計算ドリルなどの脳トレとはまったく違う次元の知能であり、高める方法もまったく異なっているのです。
もちろん、脳トレの効果を否定しているわけではありません。日頃、
脳トレなどで頭を働かせる機会をたくさん持っている人は、頭のいろいろな機能を上手に組み合わせて働かすことができるらしいということがわかってきました。
専門的には、認知的予備力を高めるといいます。
現在持っているその人の知的能力を、より良く働かせることができるようになるということです。ですから、計算が速くできるようになれば、自信がつき、達成感があるというだけではなく、自分の能力をより効率的に使えるようになります。
しかし、それでもやはり、その人が持っている知的能力がグレードアップして、それ以上の能力になることはないのです。
もちろん、脳トレの効果を否定しているわけではありません。日頃、
脳トレなどで頭を働かせる機会をたくさん持っている人は、頭のいろいろな機能を上手に組み合わせて働かすことができるらしいということがわかってきました。
専門的には、認知的予備力を高めるといいます。
現在持っているその人の知的能力を、より良く働かせることができるようになるということです。ですから、計算が速くできるようになれば、自信がつき、達成感があるというだけではなく、自分の能力をより効率的に使えるようになります。
しかし、それでもやはり、その人が持っている知的能力がグレードアップして、それ以上の能力になることはないのです。
脳トレと認知症
認知リハビリテーションという言葉があります。例えば、脳卒中の後遺症として失語症を呈してしまう方がたくさんいます。言葉をしゃべったり、書いたりできなくなるタイプや、他者の言うことや文章が理解できないタイプなど、いくつかのタイプがあります。
しかし、その人たちに言語訓練をすると、かなり回復します。脳卒中によって損傷した脳細胞の周囲にあって、これまであまり働いていなかった脳細胞を、言語のリハビリによって刺激し、目覚めさせてやるという方法です。
これは脳の予備力をターゲットにした脳トレといわれ、先程の認知的予備力に対する脳トレとは少し異なっています。
ですから、認知症にも脳トレは効果があると考える研究者もいます。
しかし、失語症が脳の左半球にある言語野という場所に限定されているので、それに関する認知機能である言語のみを訓練すればよいのですが、認知症、特にアルツハイマー病は、障害が脳全体に広がる病気なので、訓練のターゲットを絞ることが困難なのが、第1の問題点です。
第2の問題点は、失語症は再度脳卒中を起こさない限り進行しないのですが、アルツハイマー病は病状の進行を食い止めることができないので、脳トレでは治療することはできないということです。
そして、そもそもの問題ですが、失語症の原因の多くは明確であるのに対して、アルツハイマー病の原因は今もって不明です。ただし、脳内のある種のタンパク質の異常が引き金になって、脳細胞や脳内の化学物質に異常を起こしてしまうという仮説が有力と考えられています。もしも、この仮説が正しいとしたら、脳トレでこのような異常を防ぐことは、おそらく不可能でしょう。
以上のことから、脳トレがアルツハイマー病を予防したり、治療したりすることは、かなり難しいことなのかもしれません。
結晶知能と認知症
もちろん、結晶知能を高めるトレーニングをしたからといって、やはりアルツハイマー病などの認知症を予防したり、治療したりすることはできません。しかし、結晶知能を高め、脳がグレードアップした人は、人間としての品性も高まります。人としての品性はたとえ認知症になっても保たれるので、誰もが進んでお世話したくなるような人物になることも可能です。認知症を予防できればそれに越したことはありませんが、それが困難な現状では、結晶知能を高めて、より良いケアを受けられるだけの品性を高めておくことが大事なことかもしれません。
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佐藤眞一先生が会長を務める老年行動科学会のホームページは、こちらからご覧になれます。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsbse/
日本老年行動科学会は、高齢者心理の研究者、医療・看護等の専門家、高齢者ケアの実践者等、様々な人々が集い、高齢者の徘徊や行動障害など心の問題に根ざした課題の解明に努め、高齢者の行動・生活改善とケアの向上に取り組んでいます。
現在、月例の高齢者ケースワーク研究会(ACS)、ACSのノウハウを基にした老年行動科学講座を開設しています。