Vol.1 アクティブシニアに革命を起こす「結晶知能」とは?
さまざまな経験を積み、世の中の酸いも甘いも味わってきたシニア世代が、新たな大人の文化を作り出せるか――。これは、高齢社会ニッポンにとって極めて重要な課題です。
若者文化のあふれる現代日本が、真の大人の文化を実現できるかどうか。これは、シニア世代の経験と英知がどれだけ具現化するかにかかっています。
このコラムでは、「結晶知能」を高めることで、シニア世代がより良い人生を実現し、豊かな大人の文化を構築するためのヒントを提供したいと思います。
若者文化のあふれる現代日本が、真の大人の文化を実現できるかどうか。これは、シニア世代の経験と英知がどれだけ具現化するかにかかっています。
このコラムでは、「結晶知能」を高めることで、シニア世代がより良い人生を実現し、豊かな大人の文化を構築するためのヒントを提供したいと思います。
現代社会は中高年に優しくない!?
現代社会は、シニア世代の脳の衰えを容赦なく糾弾し、攻撃してきます。すばやく、誤りなく、正解を出すことを求めてきます。シニア世代は、このような社会の要求にどのように対抗するかを考えていかなければなりません。年をとると脳の力が低下すると思っていると、その通りになってしまうからです。努力もせずにあきらめ、挑戦する好奇心も勇気もなくなり、まさに老いさらばえてしまうのを待つばかり。こんな中高年者でいたいと思う人はいないはずです。だから人々は老いに抵抗し、若さを維持し続けようとするのです。
若さを保つにも“限界”が…
若さを少しでも保てるなら、それも悪いことではありません。しかし、それもいつか限界がやってきます。そのようなとき、「年寄りの冷や水」と揶揄されない別の道があるといったら驚きますか? つまり、闘う相手は「老い」ではないということです。アンチ(否)エイジングではなく、プロ(賛)エイジングをどう達成するか、なのです。「経験を積み重ねることで得られる知的高みに登る」というチャレンジをしてみようではありませんか!
流動知能と結晶知能
「結晶知能」という言葉をご存じでしょうか? これは心理学の専門用語である結晶性知能(crystallized intelligence)を、私が呼びやすく変えたものです。
学習や経験の影響をほとんど受けず、脳の性能とでも呼べる知能を、流動知能(流動性知能、fluid intelligence)といいますが、流動知能は脳の働きそのものを反映しているため、脳機能の衰えとともに低下してしまいます。
それに対して、結晶知能は、学習や経験によって高めることのできる知能のことで、脳が身体器官としての成長を止めた後も、高めることができる能力なのです。
大人の知能について論じる場合には、この両者を考えておく必要があります。なぜなら流動知能と結晶知能は、加齢の英訳であるエイジング(ageing(英)、aging(米))の2側面を端的に示しているからです。つまり、流動知能はまさに老衰(エイジング)していく知能なのですが、結晶知能はワインやウイスキーのように熟成(エイジング)する知能だからです。
学習や経験の影響をほとんど受けず、脳の性能とでも呼べる知能を、流動知能(流動性知能、fluid intelligence)といいますが、流動知能は脳の働きそのものを反映しているため、脳機能の衰えとともに低下してしまいます。
それに対して、結晶知能は、学習や経験によって高めることのできる知能のことで、脳が身体器官としての成長を止めた後も、高めることができる能力なのです。
大人の知能について論じる場合には、この両者を考えておく必要があります。なぜなら流動知能と結晶知能は、加齢の英訳であるエイジング(ageing(英)、aging(米))の2側面を端的に示しているからです。つまり、流動知能はまさに老衰(エイジング)していく知能なのですが、結晶知能はワインやウイスキーのように熟成(エイジング)する知能だからです。
「結晶知能」は、シニアにとって理想の知能
計算能力を例に、この2つの知能を考えてみましょう。
計算能力も経験を積み重ねていくことが、統計データを分析する場合や数学を応用する分野では極めて重要であることがわかるでしょう。このような計算の場合は、結晶知能が重要な役割を担っています。しかし、脳ドリルなどのように単純でスピードを競うような計算は、大人はどんなに頑張っても小学生に勝つことができません。なぜなら、ハードウェアとしての脳の働き、すなわち脳の性能は、せいぜい20代がピークで、後は衰えていくだけだからです。
そうであれば、子どもや若者が得意な流動知能を高めることに時間を費やすよりは、中高年向きの知能である結晶知能に磨きをかけるほうが良いのではないでしょうか。中高年者にあって子どもや若者にないのは、まさに経験なのです。経験によって積み上げられた“結晶知能”こそ、若者たちからも求められている大人の知能なのです。
計算能力も経験を積み重ねていくことが、統計データを分析する場合や数学を応用する分野では極めて重要であることがわかるでしょう。このような計算の場合は、結晶知能が重要な役割を担っています。しかし、脳ドリルなどのように単純でスピードを競うような計算は、大人はどんなに頑張っても小学生に勝つことができません。なぜなら、ハードウェアとしての脳の働き、すなわち脳の性能は、せいぜい20代がピークで、後は衰えていくだけだからです。
そうであれば、子どもや若者が得意な流動知能を高めることに時間を費やすよりは、中高年向きの知能である結晶知能に磨きをかけるほうが良いのではないでしょうか。中高年者にあって子どもや若者にないのは、まさに経験なのです。経験によって積み上げられた“結晶知能”こそ、若者たちからも求められている大人の知能なのです。
「結晶知能」で豊かな人生を実現しよう
結晶知能は、人生後半期の生き方が大きく変わってしまうほどの強い力をもっています。中高年以降の自分を、「賢者」にするか「愚者」にしてしまうか、豊かな人生後半期を手に入れられるかどうかは、結晶知能を高められるか否かにかかっているのです。
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今後、このコラムでは、結晶知能とは具体的にどのような知能なのか、どうすれば結晶知能を伸ばすことができるのか、日常生活で簡単にできる実践法を紹介していきたいと思います。
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今後、このコラムでは、結晶知能とは具体的にどのような知能なのか、どうすれば結晶知能を伸ばすことができるのか、日常生活で簡単にできる実践法を紹介していきたいと思います。
参考文献
佐藤眞一監修『「結晶知能」革命─50歳からでも「脳力」は伸びる!』小学館
- 関連リンク
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佐藤眞一先生が会長を務める老年行動科学会のホームページは、こちらからご覧になれます。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsbse/
日本老年行動科学会は、高齢者心理の研究者、医療・看護等の専門家、高齢者ケアの実践者等、様々な人々が集い、高齢者の徘徊や行動障害など心の問題に根ざした課題の解明に努め、高齢者の行動・生活改善とケアの向上に取り組んでいます。
現在、月例の高齢者ケースワーク研究会(ACS)、ACSのノウハウを基にした老年行動科学講座を開設しています。