Vol.9 結晶知能を高めるコツ
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☆<結晶知能>☆
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
「ない=盗まれた」と考えるワケ
結晶知能を高めるコツは、脳の特性を良く知ることです。
たとえば、認知症の方は、大事にしているものが見つからないときに、「盗まれた」と言うことがよくあります。
「ない=盗まれた」と短絡的に結び付けてしまうのは、それが自己否定をしないもっとも簡単な方法であるだけでなく、そう結論づけることで、脳が安定するからだとも言われています。
このような考え方をするのは、認知症の方に限ったわけではありません。机の上にボールペンを置いたまま、ちょっと席をはずしたのですが、戻ってみるとそのボールペンが見当たりません。
「見当たらないけれど、いったいどうしたのだろう。どこかにしまったのだろうか。それともどこかに置き忘れたのだろうか……」と思いめぐらせることは、人間にとって脳に負荷がかかり続け、不安定で、嫌な状態です。
脳は、それよりも早く決着をつけたい、安定したいという方向に向かいます。
そこで、私たちがまず初めにすることは、「私がここに置いておいたボールペンを、誰か知りませんか?」と、周囲の人たちに尋ねることではないでしょうか。
実際には、無意識に机の引き出しにしまっていたという結末に至ることがほとんどであることを体験的に知っていながら、やはり私たちは無意識にこう考えてしまうのです。
というのは、こう考えるほうが、脳が安定しやすいからです。なぜなら、脳は私たちが考えている以上に怠け者だからです。
たとえば、認知症の方は、大事にしているものが見つからないときに、「盗まれた」と言うことがよくあります。
「ない=盗まれた」と短絡的に結び付けてしまうのは、それが自己否定をしないもっとも簡単な方法であるだけでなく、そう結論づけることで、脳が安定するからだとも言われています。
このような考え方をするのは、認知症の方に限ったわけではありません。机の上にボールペンを置いたまま、ちょっと席をはずしたのですが、戻ってみるとそのボールペンが見当たりません。
「見当たらないけれど、いったいどうしたのだろう。どこかにしまったのだろうか。それともどこかに置き忘れたのだろうか……」と思いめぐらせることは、人間にとって脳に負荷がかかり続け、不安定で、嫌な状態です。
脳は、それよりも早く決着をつけたい、安定したいという方向に向かいます。
そこで、私たちがまず初めにすることは、「私がここに置いておいたボールペンを、誰か知りませんか?」と、周囲の人たちに尋ねることではないでしょうか。
実際には、無意識に机の引き出しにしまっていたという結末に至ることがほとんどであることを体験的に知っていながら、やはり私たちは無意識にこう考えてしまうのです。
というのは、こう考えるほうが、脳が安定しやすいからです。なぜなら、脳は私たちが考えている以上に怠け者だからです。
脳は基本的に怠け者!?
皆さんは、難しい本を読むと眠くなってしまうということがありませんか? 私は、睡眠薬代わりに、ベッドサイドにはいつも本を置いておきます。寝る前に数行読み始めただけで、すでに疲れきっている私の脳は「おやすみ!」と告げてきます。
難しい本を読み始めると眠くなるというのは、脳が付加の大きすぎる難しいものを拒否し、排除しようとするからです。誰の脳も、基本的にはみな安定を求める怠け者なのです。
難しい本を読み始めると眠くなるというのは、脳が付加の大きすぎる難しいものを拒否し、排除しようとするからです。誰の脳も、基本的にはみな安定を求める怠け者なのです。
わざと脳を不安定な状態にしてみよう
たとえば、一気に書き上げてしまうことができないような長文を書く場合に、あなたはどうしますか? たいていの人は、ちょうど区切りの良いところまで書いてから中断します。
ところが、しばらくしてから続きを書き始めようしても、なかなか思うように書き始められません。すでに書き上げたところを読み返して、この続きはどのように書こうと考えていたのだろうか、とそのときの思考内容を思い出す努力をして、ようやく書き出すことができた、という経験は誰にでもあるはずです。
それに対して、何かの事情で不本意ながら切りの悪いところで中断すると、なぜかすんなりと書き始められることが多いようです。これは、切りの悪いところでやめると、中断している間中、脳の片隅に、何を書こうとしていたかということが引っかかり続けているからなのです。
結晶知能が伸びる下地づくり
つまり、わざと切りの悪いところで中断して、脳を不安定な状態のままにしておけば、必然的に脳は働き続け、思考し続けるというわけです。結晶知能とは思考内容そのものであり、思考し続けることで伸びていく知能ですから、脳の不安定さがとても大事なのです。そして、脳に負荷のかかった状態を楽しめるようになることが重要なのです。
そうなれば、しめたもの。結晶知能がグングン伸びる下地ができたことになります。
人の脳は安定を求める怠け者なのですが、同時に何事にも慣れてしまう柔軟性も持ちあわせています。ですから、不安定な状態にもすぐに慣れてしまいます。慣れてしまうと、逆に脳に負荷のかかっていない状態を物足りなく感じてしまうほどです。
そうなれば、しめたもの。結晶知能がグングン伸びる下地ができたことになります。
人の脳は安定を求める怠け者なのですが、同時に何事にも慣れてしまう柔軟性も持ちあわせています。ですから、不安定な状態にもすぐに慣れてしまいます。慣れてしまうと、逆に脳に負荷のかかっていない状態を物足りなく感じてしまうほどです。
劇的に毎日が変わる
そのような状態になれば、日常生活のなかで自然と結晶知能が高まっていきます。常に情報を希求するアンテナが働き始め、それまでは読む気にすらならなかった難しい本にチャレンジする気になったり、面倒で煩雑な問題を処理できるようになったり、考え続けることが面倒でなくなるどころか、楽しくさえなってくるのです。
そして、毎日のあなたの生活は、ガラリとその姿を変えてしまいます。いつも好奇心を持ち続け、思考をめぐらせ続けている自分に気づくことでしょう。
そして、毎日のあなたの生活は、ガラリとその姿を変えてしまいます。いつも好奇心を持ち続け、思考をめぐらせ続けている自分に気づくことでしょう。
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佐藤眞一先生が会長を務める老年行動科学会のホームページは、こちらからご覧になれます。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsbse/
日本老年行動科学会は、高齢者心理の研究者、医療・看護等の専門家、高齢者ケアの実践者等、様々な人々が集い、高齢者の徘徊や行動障害など心の問題に根ざした課題の解明に努め、高齢者の行動・生活改善とケアの向上に取り組んでいます。
現在、月例の高齢者ケースワーク研究会(ACS)、ACSのノウハウを基にした老年行動科学講座を開設しています。