Vol.21 性格と結晶知能
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☆<結晶知能>☆
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
遺伝子によって性格が決まる!?
近年、性格も遺伝子によって決まるという説が、注目を集めています。アメリカの精神科医・クロニンジャーが提唱している説で、「クロニンジャーの性格理論」と呼ばれています。この説では、性格を「遺伝的な影響を強く受ける4つの因子」と、「環境的な影響を強く受ける3つの因子」に分けています。
それにしてもなぜ性格が、遺伝子によって決まるのでしょうか? 簡単にいえば、脳は神経伝達物質の影響を受けるのですが、その神経伝達物質の分泌バランスなどが、遺伝子によって違ってくるからです。例えば、神経伝達物質の1つであるセロトニンには、精神を安定させる働きがあります。非常に単純化していえば、セロトニンを分泌しやすい遺伝子を持つ人は、安定した性格になるのです。
それにしてもなぜ性格が、遺伝子によって決まるのでしょうか? 簡単にいえば、脳は神経伝達物質の影響を受けるのですが、その神経伝達物質の分泌バランスなどが、遺伝子によって違ってくるからです。例えば、神経伝達物質の1つであるセロトニンには、精神を安定させる働きがあります。非常に単純化していえば、セロトニンを分泌しやすい遺伝子を持つ人は、安定した性格になるのです。
クロニンジャーによる性格分類
クロニンジャーによれば、「遺伝的な影響を強く受ける4つの因子」は、以下の通りです。
・新規性追求:好奇心や衝動性が強く、新しい行動を求める性格。
・損害回避:心配性で慎重な性格、リスクを恐れる性格。
・報酬依存:社交的、友好的、人情に厚い性格。
・固執:1つのことにこだわり、辛抱強く続ける性格。
それに対して、遺伝ではなく環境の影響を強く受ける性格的要素「環境的な影響を強く受ける3つの因子」は、以下の通りです。
・自己志向:個人的次元での成長。自分なりの価値観や対人関係の能力など。
・協調:社会的次元での成長。協調性のこと。
・自己超越:自己を超越した次元での成長。周囲の世界や自然との一体感。
・新規性追求:好奇心や衝動性が強く、新しい行動を求める性格。
・損害回避:心配性で慎重な性格、リスクを恐れる性格。
・報酬依存:社交的、友好的、人情に厚い性格。
・固執:1つのことにこだわり、辛抱強く続ける性格。
それに対して、遺伝ではなく環境の影響を強く受ける性格的要素「環境的な影響を強く受ける3つの因子」は、以下の通りです。
・自己志向:個人的次元での成長。自分なりの価値観や対人関係の能力など。
・協調:社会的次元での成長。協調性のこと。
・自己超越:自己を超越した次元での成長。周囲の世界や自然との一体感。
結晶知能を高める「冒険の遺伝子」
このなかで、結晶知能を高める可能性があると考えられるのが、「新規性追求」性格の元となる遺伝子、通称「冒険の遺伝子」です。この遺伝子をもって生まれてくると、その遺伝子によって生じる脳内物質<ドーパミン>のバランスによって、好奇心が強く、なんでも知りたい、やってみたい性格になるのです。
実際に、冒険家や登山家にはこの遺伝子をもつ人が多いのだそうですが、この遺伝子をもつ人は、新たな経験を次々に重ねていくことになります。新たな経験を積み、それについて考察し、さらに新たなことにチャレンジするという行為は、結晶知能を高める方法そのものです。したがって、冒険の遺伝子をもっている人は、結晶知能が高まりやすい性格の持ち主でもあるのです。
実際に、冒険家や登山家にはこの遺伝子をもつ人が多いのだそうですが、この遺伝子をもつ人は、新たな経験を次々に重ねていくことになります。新たな経験を積み、それについて考察し、さらに新たなことにチャレンジするという行為は、結晶知能を高める方法そのものです。したがって、冒険の遺伝子をもっている人は、結晶知能が高まりやすい性格の持ち主でもあるのです。
あくまでも性格は要素の一つ
冒険の遺伝子を持つ性格は、心理学でいうところの「開放性性格」、わかりやすく言い換えれば「知的探求性格」に相当します。知的探求性格とは、すなわち好奇心の強い性格のことです。ただし冒険の遺伝子をもつ知的探求性格でなければ、結晶知能が高まらないということではありません。あくまでも環境や生活習慣などと並んで、結晶知能を高める可能性のある要素の1つということです
また、知的探求性格だからといって、それがそのまま結晶知能の高さになるわけでもありません。保守的な性格の人よりは結晶知能を高めやすい、というだけのことであり、磨く努力をしなければ、結晶知能がひとりでに高まることはありません。
結局のところ思考する、すなわち経験を意味付けするという、後天的な要素が結晶知能にはいちばん重要です。冒険が好きなだけで考察しなければ、それはただの無謀な人です。偉大な冒険家と呼ばれる前に、命を落としてしまうでしょう。
また、知的探求性格だからといって、それがそのまま結晶知能の高さになるわけでもありません。保守的な性格の人よりは結晶知能を高めやすい、というだけのことであり、磨く努力をしなければ、結晶知能がひとりでに高まることはありません。
結局のところ思考する、すなわち経験を意味付けするという、後天的な要素が結晶知能にはいちばん重要です。冒険が好きなだけで考察しなければ、それはただの無謀な人です。偉大な冒険家と呼ばれる前に、命を落としてしまうでしょう。
環境を通じて結晶知能は遺伝する
役者や医者、芸術家などは二世の多い世界ですが、なぜ二世が多いかと考えると、生活環境や親の言動、すなわち親の結晶知能の自然な発露が、子どもに及ぼす影響があります。もちろん、親がどんな職業であっても、子どもは多かれ少なかれ親の属す世界の影響を受けます。しかし、門外漢の入り込みにくい特殊な世界では、子どもの頃からのその世界における特別な経験の積み重ねが、成人してからも大きな意味をもつのです。したがって二世とは、親の結晶知能が環境を通じて遺伝した存在、といってもよいのではないでしょうか。
結晶知能は文化にも影響を与える
ある地域や国家における文化も、同様に考えることができます。例えば、相撲や歌舞伎の様式美、完成された美しさは、それを美しいと感じる人々による世代間伝達、すなわち遺伝によって作られたものです。文化とは、そこに住む人々の行動の総体ですから、日本に住む私たちの行動の総体が、相撲や歌舞伎という文化を伝えてきた、ということになります。行動の総体は、行動する人の結晶知能に見合ったものになるため、結晶知能の高い人が多い国や地域では文化水準も高くなり、低い人が多いところでは、低くなってしまうのです。
- 関連リンク
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佐藤眞一先生が会長を務める老年行動科学会のホームページは、こちらからご覧になれます。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsbse/
日本老年行動科学会は、高齢者心理の研究者、医療・看護等の専門家、高齢者ケアの実践者等、様々な人々が集い、高齢者の徘徊や行動障害など心の問題に根ざした課題の解明に努め、高齢者の行動・生活改善とケアの向上に取り組んでいます。
現在、月例の高齢者ケースワーク研究会(ACS)、ACSのノウハウを基にした老年行動科学講座を開設しています。