Vol.12 結晶知能を高める方法4:こだわる!
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☆<結晶知能>☆
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
「結晶知能を高める方法」の第4回目は「こだわる!」です。
こだわりとは、子どものような純粋さで物事を追求することです。究極の「こだわり」は学者かもしれません。「学者,オタクのなれのはて」などと言われるほどに、「世の中でほかにだれが知っているだろうか」と思うような不思議なことをよく知っている学者がいます。彼らは、本当に嬉しそうに、楽しそうに、事細かに語ってくれます。
このような学者のようにとは言いませんが、こだわることで、彼らの幸せの一端を味わいながら、結晶知能を伸ばすこともできるのです。こだわることで身につく豊富な知識や蘊蓄(うんちく)が結晶知能のベースを作るからです。このベースが深まり、広くなるにつれて、私たちのなかの選択肢はどんどん増え、いくつもの方向が見えてくるはずです。
こだわりとは、子どものような純粋さで物事を追求することです。究極の「こだわり」は学者かもしれません。「学者,オタクのなれのはて」などと言われるほどに、「世の中でほかにだれが知っているだろうか」と思うような不思議なことをよく知っている学者がいます。彼らは、本当に嬉しそうに、楽しそうに、事細かに語ってくれます。
このような学者のようにとは言いませんが、こだわることで、彼らの幸せの一端を味わいながら、結晶知能を伸ばすこともできるのです。こだわることで身につく豊富な知識や蘊蓄(うんちく)が結晶知能のベースを作るからです。このベースが深まり、広くなるにつれて、私たちのなかの選択肢はどんどん増え、いくつもの方向が見えてくるはずです。
【実践法4】「ぼんやり」を「くっきり」に変える散歩術
“散歩”が楽しみなシニアが増える理由
若い頃は散歩なんてまったくしなかったのに、近頃は散歩が楽しみだという方が、シニアになると増えてきます。それはなぜなのでしょうか?
歳をとることである機能が衰え、それによってシニア以降の人生を豊かにしてくれる別の能力が高まるから、という考え方があります。例えば、歳をとると若い頃のように速く歩くことができなくなります。速く歩くという身体的機能が徐々に衰えていくわけですが、歩く速度が遅くなることによってかえって周囲の風景に目がいき、それまでは気づかなかったいろいろなことが発見できる、つまり散歩を楽しめるようになるということがあります。
歳をとることである機能が衰え、それによってシニア以降の人生を豊かにしてくれる別の能力が高まるから、という考え方があります。例えば、歳をとると若い頃のように速く歩くことができなくなります。速く歩くという身体的機能が徐々に衰えていくわけですが、歩く速度が遅くなることによってかえって周囲の風景に目がいき、それまでは気づかなかったいろいろなことが発見できる、つまり散歩を楽しめるようになるということがあります。
若い頃は歩くことは手段にすぎない
少年や若者にとって、歩くことは目的地に着くための手段でしかありません。ですから、早く目的地に着くことが重要になります。しかし、若者ほど速く歩くことができなくなったシニアだからこそ、歩くこと自体を楽しむことができるようになるのです。散歩が趣味の小学生には、まず、お目にかかることはありません。年齢につれて衰える機能のあることが、結晶知能を高める原動力になっているといえるのです。
若い頃はいくつもの用事を同時進行で片づけられたのに、シニアになると複数の用事のいくつかを忘れてしまうという経験があるものですが、それも結晶知能を高める原動力のひとつかもしれません。いろいろなことを同時に処理するスピードが失われた代わりに、ひとつのことをあせらずじっくりとできるようになったというわけです。
若い頃はいくつもの用事を同時進行で片づけられたのに、シニアになると複数の用事のいくつかを忘れてしまうという経験があるものですが、それも結晶知能を高める原動力のひとつかもしれません。いろいろなことを同時に処理するスピードが失われた代わりに、ひとつのことをあせらずじっくりとできるようになったというわけです。
「こだわる」ことで散歩の楽しみが倍増
ここでは、機能の衰えがもたらした効用「散歩の楽しみ」をさらに楽しく、しかも結晶知能を高められる方法をご紹介します。
そのために採り入れるのが「こだわり」です。何かにこだわることで、それまでぼんやりとしか見えていなかったものが、くっきりと見えてくるのです。
何にこだわっても良いのですが、いくつものことに同時にこだわるのはシニアには不向きです。何かひとつのことにこだわりを持って散歩をすることが、その楽しみを増し、結晶知能を高めてくれます。
たとえば、街路樹や庭木、路傍の草花や野良猫、表札などです。変わったところでは、軒下に干してある洗濯物を見ながら散歩をするのが楽しいという人もいます。不謹慎な興味ということではなく、人が暮らしている温もりや息づかいが伝わってきて、ほのぼのとした気分が味わえるから、とのことです。
そのために採り入れるのが「こだわり」です。何かにこだわることで、それまでぼんやりとしか見えていなかったものが、くっきりと見えてくるのです。
何にこだわっても良いのですが、いくつものことに同時にこだわるのはシニアには不向きです。何かひとつのことにこだわりを持って散歩をすることが、その楽しみを増し、結晶知能を高めてくれます。
たとえば、街路樹や庭木、路傍の草花や野良猫、表札などです。変わったところでは、軒下に干してある洗濯物を見ながら散歩をするのが楽しいという人もいます。不謹慎な興味ということではなく、人が暮らしている温もりや息づかいが伝わってきて、ほのぼのとした気分が味わえるから、とのことです。
こだわり散歩で、結晶知能を育てよう!
要は、気になるもの、好きなもののなかからひとつを選んで、それに注意しながら散歩をすればよいのです。すると、今までは同じ道を歩いていても見えなかったもの、街路樹であればその街路樹が意味をもって見えてきます。
「この街路樹の名前は何というのだろうか」
「花はいつ咲くのかな」
「実や種は成るのだろうか」
「樹齢はいくつくらいだろう」
「この道ができてから、ずっとこの街路樹なのかな」
「交差点の向こうに菩提樹があるけれど、そういえば菩提樹の歌があったな。菩提樹の並木道なんてどこかの国にあるのだろうか」
そんなふうに、頭に浮かんだ疑問について日々考える習慣ができてくれば、知識は増え、蘊蓄が溜まってきます。この知識と蘊蓄が、経験と相まって結晶知能のベースを作るのです。
見たことや調べたことは、できればメモ帳などに記しておくと、知識がよりしっかりと頭に焼きつきます。日記やブログをつけている方は、それと連動させるとよいでしょう。俳句や川柳のネタを拾いながら歩いたり、デジカメで写真を撮りながら散歩して、あとで作品にするのもお勧めです。
見るだけでは物足りないという方は、何か1点、買い物をしてみてください。今日は和菓子をひとつ買う、花を一輪買う、ハンカチを買う、皿を買う…。何かちょっとした買い物、それも何かにこだわった買い物を目的にすると、かなり遠くまででも楽しく散歩ができるようになるはずです。
【結晶知能を高める方法4:こだわる!】のこれ以外の方法については、拙著「『結晶知能』革命─50歳からでも「脳力」は伸びる!」(小学館)を参照してください。
次回は7月21日(火)、更新予定です。
「この街路樹の名前は何というのだろうか」
「花はいつ咲くのかな」
「実や種は成るのだろうか」
「樹齢はいくつくらいだろう」
「この道ができてから、ずっとこの街路樹なのかな」
「交差点の向こうに菩提樹があるけれど、そういえば菩提樹の歌があったな。菩提樹の並木道なんてどこかの国にあるのだろうか」
そんなふうに、頭に浮かんだ疑問について日々考える習慣ができてくれば、知識は増え、蘊蓄が溜まってきます。この知識と蘊蓄が、経験と相まって結晶知能のベースを作るのです。
見たことや調べたことは、できればメモ帳などに記しておくと、知識がよりしっかりと頭に焼きつきます。日記やブログをつけている方は、それと連動させるとよいでしょう。俳句や川柳のネタを拾いながら歩いたり、デジカメで写真を撮りながら散歩して、あとで作品にするのもお勧めです。
見るだけでは物足りないという方は、何か1点、買い物をしてみてください。今日は和菓子をひとつ買う、花を一輪買う、ハンカチを買う、皿を買う…。何かちょっとした買い物、それも何かにこだわった買い物を目的にすると、かなり遠くまででも楽しく散歩ができるようになるはずです。
【結晶知能を高める方法4:こだわる!】のこれ以外の方法については、拙著「『結晶知能』革命─50歳からでも「脳力」は伸びる!」(小学館)を参照してください。
次回は7月21日(火)、更新予定です。
- 関連リンク
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佐藤眞一先生が会長を務める老年行動科学会のホームページは、こちらからご覧になれます。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsbse/
日本老年行動科学会は、高齢者心理の研究者、医療・看護等の専門家、高齢者ケアの実践者等、様々な人々が集い、高齢者の徘徊や行動障害など心の問題に根ざした課題の解明に努め、高齢者の行動・生活改善とケアの向上に取り組んでいます。
現在、月例の高齢者ケースワーク研究会(ACS)、ACSのノウハウを基にした老年行動科学講座を開設しています。