Vol.17 知能指数と結晶知能
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☆<結晶知能>☆
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
知能指数っていったい何を測るの?
子どもの頃、学校で知能テストを受けたことのある方は多いと思います。知能指数=IQの数値が高いか低いかで、先生や親からほめられたり、逆に心配されたりした記憶のある方もいるでしょう。
ところで、そもそもこの知能指数とは、いったい何を測っているのでしょうか?
知能テストが最初に実施されたのは1905年、フランスでした。当時、フランスでは教育制度改革が行われ、すべての児童が学校に入学することになりました。それに伴って、通常のカリキュラムについていけない児童をスクリーニング(選別)するために、心理学者のビネーがパリ市当局の要請を受けて作成したのが、世界最初の知能テストであるビネー式知能検査です。
ですから、知能テストとは、知的障害のある児童を見分け、特別支援教育を受けさせるためのものだったのです。そのため、成人用の知能テストは、当初はありませんでした。
ところで、そもそもこの知能指数とは、いったい何を測っているのでしょうか?
知能テストが最初に実施されたのは1905年、フランスでした。当時、フランスでは教育制度改革が行われ、すべての児童が学校に入学することになりました。それに伴って、通常のカリキュラムについていけない児童をスクリーニング(選別)するために、心理学者のビネーがパリ市当局の要請を受けて作成したのが、世界最初の知能テストであるビネー式知能検査です。
ですから、知能テストとは、知的障害のある児童を見分け、特別支援教育を受けさせるためのものだったのです。そのため、成人用の知能テストは、当初はありませんでした。
知能検査の研究で、“結晶知能”の存在が明らかに!
一方、第1次世界大戦中に、大量に新兵を採用する必要に迫られたアメリカでは、1916年に陸軍用の知能テスト「陸軍A式知能検査」と「陸軍B式知能検査」が開発されました。A式は言語を用いた「言語式知能検査」で、B式は言語を用いない「非言語式知能検査」です。
B式では、絵や図形、記号などを使用し、例えば、「この絵に欠けているものは何か」を答えさせたりします。アメリカは移民社会なので、知的能力が高くても英語のできない人が多かったため、このように2種類のテストが作成されたのです。
ところが、この陸軍式知能検査の結果は、必ずしも現実に沿うものではありませんでした。知的にすぐれていると考えられていた壮年期以上の年齢の人々の知能検査成績が、10代や20代の若者よりも劣っていたのです。
その後、その原因を探るべく、数多くの研究者がさまざまなテスト課題を用いて研究を重ねた結果、知能には、年齢とともに衰える知能と、逆に高まる知能があるのではないかと考えられるようになりました。こうした研究のなかから「流動知能」と「結晶知能」の存在が明らかになってきたのです。
B式では、絵や図形、記号などを使用し、例えば、「この絵に欠けているものは何か」を答えさせたりします。アメリカは移民社会なので、知的能力が高くても英語のできない人が多かったため、このように2種類のテストが作成されたのです。
ところが、この陸軍式知能検査の結果は、必ずしも現実に沿うものではありませんでした。知的にすぐれていると考えられていた壮年期以上の年齢の人々の知能検査成績が、10代や20代の若者よりも劣っていたのです。
その後、その原因を探るべく、数多くの研究者がさまざまなテスト課題を用いて研究を重ねた結果、知能には、年齢とともに衰える知能と、逆に高まる知能があるのではないかと考えられるようになりました。こうした研究のなかから「流動知能」と「結晶知能」の存在が明らかになってきたのです。
流動知能・結晶知能という2種類の一般知能
このように、知能は単一の要素だけで説明することはできません。それを示す理論はいくつかありますが、もっとも有力な理論のひとつに「二因子説」があります。
二因子説では、人の知能は、計算能力や言語能力など個々の「特殊知能」と、その上位概念である「一般知能」から構成されると考えられています。
流動知能・結晶知能理論も、基本的にはこの二因子説の一種です。ただし、流動知能と結晶知能のどちらか一方が「一般知能」で、もう一方が「特殊知能」というのではなく、どちらも「一般知能」であり、「一般知能」が2種類あるという点が、この理論の“ミソ”になっています。例えば、「言語を理解する能力」という「特殊知能」は「結晶知能」に、「連想の早さ」という「特殊知能」は「流動知能」に属す、ということなのです。
現在、わが国で実施されている知能テストの多くは、個々の特殊知能を測る設問の組み合わせによって、最終的には一般知能を測る内容になっています。したがって、一般知能は、複数の特殊知能の高低によって決定されるのです。また、子ども用も大人用も、それぞれに何種類ものテストがあり、テストによって測る知能も微妙に異なっているのが現状です。
二因子説では、人の知能は、計算能力や言語能力など個々の「特殊知能」と、その上位概念である「一般知能」から構成されると考えられています。
流動知能・結晶知能理論も、基本的にはこの二因子説の一種です。ただし、流動知能と結晶知能のどちらか一方が「一般知能」で、もう一方が「特殊知能」というのではなく、どちらも「一般知能」であり、「一般知能」が2種類あるという点が、この理論の“ミソ”になっています。例えば、「言語を理解する能力」という「特殊知能」は「結晶知能」に、「連想の早さ」という「特殊知能」は「流動知能」に属す、ということなのです。
現在、わが国で実施されている知能テストの多くは、個々の特殊知能を測る設問の組み合わせによって、最終的には一般知能を測る内容になっています。したがって、一般知能は、複数の特殊知能の高低によって決定されるのです。また、子ども用も大人用も、それぞれに何種類ものテストがあり、テストによって測る知能も微妙に異なっているのが現状です。
「結晶知能」には生涯を通じて伸び続ける可能性が
ところで、知能テストの点数の高い子は、学校の成績も良いのでしょうか?そう思われがちですが、実は、そうでもありません。相関関係はあるものの、完全にイコールではないのです。知能指数が高くても学校の成績が悪い子もいますし、逆に知能指数はそれほどでもないのに学校の成績は良いという子もいます。さらにいえば、知能指数は生涯を通じて一定ではありません。同じ人でも年齢や状況によって、知能指数はかなり変化するものなのです。
そして、一般に流動知能は中年期以降低下していくのに対して、結晶知能は、その能力を磨く生活習慣を身につけることができさえすれば、生涯を通じて伸び続ける可能性のある知能であることが明らかになってきたのです。
次回は10月6日(火)、更新予定です。
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佐藤眞一先生が会長を務める老年行動科学会のホームページは、こちらからご覧になれます。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsbse/
日本老年行動科学会は、高齢者心理の研究者、医療・看護等の専門家、高齢者ケアの実践者等、様々な人々が集い、高齢者の徘徊や行動障害など心の問題に根ざした課題の解明に努め、高齢者の行動・生活改善とケアの向上に取り組んでいます。
現在、月例の高齢者ケースワーク研究会(ACS)、ACSのノウハウを基にした老年行動科学講座を開設しています。