Vol.23 結晶知能を社会に活かす
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☆<結晶知能>☆
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
結集知能はいつまでも伸びるの!?
結晶知能は、好奇心をもって新たなことを経験し、思考し続ける限り、何歳になっても伸び続けます。とはいっても、40歳代や50歳代ならばともかく、60、70、あるいは80歳になっても、本当に伸び続けるものだろうか? そんなふうに、半信半疑の方もいるでしょう。けれども、それがけっして誇張でないことは、古今東西の実在の人物が証明してくれています。
実在の人物に目を向けてみると……
例えば、聖路加国際病院理事長であり、『生きかた上手』などの著書でも知られる日野原重明さんは1911年生まれ。95歳を超えてなお、医療や看護に関するさまざまな提言を続け、会議に執筆にと多忙な毎日を過ごしています。女優の森光子さんなど、80歳を過ぎても第一線で活躍し、日々新たな境地を拓いている方も大勢います。
あるいは、日本全国を測量して歩いたことで知られる伊能忠敬は、隠居して江戸に出たのが51歳のとき。それから天文学者の弟子になって、以前から学びたいと思っていた天文学や測量学を修めます。測量の旅に出たのは5年後の56歳。以来、74歳で亡くなるまで測量を続け、その成果を弟子たちがまとめたのが『大日本沿海実測全図』です。
現在ならば、さして高齢とはいえないかもしれませんが、伊能忠敬が生きたのは江戸時代、18世紀後半から19世紀初頭にかけてです。人生50年の時代に、51歳から手習いを始め、しかも後世に残る仕事を成し遂げたのですから、たいへんな結晶知能の伸びようです。ちなみに、彼の隠居前の生業は米問屋。現代ならば、中小企業の社長といったところでしょうか。
あるいは、日本全国を測量して歩いたことで知られる伊能忠敬は、隠居して江戸に出たのが51歳のとき。それから天文学者の弟子になって、以前から学びたいと思っていた天文学や測量学を修めます。測量の旅に出たのは5年後の56歳。以来、74歳で亡くなるまで測量を続け、その成果を弟子たちがまとめたのが『大日本沿海実測全図』です。
現在ならば、さして高齢とはいえないかもしれませんが、伊能忠敬が生きたのは江戸時代、18世紀後半から19世紀初頭にかけてです。人生50年の時代に、51歳から手習いを始め、しかも後世に残る仕事を成し遂げたのですから、たいへんな結晶知能の伸びようです。ちなみに、彼の隠居前の生業は米問屋。現代ならば、中小企業の社長といったところでしょうか。
自分たちの能力に気づいた中高年
こんなふうに活躍し続けられるのは、芸術家や学者や経営者など、特別な職業や立場にいる人々だからできるのであって、自分たちとはわけが違う、と思う方もいるかもしれません。しかし、果たしてそうでしょうか?
中高年自身もまた自分たちの能力の価値に気づき、それをさまざまな形で活かし始めています。
例えば、「マイスター60」という会社があります。ここは入社資格が原則60歳以上で、気力・体力・能力が続く限り働き続けられるという、事実上の生涯無定年をうたっています。1級建築士、電気主任技術者、消防設備士などの技術系の資格を持った人が多いのが特徴で、社員として働くほかに、人材紹介によって他企業で働くことも可能です。
「ディレクトフォース」という一般社団法人では、リタイアした企業の管理職を、企業に人材紹介したり、講師として派遣したり、あるいは彼らのノウハウと人脈を活かして、中小企業のコンサルティングを行ったりしています。
企業のOBなどが集まって、自分たちで起業する例も増えてきましたし、「シニアSOHO」「シニアネット」などの非営利法人やボランティア団体も各地に増えつつあります。このような団体では、自己表現や社会貢献の場を提供・紹介するだけでなく、起業のバックアップなども行っています。
おもしろいところでは、「高齢者生協(日本高齢者生活協同組合連合会)」の活動があります。これは福祉を主な事業とした生協なのですが、政府に介護保険の改善を求めたり、高齢者の仕事起こしを進めたりといった、行動する生協でもあります。モデルとなったアメリカの「AARP(全米退職者協会)」は会員数3000万人、全米最大の団体であるカトリック教会に次ぐ全米第2の巨大組織で、ナショナルセンターなどの労働組合のほぼ2倍の規模があります。どの政党の傘下にも入らないNPO(非営利組織)であり、高齢者の要求を実現するために、議会や政府に強い圧力をかける団体としても知られています。
しかし、最も特徴的なのは、高齢者自身がボランティアとして、AARPの運営や活動に参加していることでしょう。この例のように、自分たちの持つ結晶知能を自分たちの暮らしの向上のために使おうという動きは、日本でも急速に高まっていくと考えられます。
中高年自身もまた自分たちの能力の価値に気づき、それをさまざまな形で活かし始めています。
例えば、「マイスター60」という会社があります。ここは入社資格が原則60歳以上で、気力・体力・能力が続く限り働き続けられるという、事実上の生涯無定年をうたっています。1級建築士、電気主任技術者、消防設備士などの技術系の資格を持った人が多いのが特徴で、社員として働くほかに、人材紹介によって他企業で働くことも可能です。
「ディレクトフォース」という一般社団法人では、リタイアした企業の管理職を、企業に人材紹介したり、講師として派遣したり、あるいは彼らのノウハウと人脈を活かして、中小企業のコンサルティングを行ったりしています。
企業のOBなどが集まって、自分たちで起業する例も増えてきましたし、「シニアSOHO」「シニアネット」などの非営利法人やボランティア団体も各地に増えつつあります。このような団体では、自己表現や社会貢献の場を提供・紹介するだけでなく、起業のバックアップなども行っています。
おもしろいところでは、「高齢者生協(日本高齢者生活協同組合連合会)」の活動があります。これは福祉を主な事業とした生協なのですが、政府に介護保険の改善を求めたり、高齢者の仕事起こしを進めたりといった、行動する生協でもあります。モデルとなったアメリカの「AARP(全米退職者協会)」は会員数3000万人、全米最大の団体であるカトリック教会に次ぐ全米第2の巨大組織で、ナショナルセンターなどの労働組合のほぼ2倍の規模があります。どの政党の傘下にも入らないNPO(非営利組織)であり、高齢者の要求を実現するために、議会や政府に強い圧力をかける団体としても知られています。
しかし、最も特徴的なのは、高齢者自身がボランティアとして、AARPの運営や活動に参加していることでしょう。この例のように、自分たちの持つ結晶知能を自分たちの暮らしの向上のために使おうという動きは、日本でも急速に高まっていくと考えられます。
結晶知能を活かした生き方を
次回は最終回で、2010年1月5日(火)更新予定です。
- 関連リンク
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佐藤眞一先生が会長を務める老年行動科学会のホームページは、こちらからご覧になれます。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsbse/
日本老年行動科学会は、高齢者心理の研究者、医療・看護等の専門家、高齢者ケアの実践者等、様々な人々が集い、高齢者の徘徊や行動障害など心の問題に根ざした課題の解明に努め、高齢者の行動・生活改善とケアの向上に取り組んでいます。
現在、月例の高齢者ケースワーク研究会(ACS)、ACSのノウハウを基にした老年行動科学講座を開設しています。