Vol.18 結晶知能を高める方法7:アレンジする!
キーワード
☆<結晶知能>☆
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
「結晶知能を高める方法」の第7回目は「アレンジする!」です。
アレンジとは、異質なものを組み合わせ、新たなものを生み出す行為です。アレンジすることによって磨かれる創造性が、人生の新たな局面に生じるさまざまな問題を打開し、革新的な解決法を生み出します。
アレンジとは、異質なものを組み合わせ、新たなものを生み出す行為です。アレンジすることによって磨かれる創造性が、人生の新たな局面に生じるさまざまな問題を打開し、革新的な解決法を生み出します。
【実践法7】新たなものを生み出すために「アレンジする!」
異質な組み合わせが創造性を生む
創造、すなわちこれまでにない新しいものを創り出すこととは、言い換えれば、「いかに異質なものを組み合わせるか」です。
例えば、発泡酒に次ぐ第3のビールは、麦芽の代わりにエンドウ豆から抽出したタンパクなどを使っています。「ビールには麦芽」という常識を打ち破って、エンドウ豆という、まったく新しい素材を組み合わせたわけです。
例えば、発泡酒に次ぐ第3のビールは、麦芽の代わりにエンドウ豆から抽出したタンパクなどを使っています。「ビールには麦芽」という常識を打ち破って、エンドウ豆という、まったく新しい素材を組み合わせたわけです。
Vol.16「負荷をかける!」でも述べましたが、私たちの脳は安定を求めるなまけ者です。放っておけば、いつも慣れ親しんでいる組み合わせを選んでしまいます。紺のスーツにはエンジのネクタイ、グレーのスーツにはブルーのネクタイ。駅の立ち食いなら天ぷら蕎麦、会社の近くの定食屋なら日替わり定食。なぜかいつも同じような組み合わせです。
「合わないな」と思っても、紺のスーツにブルーのネクタイをしてみる。ランチにはしゃれたカフェテリアに入って、OLと同じメニューを頼んでみる――ほんの些細なことでも、異質だと感じる組み合わせをしてみることで、そこに創造性が生まれます。
既成概念にとらわれない塗り絵をしてみよう!
では、具体的にはどうすればよいのでしょうか?
まずは、スーツとネクタイ、ランチのメニューなど、日常生活のなかでいつもとは違う組み合わせを心がけてみましょう。スーツにスニーカーを履いたり、スーツにノーネクタイの人は、近頃珍しくなくなりましたが、まだ試みたことがない方は、ぜひトライしてみてください。
また、訓練法として手軽にできるのは、塗り絵です。絵画のレッスン用、あるいはメンタルテスト用などの塗り絵が、近頃は多数出ていますので、それらを利用します。もちろん子ども用の塗り絵でもかまいません。気をつける点は、じょうずに塗ろうとしないこと。絵画レッスン用の塗り絵などは、「建物はこの色で塗る」「影の部分はこの色で塗る」等々の指示が付いていて、その通りに塗ると確かにじょうずな絵に仕上がります。しかしそれでは、創造性の訓練とはまったく逆の行為になってしまいます。
「空は青」ではなく、別の色、例えば、赤に塗ってみる。すると、その下にある山は何色にすればよいだろう? こんなふうに考えて、既成概念にとらわれない色を、塗ってみてください。はみ出したり、ぼかしを入れたりするのもOKです。
まずは、スーツとネクタイ、ランチのメニューなど、日常生活のなかでいつもとは違う組み合わせを心がけてみましょう。スーツにスニーカーを履いたり、スーツにノーネクタイの人は、近頃珍しくなくなりましたが、まだ試みたことがない方は、ぜひトライしてみてください。
また、訓練法として手軽にできるのは、塗り絵です。絵画のレッスン用、あるいはメンタルテスト用などの塗り絵が、近頃は多数出ていますので、それらを利用します。もちろん子ども用の塗り絵でもかまいません。気をつける点は、じょうずに塗ろうとしないこと。絵画レッスン用の塗り絵などは、「建物はこの色で塗る」「影の部分はこの色で塗る」等々の指示が付いていて、その通りに塗ると確かにじょうずな絵に仕上がります。しかしそれでは、創造性の訓練とはまったく逆の行為になってしまいます。
「空は青」ではなく、別の色、例えば、赤に塗ってみる。すると、その下にある山は何色にすればよいだろう? こんなふうに考えて、既成概念にとらわれない色を、塗ってみてください。はみ出したり、ぼかしを入れたりするのもOKです。
アレンジには、部屋の模様替えも名案
部屋の模様替えも、アレンジの一種です。
部屋に家具を入れるとき、ほとんどの方は最も合理的かつ見栄えのよいように、配置しようとするのではないでしょうか。その結果が、現在の部屋のレイアウトです。ところがたいていの場合、住んでいるうちに物が増えてきます。ひどい場合には、足の踏み場もないほどになってしまいます。しかし、最初に「最も合理的、かつ見栄えのよい配置をした」という経緯があるため、小さな手直しはしても、全体を大幅に変える気持ちにはなかなかなれません。
その先入観、いわば保守化した頭脳を一度シャッフルし、アレンジし直すのが部屋の模様替えです。部屋の模様替えに必要なのは、家具の配置を構成し直す作業だけではありません。どの家具を先に動かせばスムーズにいくかという手順や、捨てる物と残す物はどれかなど、いくつもの再構成、すなわちアレンジが必要となってきます。それだけでもかなり創造性の訓練になるのですが、模様替えをした部屋はさらに、それ自体に感覚を刺激する力があります。いつもと違う部屋の様子が、脳を不安定にするのです。
部屋に家具を入れるとき、ほとんどの方は最も合理的かつ見栄えのよいように、配置しようとするのではないでしょうか。その結果が、現在の部屋のレイアウトです。ところがたいていの場合、住んでいるうちに物が増えてきます。ひどい場合には、足の踏み場もないほどになってしまいます。しかし、最初に「最も合理的、かつ見栄えのよい配置をした」という経緯があるため、小さな手直しはしても、全体を大幅に変える気持ちにはなかなかなれません。
その先入観、いわば保守化した頭脳を一度シャッフルし、アレンジし直すのが部屋の模様替えです。部屋の模様替えに必要なのは、家具の配置を構成し直す作業だけではありません。どの家具を先に動かせばスムーズにいくかという手順や、捨てる物と残す物はどれかなど、いくつもの再構成、すなわちアレンジが必要となってきます。それだけでもかなり創造性の訓練になるのですが、模様替えをした部屋はさらに、それ自体に感覚を刺激する力があります。いつもと違う部屋の様子が、脳を不安定にするのです。
手始めは、引き出しの整理から
とはいっても、「そんな時間はともとれない」という方もいるでしょう。そういう方は手始めに、デスクの引き出しの中など、収納の見直しをしてみましょう。例えば、仕事で使うデスクでは、書類や文房具が最も合理的な配置になるように心がけて、引き出しの中のレイアウトを決めたはずです。ところが、引き出しの中も部屋と同様、使ううちに徐々に物が増え、あまり合理的とはいえない状態になってしまいます。
しかし、物が増えた乱雑な引き出しでも、最初に「最も合理的な収納を考えて、中のレイアウトをした」という思いがあるために、レイアウトを全面的に変える気持ちには、なかなかなれません。中のレイアウトを変更するには、発想の転換が必要ですし、必要な物と不必要な物を分け、さらに分類方法を変えるなど、再アレンジが必要となります。
つまり、部屋の模様替えをする時間がない方は、引き出しの中のレイアウトを変更することで、アレンジする能力を鍛えることができるわけです。また、引き出しを開けるたびに「以前とは使い勝手が違う」という刺激を受けるため、部屋の模様替えをしたときと同様、負荷がかかった不安定な状態となり、脳が目覚めていくのです。
【結晶知能を高める方法7:アレンジする!】のこれ以外の方法については、拙著「『結晶知能』革命─50歳からでも「脳力」は伸びる!」(小学館)を参照してください。
次回は10月20日(火)、更新予定です。
しかし、物が増えた乱雑な引き出しでも、最初に「最も合理的な収納を考えて、中のレイアウトをした」という思いがあるために、レイアウトを全面的に変える気持ちには、なかなかなれません。中のレイアウトを変更するには、発想の転換が必要ですし、必要な物と不必要な物を分け、さらに分類方法を変えるなど、再アレンジが必要となります。
つまり、部屋の模様替えをする時間がない方は、引き出しの中のレイアウトを変更することで、アレンジする能力を鍛えることができるわけです。また、引き出しを開けるたびに「以前とは使い勝手が違う」という刺激を受けるため、部屋の模様替えをしたときと同様、負荷がかかった不安定な状態となり、脳が目覚めていくのです。
【結晶知能を高める方法7:アレンジする!】のこれ以外の方法については、拙著「『結晶知能』革命─50歳からでも「脳力」は伸びる!」(小学館)を参照してください。
次回は10月20日(火)、更新予定です。
- 関連リンク
-
佐藤眞一先生が会長を務める老年行動科学会のホームページは、こちらからご覧になれます。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsbse/
日本老年行動科学会は、高齢者心理の研究者、医療・看護等の専門家、高齢者ケアの実践者等、様々な人々が集い、高齢者の徘徊や行動障害など心の問題に根ざした課題の解明に努め、高齢者の行動・生活改善とケアの向上に取り組んでいます。
現在、月例の高齢者ケースワーク研究会(ACS)、ACSのノウハウを基にした老年行動科学講座を開設しています。