Vol.16 結晶知能を高める方法6:負荷をかける!
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☆<結晶知能>☆
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
「結晶知能を高める方法」の第6回目は「負荷をかける!」です。
人間の脳は「安定」を好みます。ですから、難しいことに出会うと、休眠状態に陥ってしまいます。難解な哲学書や古い文体の古典を読んでも、ちっとも頭に入ってこない、という経験は誰にもあるのではないでしょうか。しかし、脳に負荷をかけて、「安定」を打ち破ることによって、脳を目覚めさせ、潜在能力を発揮させれば、これまでは困難だったことも容易にすることが可能です。
さあ、負荷をかけて脳を目覚めさせましょう。
人間の脳は「安定」を好みます。ですから、難しいことに出会うと、休眠状態に陥ってしまいます。難解な哲学書や古い文体の古典を読んでも、ちっとも頭に入ってこない、という経験は誰にもあるのではないでしょうか。しかし、脳に負荷をかけて、「安定」を打ち破ることによって、脳を目覚めさせ、潜在能力を発揮させれば、これまでは困難だったことも容易にすることが可能です。
さあ、負荷をかけて脳を目覚めさせましょう。
【実践法6】「違和感」を強く意識しよう―スムーズにできないことこそが、脳を活性化させる―
やり慣れていることには、脳はあまり働かない
長文の文章を書いているときは、わざと切りの悪いところで中断すると、再開したときにその続きをすんなりと書き出すことができるということは、すでに本連載第9回「結晶知能を高めるコツ」で示しましたが、今回は、身体的な感覚を通じて、脳に負荷をかける方法について考えてみましょう。
脳は、習慣化していることや、やり慣れたことに対しては、あまり働きません。例えば、車の運転などは、頻繁に運転する人にとっては、ほとんど無意識の行為です。頭で考える前に身体が反応する、いわば反射運動のようなものになっているわけです。それに対して、ふだんあまり車を運転しない人には、たまに運転しようとするとかなりの緊張感があり、運転し終わったときにはぐったりするくらいに心身が疲れているものです。
脳は、習慣化していることや、やり慣れたことに対しては、あまり働きません。例えば、車の運転などは、頻繁に運転する人にとっては、ほとんど無意識の行為です。頭で考える前に身体が反応する、いわば反射運動のようなものになっているわけです。それに対して、ふだんあまり車を運転しない人には、たまに運転しようとするとかなりの緊張感があり、運転し終わったときにはぐったりするくらいに心身が疲れているものです。
ふだんと違うやり方で、脳にむず痒さを
同じ車の運転でも、それが習慣化している人とそうでない人とでは、脳にかかる負荷が違ってくるのです。同様に、日常的に何気なく行っている行為や動作でも、やり方ひとつで脳に負荷をかけることができます。
そのひとつに、利き手でないほうの手を使う方法があります。
右利きの人は、ふだん、何事にも右手を中心に使っています。物をつかむのも、字を書くのも、カップやお箸を持つのも、ボタンをはめるのも、すべて右手が主役で、左手は介添え程度の役割しか果たしていません。
その主従を逆転させるのです。物をつかむときは意識的に左手でつかむ、例えば、電車の吊り革も左手でつかむようにします。落ちている物を拾うときにも左手を使う。鍵穴に鍵を差し込むときも、ドアを開けるときも、左手でするようにします。服を着たり脱いだりする際にも、右手は使わずに左手だけでしてみましょう。
服の着脱は、片手ではかなりやりにくいうえに、利き手ではないほうの手しか使わないとなると、毎日やっていることとは思えないほど“不如意”です。袖を通す順番から変えないと、うまく着られない状態になるので、脳にもかなりの負荷がかかってきます。
少し慣れてきたら、左手で字を書いたり、お箸を持ったりしてみましょう。すると、おそらくは幼少期に初めて鉛筆を持ったり、お箸を持ったりしたときに感じたのと同じような、脳がむず痒いような不思議な感覚が生じるはずです。この脳のむず痒さこそが、今まで使っていなかった部分を使い、負荷をかけている証拠です。
そのひとつに、利き手でないほうの手を使う方法があります。
右利きの人は、ふだん、何事にも右手を中心に使っています。物をつかむのも、字を書くのも、カップやお箸を持つのも、ボタンをはめるのも、すべて右手が主役で、左手は介添え程度の役割しか果たしていません。
その主従を逆転させるのです。物をつかむときは意識的に左手でつかむ、例えば、電車の吊り革も左手でつかむようにします。落ちている物を拾うときにも左手を使う。鍵穴に鍵を差し込むときも、ドアを開けるときも、左手でするようにします。服を着たり脱いだりする際にも、右手は使わずに左手だけでしてみましょう。
服の着脱は、片手ではかなりやりにくいうえに、利き手ではないほうの手しか使わないとなると、毎日やっていることとは思えないほど“不如意”です。袖を通す順番から変えないと、うまく着られない状態になるので、脳にもかなりの負荷がかかってきます。
少し慣れてきたら、左手で字を書いたり、お箸を持ったりしてみましょう。すると、おそらくは幼少期に初めて鉛筆を持ったり、お箸を持ったりしたときに感じたのと同じような、脳がむず痒いような不思議な感覚が生じるはずです。この脳のむず痒さこそが、今まで使っていなかった部分を使い、負荷をかけている証拠です。
他人に食べさせてもらうと見えること
実際にやってみるとわかりますが、これが実に大変です。食べ物はそれぞれ形態や温度、硬さ、柔らかさなどが異なっていて、飲み込みやすい物と飲み込みにくい物とがあります。そのうえ、人によって、咀嚼時間やかむ力などもすべて異なっています。口に入れる分量も微妙に違います。
食べさせる側がちょうど良い速度と量だと思っても、相手はうまく食べられず、口からこぼれてしまうこともあります。声を掛けながらやっても、タイミングが合うとは限りません。食べる側が返事をしようとして、誤って気管に食べ物が入ってしまう、といった事態を招くことさえあります。
世話をされる側の状態、気持ちが洞察できる
この“不如意”さが脳への負荷となるわけですが、食べさせ合いには別の利点もあります。この体験があるのとないのとでは、洞察力が大きく違ってくるのです。
例えば、親や配偶者を介護することになった、ボランティアで人の世話をすることになった、というような場合、世話をする側は、ともすれば、自分のペースでやってしまいがちです。しかし、世話をされる側にとっては、それでなくとも身体が不自由なのに、相手のペースに合わせるのは至難の業なのです。ところが、食べさせ合いによって、この“不如意”を事前に体験していれば、世話をされる側の状態や気持ちが洞察できるのです。まさに結晶知能が高まった成果です。
例えば、親や配偶者を介護することになった、ボランティアで人の世話をすることになった、というような場合、世話をする側は、ともすれば、自分のペースでやってしまいがちです。しかし、世話をされる側にとっては、それでなくとも身体が不自由なのに、相手のペースに合わせるのは至難の業なのです。ところが、食べさせ合いによって、この“不如意”を事前に体験していれば、世話をされる側の状態や気持ちが洞察できるのです。まさに結晶知能が高まった成果です。
スピード音読で脳に刺激を
話すことも日常的な行為のひとつですが、話すスピードを変えることで、“不如意”な感覚を味わうことができます。まずは早口言葉です。
「生麦、生米、生卵」「隣の塀に竹立てかけた」など、比較的単純な早口言葉でも、スピードを上げることで脳に負荷がかかります。しかし、それ以上に効果的なのは、新聞でも雑誌でもよいのですが、文章を声に出して、しかも、いつもよりずっと速いスピードで読んでみることです。声を出して読む「音読」は、声を出さない「黙読」よりも多くの能力を使います。それだけ脳への負荷が大きいのですが、さらに速度を速めることで、いっそうの負荷がかかります。
「生麦、生米、生卵」「隣の塀に竹立てかけた」など、比較的単純な早口言葉でも、スピードを上げることで脳に負荷がかかります。しかし、それ以上に効果的なのは、新聞でも雑誌でもよいのですが、文章を声に出して、しかも、いつもよりずっと速いスピードで読んでみることです。声を出して読む「音読」は、声を出さない「黙読」よりも多くの能力を使います。それだけ脳への負荷が大きいのですが、さらに速度を速めることで、いっそうの負荷がかかります。
ゆっくりしゃべることでも、眠っていた能力の開眼が
早口だけでなく、ゆっくりとしゃべることでも負荷はかかります。レコードの回転数を遅くしたときのように、間延びするくらいゆっくりしゃべってみてください。やはり脳がむず痒いような、変な感覚が生じると思います。“不如意”なこと、違和感を感じることを意識的にしてみることで、脳に負荷をかけ、眠っていた能力を活性化させることができるのです。
【結晶知能を高める方法6:負荷をかける!】のこれ以外の方法については、拙著「『結晶知能』革命─50歳からでも「脳力」は伸びる!」(小学館)を参照してください。
次回は9月15日(火)、更新予定です。
【結晶知能を高める方法6:負荷をかける!】のこれ以外の方法については、拙著「『結晶知能』革命─50歳からでも「脳力」は伸びる!」(小学館)を参照してください。
次回は9月15日(火)、更新予定です。
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佐藤眞一先生が会長を務める老年行動科学会のホームページは、こちらからご覧になれます。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsbse/
日本老年行動科学会は、高齢者心理の研究者、医療・看護等の専門家、高齢者ケアの実践者等、様々な人々が集い、高齢者の徘徊や行動障害など心の問題に根ざした課題の解明に努め、高齢者の行動・生活改善とケアの向上に取り組んでいます。
現在、月例の高齢者ケースワーク研究会(ACS)、ACSのノウハウを基にした老年行動科学講座を開設しています。