Vol.4 シニアの人生を輝かせる「結晶知能」の特徴とは?
キーワード
☆<結晶知能>☆
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
脳の成長が止まったシニア期以降でも、経験と深い思考を積み重ねることでグングン伸びる脳力。若者にはない、大人の英知のもとになる知能。困難に直面したときに高い水準で解決できる、まさにシニアの知能。
★<流動知能>★
パソコンゲームを競ったり、単純な計算をすばやく行ったりするような脳の「性能」。青年期までは急速に成長するが、シニア期以降、急激に衰えてしまう。シニアは苦手だが、社会的・対人的な問題の対処には役立たない。
結晶知能は実践的な知能
結晶知能の特徴のひとつは、「実践的な知能」だということです。実践、つまり学習や経験によって獲得する能力とは、単に机上で計算をしたり、単語を丸暗記したりすることとはまったく異なります。実際に自分の目で見て、自分の耳で聞いて、リアルに体験することによって獲得する能力なのです。
さらに、結晶知能は、実践することによって発揮される能力でもあります。ペーパーテストの成績がいくら良くても、それを実践力があるとは言いません。結晶知能が高まれば、現実社会における行動のレベルが変わってきます。若いときには乗り越えることが難しかった問題でも、人生を重ねてさまざまな経験をしたことが血となり、肉となっていれば、それら困難な問題にも対処することができるはずです。
このように、結晶知能は、実践によって培われ、実践によって発揮される、まさに実践的な知能なのです。
さらに、結晶知能は、実践することによって発揮される能力でもあります。ペーパーテストの成績がいくら良くても、それを実践力があるとは言いません。結晶知能が高まれば、現実社会における行動のレベルが変わってきます。若いときには乗り越えることが難しかった問題でも、人生を重ねてさまざまな経験をしたことが血となり、肉となっていれば、それら困難な問題にも対処することができるはずです。
このように、結晶知能は、実践によって培われ、実践によって発揮される、まさに実践的な知能なのです。
努力をすれば、その分高まる知能
ただし、ここで注意してほしいことがあります。結晶知能は、加齢とともに自然に高まるものではない、ということです。シニアならば、若者よりも必ず結晶知能が高いというわけではないのです。
高級酒が、ただ時を経て熟成したわけではないのと同じです。熟成にはそれなりの条件が必要なのです。目を閉じて、耳をふさぎ、自らの殻に閉じこもって、知的好奇心にフタをしてしまうと、結晶知能は急速に衰えてしまうのです。
新たな知識への好奇心は、実は、経験を積めば積むほど高まるものなのです。知らなかったことを知る喜びは、何にも代えがたい結晶知能の原動力だからです。結晶知能は、日々高める努力をしている人と、そうでない人とでは、年をとるほどに個人差が大きく開いてしまう、そのような性質を持つ知能なのです。
高級酒が、ただ時を経て熟成したわけではないのと同じです。熟成にはそれなりの条件が必要なのです。目を閉じて、耳をふさぎ、自らの殻に閉じこもって、知的好奇心にフタをしてしまうと、結晶知能は急速に衰えてしまうのです。
新たな知識への好奇心は、実は、経験を積めば積むほど高まるものなのです。知らなかったことを知る喜びは、何にも代えがたい結晶知能の原動力だからです。結晶知能は、日々高める努力をしている人と、そうでない人とでは、年をとるほどに個人差が大きく開いてしまう、そのような性質を持つ知能なのです。
結晶知能はWhatの知能
結晶知能の第2の特徴は、「Whatの知能」だということです。5W1H(【When:いつ】【Where:どこで】【What:何を】【Why:なぜ】【How:どのように】)のうちのWhatの知能、すなわち思考内容そのものについての知能なのです。
知的能力を測定するときに特に大事なのは、Howの能力とWhatの能力です。計算を例に説明しましょう。年をとると、計算のスピードが遅くなってしまいます。速さでは小学生にもかないません。しかし、ボケ防止のためと思って、毎日繰り返し脳トレに励めば、計算のスピードは速くなっていくことでしょう。Howの能力が高まったという証拠です。
ですから、ボケ防止に脳トレをすることは、効果がないわけではありません。しかし、Howの能力、すなわち流動知能は、加齢に伴う脳の性能の衰えとともに、その最大能力は低下してしまいます。
つまり、いくら一生懸命に頑張っても、その能力には限界があるということです。
知的能力を測定するときに特に大事なのは、Howの能力とWhatの能力です。計算を例に説明しましょう。年をとると、計算のスピードが遅くなってしまいます。速さでは小学生にもかないません。しかし、ボケ防止のためと思って、毎日繰り返し脳トレに励めば、計算のスピードは速くなっていくことでしょう。Howの能力が高まったという証拠です。
ですから、ボケ防止に脳トレをすることは、効果がないわけではありません。しかし、Howの能力、すなわち流動知能は、加齢に伴う脳の性能の衰えとともに、その最大能力は低下してしまいます。
つまり、いくら一生懸命に頑張っても、その能力には限界があるということです。
結晶知能は知的思考の素になる
それに加えて、計算は、いくら速くできたからといっても、その結果がより高度になるなどということはありません。計算は、速くできても遅くても、その結果は同じなのです。また、脳トレでは、ワクワクするような知的好奇心を感じることもできません。なぜなら、計算などの脳トレで鍛えているのはHowの能力だからです。
Whatの能力である結晶知能を高めることは、思考内容そのものに変化を与えることであり、それがワクワクするような刺激となり、また、深く刻まれた大人の知的思考の素となるのです。
Whatの能力である結晶知能を高めることは、思考内容そのものに変化を与えることであり、それがワクワクするような刺激となり、また、深く刻まれた大人の知的思考の素となるのです。
“平和を願う思い”も、結晶知能があればこそ
「歴史に学ぶ」という言葉があります。しかし、実際に体験した人が、そのときに感じ、考え、悩んだことは、教科書のうえで事実を知ることとは比べものにならないほどにリアルです。
例えば、戦争体験者の詳細な報告を聴くと、教科書を読むだけでは想像しようとすらしなかった、人々の苦しみや悲しみに思いを寄せることができます。このような体験をした人だけが語ることのできる知性が、そこには溢(あふ)れているからです。
私たちが平和を願うことができるのは、戦争を体験した一人ひとりの言葉として表される結晶知能が、平和の大切さを伝えてくれるからなのです。そしてまた、こうした知性の累積によって人類の英知が醸成され、いつか戦争のない世界が現実となる日が来てほしいと願う気持ちも、私たちの結晶知能のなせる技なのです。
例えば、戦争体験者の詳細な報告を聴くと、教科書を読むだけでは想像しようとすらしなかった、人々の苦しみや悲しみに思いを寄せることができます。このような体験をした人だけが語ることのできる知性が、そこには溢(あふ)れているからです。
私たちが平和を願うことができるのは、戦争を体験した一人ひとりの言葉として表される結晶知能が、平和の大切さを伝えてくれるからなのです。そしてまた、こうした知性の累積によって人類の英知が醸成され、いつか戦争のない世界が現実となる日が来てほしいと願う気持ちも、私たちの結晶知能のなせる技なのです。
知能は大きく分けて2つある
参考文献
佐藤眞一監修『「結晶知能」革命─50歳からでも「脳力」は伸びる!』小学館
- 関連リンク
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佐藤眞一先生が会長を務める老年行動科学会のホームページは、こちらからご覧になれます。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsbse/
日本老年行動科学会は、高齢者心理の研究者、医療・看護等の専門家、高齢者ケアの実践者等、様々な人々が集い、高齢者の徘徊や行動障害など心の問題に根ざした課題の解明に努め、高齢者の行動・生活改善とケアの向上に取り組んでいます。
現在、月例の高齢者ケースワーク研究会(ACS)、ACSのノウハウを基にした老年行動科学講座を開設しています。