大変さばかり強調されることの多いケアマネジャーの仕事。でも、そのなかには、大変さ以上の魅力がつまっています。「難しい……」を「面白い!」に変えるヒントを一緒に探していきましょう。
第12回 自立と介護予防
唐突ですが、介護保険の目的とはなんでしょうか? いまさら何をと思われる方も多いでしょう。もちろん自立支援ですよね。
では、「自立」とはどんなことなのでしょう。手元の辞書を引いてみると──「他の助けや支配なしに自分一人の力で物事を行うこと。ひとりだち。独立」。この意味からすると、いわゆる「非該当」でないと自立の定義に当てはまらないことになってしまいます。しかし、皆さんが担当する利用者の多くは、非該当になることはほぼ不可能ではありませんか?
では、「自立支援」とは何を意味するのでしょうか。何気なく使っている言葉ですが、あらためて考えるとなかなかの難問ですね。私は、「介護予防」と併せて考えるのが「自立支援」の意味を理解する糸口になると思っています。つまり、要支援1の人でも要介護5の人でも、等しく「介護予防」も「自立支援」も可能だということです。
もう少し丁寧に説明しましょう。ある方が、今の能力を十二分に活用し、生活のなかで出来ることや自分で決定することを少しずつ増やしていくこと──少なくとも減らさないこと──これが「介護予防」であると私は思っています。そして、そのために利用者と共に考え、実行していくプロセスこそが「自立支援」であるということです。
要支援1の利用者が通所リハビリを利用し、認定の更新時に非該当になるという図式が“自立”の例として挙げられたりしますね。では、自立した結果、通所リハビリが利用できなくなり、また機能が低下してしまったら、いったいこの利用者にとっては「介護予防」になったのでしょうか。これまでの支援は「自立支援」といえるのでしょうか?
事例で考えてみましょう。Aさんには要支援1の認定が下りました。ケアマネジャーはAさんとともに、サービス(通所リハ)を通じて生活のなかで「安定した歩行」を獲得することを目標として設定したとします。まず大切なことは、この結果がAさんの生活全般にどのように関連するかを考えておくことです。これまでは転倒が怖くて室内の移動も介助者がいる時に限っていたのが、「一人で自由に歩くことが出来る。近所の友人の家を訪ねることが出来る。そのことが自信となって、止めていた趣味を再開する」など生活の変化が考えられますね。
サービスの利用とその効果が何をもたらすかも、検討しておくべきことのひとつです。通所リハで自分の状態や注意点が理解できたか。サービス利用時以外にできる(する)ことは何か。やってはいけないことは何か。Aさんが望む暮らし方に近づいたか。
そしてサービスを利用する上で最も大切なことは、サービスの利用形態をどう変えていくかについての検討です。できることが増えていけば、当然サービスの必要度は低下します。しかし、例えばAさんが具体的な場面(例えば友人の家の玄関から部屋へ上がる時)の身体の使い方を覚えたい時などは、かえって頻回なサービス利用が必要になるかもしれません。具体的に、どんな時にどんな利用をするのかを考えておくのです。もちろん、利用の結果、非該当になる可能性に関しても検討しておきます。
上記の過程の全てのことが「介護予防」を目的とした「自立支援」であると私は考えています。このような考え方に立てば、Aさんが非該当になったとしても、どうしたら今の状態を保てるかの検討も済んでいるはずですし、介護保険サービス以外の活用もきっと確保できていると思います。
サービス利用しか検討していない、すなわち「今をどう手当てするか」しか視野に入れていないならば、Aさんは「せっかく通所リハを利用して元気になったし、友達もたくさんできたのに、どうして止めなくてはいけないのですか」とがっかりなさるでしょう。こうしたことは意欲の減退、ひいては機能低下を引き起こす可能性もあります。それは一次的な介護予防ができたとしても、自立支援にはなっていないのです。
Aさんを皆さんの担当している利用者に置き換えてみてください。似たようなケースが思い浮かびませんか? 「今」だけではなく、「これから」をいつも視野のなかに入れて、利用者と共に考えていきましょう。その道筋こそが、介護予防であり自立支援だと思うのです。
では、「自立」とはどんなことなのでしょう。手元の辞書を引いてみると──「他の助けや支配なしに自分一人の力で物事を行うこと。ひとりだち。独立」。この意味からすると、いわゆる「非該当」でないと自立の定義に当てはまらないことになってしまいます。しかし、皆さんが担当する利用者の多くは、非該当になることはほぼ不可能ではありませんか?
では、「自立支援」とは何を意味するのでしょうか。何気なく使っている言葉ですが、あらためて考えるとなかなかの難問ですね。私は、「介護予防」と併せて考えるのが「自立支援」の意味を理解する糸口になると思っています。つまり、要支援1の人でも要介護5の人でも、等しく「介護予防」も「自立支援」も可能だということです。
もう少し丁寧に説明しましょう。ある方が、今の能力を十二分に活用し、生活のなかで出来ることや自分で決定することを少しずつ増やしていくこと──少なくとも減らさないこと──これが「介護予防」であると私は思っています。そして、そのために利用者と共に考え、実行していくプロセスこそが「自立支援」であるということです。
要支援1の利用者が通所リハビリを利用し、認定の更新時に非該当になるという図式が“自立”の例として挙げられたりしますね。では、自立した結果、通所リハビリが利用できなくなり、また機能が低下してしまったら、いったいこの利用者にとっては「介護予防」になったのでしょうか。これまでの支援は「自立支援」といえるのでしょうか?
事例で考えてみましょう。Aさんには要支援1の認定が下りました。ケアマネジャーはAさんとともに、サービス(通所リハ)を通じて生活のなかで「安定した歩行」を獲得することを目標として設定したとします。まず大切なことは、この結果がAさんの生活全般にどのように関連するかを考えておくことです。これまでは転倒が怖くて室内の移動も介助者がいる時に限っていたのが、「一人で自由に歩くことが出来る。近所の友人の家を訪ねることが出来る。そのことが自信となって、止めていた趣味を再開する」など生活の変化が考えられますね。
サービスの利用とその効果が何をもたらすかも、検討しておくべきことのひとつです。通所リハで自分の状態や注意点が理解できたか。サービス利用時以外にできる(する)ことは何か。やってはいけないことは何か。Aさんが望む暮らし方に近づいたか。
そしてサービスを利用する上で最も大切なことは、サービスの利用形態をどう変えていくかについての検討です。できることが増えていけば、当然サービスの必要度は低下します。しかし、例えばAさんが具体的な場面(例えば友人の家の玄関から部屋へ上がる時)の身体の使い方を覚えたい時などは、かえって頻回なサービス利用が必要になるかもしれません。具体的に、どんな時にどんな利用をするのかを考えておくのです。もちろん、利用の結果、非該当になる可能性に関しても検討しておきます。
上記の過程の全てのことが「介護予防」を目的とした「自立支援」であると私は考えています。このような考え方に立てば、Aさんが非該当になったとしても、どうしたら今の状態を保てるかの検討も済んでいるはずですし、介護保険サービス以外の活用もきっと確保できていると思います。
サービス利用しか検討していない、すなわち「今をどう手当てするか」しか視野に入れていないならば、Aさんは「せっかく通所リハを利用して元気になったし、友達もたくさんできたのに、どうして止めなくてはいけないのですか」とがっかりなさるでしょう。こうしたことは意欲の減退、ひいては機能低下を引き起こす可能性もあります。それは一次的な介護予防ができたとしても、自立支援にはなっていないのです。
Aさんを皆さんの担当している利用者に置き換えてみてください。似たようなケースが思い浮かびませんか? 「今」だけではなく、「これから」をいつも視野のなかに入れて、利用者と共に考えていきましょう。その道筋こそが、介護予防であり自立支援だと思うのです。