受験勉強も大事ですが、資格はなりたい自分に近づくための手段。合格後の「仕事のイメージ」を抱くことも大事です。このコーナーでは、資格の世界を知るのに役立った本や映画などを合格者が紹介します。
縛らない看護
医療・看護・福祉の関係者、必読の書
医療現場における「身体拘束」「抑制」の撤廃に向けて、先駆的に取り組んできた上川病院による実践の記録であり、「縛らない看護」に向けた提言の書です。従来、「身体拘束」や「抑制」という名の下に、老人病棟などでは患者を縛る看護が堂々と行われ、医療関係者もそれをよしとしてきました。その害悪を社会に問う動きの一翼を担ったのが本書であり、刊行後たいへんな注目を集めました。本書の特徴は、「縛らない看護」という倫理性の高いメッセージを発しているだけでなく、抑制廃止に向けた上川病院の取り組みが、試行錯誤のうえの十分な根拠づけと工夫の蓄積とともに行われた汎用性の高い取り組みであるということにあります。医療現場だけでなく、組織論やリーダシップの記録としても特筆すべき内容といえます。
「抑制」というと、もはや過去のことと思われる人もいるでしょう。しかし、もしかしたら今でも、医療や介護のためなどという大義名分があれば、現場の忙しさにまぎれ感覚が麻痺してしまえば、とにかく仕事を進めるために人を縛ってしまうということが起こってしまうかもしれません。人を援助する仕事にある以上、常に自分を省みることを怠らず、本書のメッセージを心にとめておきたいと思います。
(特別養護老人ホーム職員)