受験勉強も大事ですが、資格はなりたい自分に近づくための手段。合格後の「仕事のイメージ」を抱くことも大事です。このコーナーでは、資格の世界を知るのに役立った本や映画などを合格者が紹介します。
気違い部落周游紀行 (冨山房百科文庫 31)
きだみのる=著
発行:冨山房、1981年
価格:¥1260
発行:冨山房、1981年
価格:¥1260
現代に通じる「日本的社会」の姿
タイトルを見て最初思わずひいてしまいましたが、日本文化論のルポルタージュとして、ユーモアにあふれたとても興味深い本でした。著者は、第二次大戦中から1950年代にかけて、東京の西端にある川沿いの14戸しかない集落(部落)に滞在し、村人たちの行動を観察し記録します。その行動はいわゆる典型的な「田舎者」なのですが、著者は部落的な慣習については批評せず、現象だけを観察する視点を貫いています。それがあまりに客観的すぎて時におもしろおかしくもあるのです。
本書では、一人ひとりの人間を深く掘り下げ、個人の内面に根ざした本質を取り出しており、そこに醜いものと美しいものの共存がみえます。小さな社会で起きたできごとから人間の本質へと普遍化する視点は鋭く、「部落」の集まりである今日の日本全体ありようにもつながってくるように思えました。
(特養生活相談員 TK)