受験勉強も大事ですが、資格はなりたい自分に近づくための手段。合格後の「仕事のイメージ」を抱くことも大事です。このコーナーでは、資格の世界を知るのに役立った本や映画などを合格者が紹介します。
下へ下へと降りていく豊かな生き方
悩む力 べてるの家の人びと
おすすめの理由
私の大好きな地域のひとつに、北海道の浦河があります。浦河にある「べてるの家」には精神障害者の作業所やグループホームなどの社会資源があり、私もそこに行かせていただきましたが、それはそれはすごいところでした。精神障害の当事者が施設長をしていたり、「治さない医者」と名乗る医者が何がおこってもみんなに「順調!」と診断?していたり、とにかく常識が揺さぶられます。この本を読むと何だか単純に楽しそうとも感じる「べてるの家」の日常ですが、ここに集まる人たちは、精神障害という病気を発症し、辛い経験も本当にたくさんしてきて、悩んで、パニックになって、時には死ぬことも考えてきたのです。そんな人たちが浦河で仲間と出会って、病気を受け入れ、病気とともに楽しんで生きています。
弱さを絆に人と人とが結びつき、上に上にと利益を求めて登るのではなく、人との絆に価値を見出し下へ下へと降りていく。豊かな生き方です。そんな生き方をしているメンバーの人たちを見て、自分自身のものごとを判断する基準やら人生の価値観などを考え直さずにはいられません。本当に人生はGIVE&TAKE。与えているようで、与えられていることばかりだと気づかされます。
福祉は人間対人間の出会いが原点だと思います。出会いから始まって輪が生まれていく。出会いを大事に、丁寧に接していきたい。この本は、人を通して自分自身と向き合う大事さも教えてくれます。
(M.Nさん・地域活動支援センター支援スタッフ)
内容
2002年の第24回講談社ノンフィクション賞を受賞した作品。本書刊行時TBSディレクターであった著者によって、常識とはかけ離れた福祉施設「べてるの家」での人々の生活が描かれている。