受験勉強も大事ですが、資格はなりたい自分に近づくための手段。合格後の「仕事のイメージ」を抱くことも大事です。このコーナーでは、資格の世界を知るのに役立った本や映画などを合格者が紹介します。
人に寄り添うことの難しさを再確認し、傲慢な自分を反省
塩狩峠
おすすめの理由
ショックでした。はじめて読んだ後は、自分が変わってしまいそうな感覚がありました。主人公の信夫は、キリスト教を「ヤソ」と呼んで嫌う祖母に育てられ、クリスチャンである母と離されていましたが、祖母の死後、母や妹と一緒に暮らし始めます。父の死や、愛する人の病気など、苦難が待ち受けるのですが、吉川という無二の親友を得、理想的な青年へと成長してゆきます。勤め先でも大きな信頼を受け、周りからみると聖人君子。でも、その心の中は迷いが多く、葛藤がはっきり描かれています。
信夫の心の葛藤こそが、この本の注目してほしい点です。読んでいて、心に突き刺さってきます。時代背景は違っても、細かい心の動きが描かれた部分は、自分の心が読まれているような錯覚に陥るほどリアルです。
「塩狩峠」は、社会福祉士に関して描かれている本ではありませんが、私にとっては、仕事に忙殺されているなと感じた時に読み返す本となっています。人に寄り添うということの難しさを再確認し、傲慢になっている自分を反省する気持ちにさせてくれます。
冒頭に書かれている聖句を紹介しておきます。
一粒の麦、地に落ちて死なずば、唯一つにて在らん、もし死なば、多くの果を結ぶべし。(新約聖書 ヨハネによる福音書 第12章 24節)
(カテキンさん・生活相談員)
内容
実在の人物をモデルに書かれた長編小説。主人公である信夫の生涯が赤裸々に描かれている。愛する人は足が悪く、病弱。奇跡的に肺病が治り、結婚が決まった。しかし、結納のために札幌へ向かう朝、列車の暴走を止めようと信夫は自らの命を犠牲にする。ドラマにもなった『氷点』の著者による感動作。