受験勉強はもちろん大事。でも、机に向かって知識を詰め込むだけが取り組み方ではありません。合格者には、独自のアイデア、秘策もあるようです。本コーナーでは、先輩たちが推奨する「合格に役立ったもの」を自由なスタイルで紹介します。
かけがえのない言葉
“夢にはきっと花が咲く”
実習指導者から贈っていただいた言葉。
毎日持ち歩いている宝物です。
毎日持ち歩いている宝物です。
おすすめの理由
すてきな言葉で、すごくうれしくて、これを見てすぐ、ゼミの先生に「コピーさせてください」とお願いしてしまいました。実習先から学校宛てに送られてくる実習評価表のいちばん最後に書かれていた言葉です。お花も描かれていて、もう感動でした。この言葉を贈ってくださった実習指導者の方が、またすごい方でした。技術的なことはよくわからなくても、ああすばらしい方なんだと直感しました。精神科の病院のソーシャルワーカーで、患者さんのそばに寄り添っている様子が私には完成された姿に映りました。病棟を歩けば、あんなに患者さんに慕われて、ここで営まれてこられたことの大きさを感じました。びっくりしたのは、私がかかわりをもった何人かの患者さんの、特徴ともいえない特徴を口にしただけで、お一人ずつを明確に言い当てて、その方々の個性や最近の過ごされ方がすらすらと出てきたことでした。そして最後に、「こんなふうにするとよかったかな」と言われたときは、すごいやと圧倒されてしまいました。
こちらの実習を受けたのは大学3年の春(4年になる直前)でした。かたや、実習評価表を先生から見せていただいたのは受験が終わった後、4年の3月でした。
ということは、受験勉強の期間中にこの言葉を見て力をもらったというお話にはならないのですが、私は見ていなくても、言葉はたしかに贈られていました。きっと目標に向かい続ける力になってくれていたのだと思います。実はこの言葉は、ソーシャルワーカーとして働き出した今の自分にも、勇気や希望や力を与え続けてくれています。それだけ大事な言葉との出会いと併行して、どんな勉強をしていたのか、私の経験をお話しさせていただきます。
学内の受験対策
私たちの学年はなかなかレベルが高く、20人近くいた精神組(精神保健福祉コース)のほとんどが受験に合格したようです。学びの意欲が高くて、授業もちゃんと聴いて、という中にいたので、日頃の勉強は自然とできていたと思います。いわゆる受験対策としては、4年生になったときに受験対策講座がいくつか設けられて、その中の一つに入りました。事前に問題のプリントなどの課題が出され、講座では解答から踏み込んでより深い知識を学んでいく内容です。固定化されたメンバーで週1回、国家試験の直前まで続きました。
もう一つは、グループ学習です。4人一組のグループをつくり、自由にテーマを設定して勉強するものです。同じ問題を解いてきて内容を確認し合ったり、各自が苦手な科目に取り組んで報告し合ったりなど、取り組み方はさまざまです。グループ学習は週4日あり、この頻度はだいたい試験の前まで続いたので、大学に行かない日はほとんどなく、そのことが一日の勉強の量やリズムを一定させてくれました。
スケジュール
私の場合、家で勉強をやろうとすると、テレビとか本とか誘惑が多くて、しかも監視してくれる目もないので、学校に行かない日をつくるとダメだと思いました。その意味でも、グループ学習はプラスでした。一日のなかで勉強する時間は、まず大学への移動中に赤シートを使った自作のノートで学習。所要時間は約1時間半。学校で授業やグループ学習をした後、帰路はやはりノートで学習。夜は9時から12時くらいまで勉強して、1時くらいに寝て、朝は7時半に起床。後半はもう少し時間が増えましたが、これが4年のときの平均的な過ごし方です。
土日は、カフェで勉強しました。午前11時くらいにお店に入って、夕方6時くらいまで。私はテレビを観ながらラジオを聴きながら勉強できてしまうタイプで、周りの音は妨げになりませんでした。一日カフェでお茶できるなんて、いい気分転換にもなりました。
おもしろ勉強法
4年の夏くらいに名古屋の大学に行っている友達から聞いて始めたのが「用語しりとり」でした。福祉に関係する用語でしりとりゲームをするのですが、これがなかなか楽しいんです。慣れてくると、相手を負かすために同じ語尾で攻撃したりします。例えば、「日常生活自立支援事業(う)」や「包括的支援事業(う)」などの事業名。“う攻め”です。相手は、次は負けないようにと“う”で始まる用語をたくさん覚えておく。辞典を見ると、習っていない用語が並んでいて、しりとりに勝つためにそれを覚えるという具合です。用語を覚えてそれを使うと、「それってなんだっけ?」と疑問がわいてきて、「意味がわからない、調べよう」となります。こうやって調べたことは身にもつくので、一挙両得です。そのうちに、「薬の名前でやるとかっこいいよね」とか、どんどんマニアックになっていく。中央法規さんの『精神保健福祉用語辞典』にもお世話になりました。言葉
学校の勉強を中心におきつつ、勉強を楽しくする工夫も無意識に取り入れながら着実に、というのが総体としての私の受験勉強でした。受験対策用の本も持っていましたが、それよりは学校でもらったプリントを自分なりにまとめ直したりしたものが有用でした。冒頭に紹介した“夢にはきっと花が咲く”は、これらの勉強に本格的に取り組む以前に実は贈られていた言葉でした。国家試験が終わり、この結果を待つばかりの3月に、ゼミの先生からこれを見せていただいたとき、“咲く”(=合格する)に勇気づけられ、予感し、そしてほどなく、合格の通知を受け取ったのでした。
“夢には咲く”(=思っていれば咲く)ということは、今この時点ではまだ咲いていないということです。同時に“夢には”(=目指すものには)ということは、がんばらなくては成せないということです。何でも咲くと言っているのではなくて、「夢には」と言ってくださっている。受験のときは受験のときで指すものがあったし、社会人になったら今度は新たに指すものがある。咲くことに力を与えてくれたこの言葉が、これからも私に力を与えてくれる。そう思うと、がんばろうという気持ちがふつふつとわいてきます。
そんな言葉との出合いが皆様にも待っているかもしれません。出合ってきて、見過ごされているかもしれません。かけがえのない言葉との出合いを、そして皆様の合格をお祈りいたします。
プロフィール
平成23年度試験合格
田園調布学園大学人間福祉学部卒。4月より、神奈川県内の乳児院に勤務。中学くらいから、発達面や生育環境から「生きにくい」状態になっている子どものフォローをしたいと思うようになり、高校で履修した福祉系科目の教科書で「精神保健福祉士」という職種を目にした。2、3行の短い解説の中に、自分が求めていたものを見つけ(内容は残念ながら思い出せず)、早々にこの資格をとれる大学への進学を決めた。大学3年までは児童分野一本にねらいを定めていたが、病院実習等を経て職域の方向に悩み、一方では、ボランティア活動を通して児童分野に精神保健福祉士が必要とされている現実も目の当たりにした。資格取得の目標は揺らぐことなく、見事合格。将来の目標は、「精神保健福祉の専門性を備えたファミリーソーシャルワーカー」。特技は手話。きらいなものはピーマン、生もの、なす、おくら、ゆず。好きなものは赤ちゃん、ネット小説、水戸黄門のラスト10分。「頭のいい人が、そうとは見せずに正論で解いていくのがかっこいい、コナン君(名探偵コナン)かっこいい」と楽しそうに話す。23歳。