100歳の美しい脳―アルツハイマー病解明に手をさしのべた修道女たち
「私たちは修道女になったとき、子どもを持たないというつらい選択をしました。でも脳を提供することで、アルツハイマー病のなぞを解くお手伝いができれば、未来の世代に、別の形で生命の贈り物を残すことができるでしょう。――シスター・リタ・シュワルベ」(本文より)
アルツハイマー型認知症の原因を解明する研究に、死後の検脳も含めて協力した678人のシスターと、本書の著者であり、この調査研究の代表者であるスノウドン博士との日々を綴った書です。
冒頭の一文でわかるように、翻訳にすぐれ、ユーモアがありながら心に沁みる文章に好感が持てます。
博士が調査研究のためだけにシスターと関わっていたなら、検脳には応じなかったでしょう。真摯にシスターと交わり、そして一人ひとりの人生を大切に紐解いて行ったからこそ、研究が成功した。そのことが文章の端々から伝わってきます。
冒頭にシスターたちの写真が掲載されており、本文ではそれぞれの人生が自伝という形で詳細に記されています。そのため、読み終わったときには、シスターたちがまるで自分のおばあちゃんのように、とても身近な存在に感じるとともに、高齢者と関わるとき、その人のライフレビューを知ることの大切さを改めて実感しました。
もちろん、アルツハイマー病について、あるいはその予防についての記述もとても勉強になります。
本書は認知症ケアに携わる人なら、一度は耳にしたことがある有名な本ですが、残念ながら絶版になっているようです。しかし、時代を超えて「いい物はいい」と実感する一冊です。中古や図書館でぜひ!
(by てらこ)