猫鳴り
希望と絶望、生と死を猫との対面を通じて厳かに表した名著。
思いがけず、ようやく授かった子どもを死産してしまった熟年夫婦(第1部)。愛し、愛される実感を持たずに育った少年(第2部)。死に得も言われぬ恐怖を抱く孤独な老人(第3部)。彼らが一匹の猫(モン)と対面することを通じて、静かに、深く、自らの人生に対峙していく3部作。最後、数ページは涙なくしては読めない。絶望を絶望と認識することもなく生きる人々に、命ある限り生きようとする生き物としての単純で厳かな使命を伝える。
作者は主婦、僧侶、会社経営など多様な顔を持つ。『九月が永遠に続けば』で第5回ホラーサスペンス大賞を受賞するなど、注目の人物。本書も「おすすめ文庫王国2010-2011」エンターテイメント部門第1位に選ばれている。
(by てらこ)