舟を編む
なんとなく軽めの小説が読みたくなったときおすすめするのが「三浦しをん」。
現実にありそうなくらいのワクワク感と、魅力的な登場人物についつい引きこまれる。
これまでにも、駅伝、文楽、林業など他人があまり取り上げないものを舞台に、そこに生きる人々を描いてきたが、今回の舞台は「辞書編集部」。
意図した通りに書かれていない著者の原稿にカリカリしながら手を入れつつ、でも著者の機嫌を損ねないように注意を払ったり、作業も終盤に必要な項目が抜けていたら、前後で少しずつ記述を削って修正を最小限に抑えようとしたり、その「リアルな感じ」がたまらない。
個人的には、辞書編纂のために生まれてきたような新人・馬締(まじめ)が異動してきて部全体が辞書完成に向けて邁進するなか、チャラチャラしていて何事もそこそここなすけどすべてが中途半端で、辞書の編集にもそれほど熱心でなかった先輩・西岡が、自分の異動が決まってから、自分の存在意義というか、自分がいなくてもすんなり辞書は完成するんだろうなという寂しさを覚えて、今自分のやれることをやっておこうとする姿に、あ、俺も頑張ろ、と思った。
(by うしお)