老いの心の十二章
認知症高齢者の増加、右肩上がりの独居・老老世帯の数字、介護保険財政、あるいは、アンチエイジングや介護予防――。世界一の高齢化社会とされる現代日本で、「老い」は社会的な側面や財政的な側面、または健康など、さまざまな角度で議論の俎上に上ってくる。そうした議論のなかでぽっかりと抜けているのが、「老いを生きるとはどういうことか」であると著者は言う。
「高齢社会と「老い」」に始まり、「老年期心性と喪失体験」「老年期の孤独・孤立」「適応」など、高齢者の心の「今」を知り、老いをありのままにとらえるための十二章が並ぶ。
当事者不在のまま社会的な“問題”としてのみ老人が扱われ、また、老年心理学や精神医学は認知症に偏りすぎるなど、多様化する老いに対応できない現代社会に警鐘を鳴らす一冊。医療や福祉・介護の現場で高齢者にかかわる人だけでなく、「老い」について考えようとする人にも多様な視点を与えてくれる。
(by ウリノヴィッチ)