最終回 「助けて」が口に出せる夫に
あなたの命が危ない!?
「介護苦から無理心中――」。長野市のある福祉団体に行ったときに、同市近辺でも10件ちょっと起きていると新聞記事を見せられました。「加害者の方を見てごらん」と言われ、あらためて読んでみると、なんと全員が男性でした!! 一体なぜなのでしょうか?
以前その団体が、介護をしている人たちに対し、苦労話を書いてもらったことがありました。すると男性たちの手紙には、決まって「炊事・洗濯でくたびれました」と書いてあったそうです。
そうなのです。世の男性の多くは、介護をする以前の家事の段階で、すでに参ってしまっていたのです。
夫をしっかり自立させておかないと、あなたの命だって危ない。そう思わせるような話でした。
以前その団体が、介護をしている人たちに対し、苦労話を書いてもらったことがありました。すると男性たちの手紙には、決まって「炊事・洗濯でくたびれました」と書いてあったそうです。
そうなのです。世の男性の多くは、介護をする以前の家事の段階で、すでに参ってしまっていたのです。
夫をしっかり自立させておかないと、あなたの命だって危ない。そう思わせるような話でした。
自立とは、「上手に助けを求める能力」
ところで『自立』とは何でしょうか。「誰の助けも借りずに生き抜くこと」……そうではありません。「自分の手に負えなくなったときに、周りの人に上手に助けを求められること」なのです。
先日、介護をしていた息子が母親を虐待した事件の裁判がありました。裁判長に、「周りの人や機関に助けを求めようとはしなかったのですか?」と尋ねられ、「そういうことは思いもしませんでした」と答えていたのが印象的でした。
会社時代、仲間や上司にSOSを出すことは基本的にはタブーでした。“無能”の烙印を押されてしまうからです。そんな企業社会に何十年もつかってきた男性たちが妻や親を介護するとき、果たして周りに対して、素直に助けを求めることができるのでしょうか?
家事という入り口部分でつまずいてしまっているうえに、SOSを出すことはプライドが許さない……。恐ろしいことですが、「無理心中」はどこででも起こり得ることなのです。
先日、介護をしていた息子が母親を虐待した事件の裁判がありました。裁判長に、「周りの人や機関に助けを求めようとはしなかったのですか?」と尋ねられ、「そういうことは思いもしませんでした」と答えていたのが印象的でした。
会社時代、仲間や上司にSOSを出すことは基本的にはタブーでした。“無能”の烙印を押されてしまうからです。そんな企業社会に何十年もつかってきた男性たちが妻や親を介護するとき、果たして周りに対して、素直に助けを求めることができるのでしょうか?
家事という入り口部分でつまずいてしまっているうえに、SOSを出すことはプライドが許さない……。恐ろしいことですが、「無理心中」はどこででも起こり得ることなのです。
妻に先立たれて引きこもり……
妻であるあなたが先立つ、ということも頭に入れておく必要があるかもしれません。その後、夫がどういった運命をたどるのか……。
私たち福祉関係者を悩ませる、引きこもりの高齢者。妻に先立たれたことが原因で、人との関係を完全に絶ってしまう男性が圧倒的に多いようです。今回の「夫育て」シリーズのなかで「夫の社会参加」をことさら強調してきたのは、実は孤独死など、こういったことが背景にあるからなのです。
とにかく、あなたが生きている間に、自分のグループでもいいから夫を参加させて(つながらせて)おくこと、そこで助けを求める練習をさせておくこと。夫の老後を考えたとき、これは必須の要件です。
私たち福祉関係者を悩ませる、引きこもりの高齢者。妻に先立たれたことが原因で、人との関係を完全に絶ってしまう男性が圧倒的に多いようです。今回の「夫育て」シリーズのなかで「夫の社会参加」をことさら強調してきたのは、実は孤独死など、こういったことが背景にあるからなのです。
とにかく、あなたが生きている間に、自分のグループでもいいから夫を参加させて(つながらせて)おくこと、そこで助けを求める練習をさせておくこと。夫の老後を考えたとき、これは必須の要件です。
あなたのために……、夫や子供たちのために……
大事なことは、「いずれそのときになったら助けてもらおう」では遅いということです。特に男性の場合、今のうちから小さなことでもいいから、気軽に助け・助けられる練習を積んでおくことが大切です。「困ったときはお互い様」という関係を、周囲の地域社会に作っておくことが必要なのです。
あなた自身のためにも、そして長年連れ添った夫や子供たちのためにも、「助けて!」がしっかり言える夫に育てていきましょう。
あなた自身のためにも、そして長年連れ添った夫や子供たちのためにも、「助けて!」がしっかり言える夫に育てていきましょう。
- 著者である木原孝久先生の活動は、こちらをご覧ください
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住民流福祉総合研究所
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