第5回 「夫育て」の成功例(1)
定年前に「助走期間」が必要?
東京・小平市の主婦のグループが、メンバーで揃って夫育てを実践したことがあります。その1人、内田純子さん(65歳)にいわせると、「夫育ては定年前から」が大事なポイントのようです。まだ働いているうちから、家事なり社会参加の準備をしておいた方がいい。助走期間が必要だということです。
彼女にその助走期間を振り返っていただきました。当時彼女は、障害を抱えた息子さんのための作業所づくりと、入退院を繰り返すお母さんの付き添いなど外出しがちで、ご主人はひとり家に取り残されることが多かったといいます。
純子さんは、これを夫育てのチャンスとばかり、あえて食事を作らずに外出し、「夫に家を守ってもらおう」と決意したのでした。
「助かるわ〜。ありがとう」の言葉に…
「休みには、主人が家の布団を干してくれていました。それを横目に見ながら、息子に向かって、『(息子が生活している)グループホームの皆の布団も干してあげたいんだけど、数も多くて重いし、なかなかできなくてごめんね』と話していたら、いつのまにか主人がグループホームまで干しに行ってくれるようになりました。息子の喜ぶ顔と、私の『助かるわ〜』の言葉に、休みになると『これもボランティアなのかなぁ』といいながら出掛けて行きます。今では、草取りや包丁研ぎなども進んでやってくれるようになりました」。相手の目の前で“上手にグチる”のもホメ作戦の大事な1つです。
「家の手伝いを当たり前と思っているうちは、ケンカにもなりましたが、『助かるわ。ありがとう』の気持ちを伝えるようになってからは、トラブルも少なくなりました」。期待したことの80%のデキでも、「ありがとう」というのがホメの秘訣だそうです。
「家の手伝いを当たり前と思っているうちは、ケンカにもなりましたが、『助かるわ。ありがとう』の気持ちを伝えるようになってからは、トラブルも少なくなりました」。期待したことの80%のデキでも、「ありがとう」というのがホメの秘訣だそうです。
退職後2年目に突然、チャンスが!
その後、夫の定年。グループ活動や講座のチラシを本人の前にそっと置いてみても、退職後1年はほとんど見向きもされなかったといいます。ご主人にいわせると、まだ会社時代の仲間との関係が切れず、地域活動どころではなかったと。彼女は、「ここはひたすら耐える期間」と思い直し、しばらく様子を見ることにしました。
退職2年目に、突然チャンスが。子供の安全を守るための登下校時の見守り活動がシニア世代に求められるようになり、たまたま孫も同じ世代だったからか、「これにスーッと反応した」そうです。
退職2年目に、突然チャンスが。子供の安全を守るための登下校時の見守り活動がシニア世代に求められるようになり、たまたま孫も同じ世代だったからか、「これにスーッと反応した」そうです。
簡単に見切りをつけるな
定年後の男性に話を聞いてみると、「退職後の1年」というのはどうやら特別な期間のようです。会社の関係はまだ切れない。地域は何だか恐ろしい。近所付き合いのルールも皆目わからない。加えて新しい生活への気持ちの切り替えができていない…。というわけで、一種の「引きこもり」状態に陥るのだとか。「5月病」みたいなものかもしれません。
おそらく小学生とのふれあいが、ご主人を変えたのではないかと純子さんは推察しているのですが、とにかくこれをきっかけに、学校行事の手伝いなど、積極的に地域活動に踏み出すようになったといいます。「主人がボランティアに興味を持ってくれるとは、夢にも思わなかった」。退職後すぐの夫に対して簡単に見切りをつけるな、ということでしょうか。
おそらく小学生とのふれあいが、ご主人を変えたのではないかと純子さんは推察しているのですが、とにかくこれをきっかけに、学校行事の手伝いなど、積極的に地域活動に踏み出すようになったといいます。「主人がボランティアに興味を持ってくれるとは、夢にも思わなかった」。退職後すぐの夫に対して簡単に見切りをつけるな、ということでしょうか。
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住民流福祉総合研究所
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