受験勉強も大事ですが、資格はなりたい自分に近づくための手段。合格後の「仕事のイメージ」を抱くことも大事です。このコーナーでは、資格の世界を知るのに役立った本や映画などを合格者が紹介します。
死について、仕事について、静かな内省をいざなう
詩ふたつ
著者:長田 弘 絵:グスタフ・クリムト
発行:クレヨンハウス
ISBN:9784861011726
価格:¥2,940(税込)
発行:クレヨンハウス
ISBN:9784861011726
価格:¥2,940(税込)
おすすめの理由
去年の大きな地震のあと、なぜか急に本が読めなくなってしまいました。本好きの自分としては滅多にないことです。あるとき、公私ともにお世話になっている人生の大先輩との雑談の折りにその話をすると、この本を薦められました。最初は、詩集など柄でもない、とあまり乗り気ではなかったのですが、次に先輩に会うときまでに読んでおかないとちょっと気まずいかな、となかば義務感から手にとった一冊でした。春の日、あなたに会いにゆく。
あなたは、なくなった人である。
どこにもいない人である。
どこにもいない人に会いにゆく。
きれいな水と、
きれいな花を、手に持って。
この本におさめられている2篇の詩は、著者・長田弘氏が奥様の死を契機に書かれたものだそうです。先輩から薦められたときにそうした事情は聞いていたのですが、はじめの1頁を読んだとき真っ先に私の脳裏に浮かんだのは、震災で身内をなくした方々が、きれいな水ときれいな花を手に持って、なくなった人とついこの間まで暮らしていた海辺の町のそれぞれの場所に歩いて向かう姿でした。
どこにもいない?
違うと、なくなった人は言う。
どこにもいないのではない。
どこにもゆかないのだ。
いつも、ここにいる。
むずかしいことばはひとつも使われていない、ほんの40頁ほどの本です。どれだけゆっくり読んでも、せいぜい数十分で読み切れてしまいます。でも、やさしいことばのつらなりは、読者をとてつもなく深い場所にみちびいてゆきます。私たちがふだん、見て見ぬふりをしている死と生の実相について、詩人はまるでなくなった人から直接聞き取ってきたかのようなことばをつづります。そのことばは、詩人が手向けるきれいな水のように、渇いた読者の心を潤します。詩に添えられているクリムトの絵も、甘美、妖艶といったイメージとは異なり、樹木、森、果実、沼、湖、空が稠密な筆遣いで描かれ、耳をすませば絵からことばが聞こえてくるようです。
死・生・ことばという、ケアマネジャーにとって切っても切り離せない重要なテーマについて、とても大切なことを教わった気がします。
(ショップガールさん・ケアマネジャー)
内容
「花を持って、会いにゆく」「人生は森のなかの一日」という長田弘の詩2篇と、画家クリムトの絵が対になった愛蔵版詩画集。誰にも訪れる、愛する人を失うという経験。「死」の悲しみをやさしく癒し、大切な人との「絆」を静かに伝えてくれる一冊。(けあサポ編集部)