受験勉強も大事ですが、資格はなりたい自分に近づくための手段。合格後の「仕事のイメージ」を抱くことも大事です。このコーナーでは、資格の世界を知るのに役立った本や映画などを合格者が紹介します。
“なんちゃって”ではない本当のバリアフリーのために
ユニバーサルサービス―すべての人が響きあう社会へ―
おすすめの理由
車いすを利用する人たちの間で使われている言葉に「なんちゃってバリアフリー」というのがあるそうです。長いスロープを苦労して登り切ったのに、出口をふさぐ車や自転車のせいで結局目的地までたどり着けない。そういった腹立たしくも悲しい状況を指す、冷笑的な言葉です。
バリアフリーの建物やユニバーサルデザインの製品など、ハード面の広がりは誰の目にも見えるものです。しかし、それらと対になるべきソフト面の不足については、福祉の専門職でありながら、実際に「なんちゃってバリアフリー」に行く手を阻まれた経験のない私にとって、実感もなければ、考える機会すらないことでした。
タイトルにもなっている『ユニバーサルサービス』とは、バリアフリーのソフト面を考えることです。そのソフト面とは、町をゆく一人ひとりの、ちょっとした気づきによって整備されていくものなのだと思います。困っている人に一言声をかけてあげるだけで「なんちゃってバリアフリー」が本当のバリアフリーに変わることだってあるのかもしれません。
すべての人がユニバーサルサービスの提供者候補なのだと思います。「なんちゃって…」なんていうシニカルな言葉が使われなくなる日が来ることを願って、この本をおすすめします。
(東雲太郎さん・ケアマネジャー)