最終回 〈ステージ3-Step3〉「自分を取りまく環境について知ろう」の解説
堀越 弘(キャリアステージ研究所代表)
キャリア・ライフデザインのための最後として、ステージ3「自分を取りまく環境について知ろう」に取り組んできました。何を行ったか思いだしていただけるでしょうか。
第10回目では<Step1>として、私たちが生活している環境で起こっている変化とその影響、そして周囲からの期待について考えてみました。第11回目の<Step2>では、私たちが社会のなかで担っている、さまざまな役割について考えてきました。
これらの課題に取り組んだのは、キャリア・ライフをデザインするための最後の段階として、現在と将来における「自分と社会との関係」を見つめることが必要といわれているからです(ここでいう社会とは、家庭や地域、職場、そして世の中全般であり、私たちが生活している世界です)。最後の回として、自分と社会との関係に取り組んでみましょう。
第10回目では<Step1>として、私たちが生活している環境で起こっている変化とその影響、そして周囲からの期待について考えてみました。第11回目の<Step2>では、私たちが社会のなかで担っている、さまざまな役割について考えてきました。
これらの課題に取り組んだのは、キャリア・ライフをデザインするための最後の段階として、現在と将来における「自分と社会との関係」を見つめることが必要といわれているからです(ここでいう社会とは、家庭や地域、職場、そして世の中全般であり、私たちが生活している世界です)。最後の回として、自分と社会との関係に取り組んでみましょう。
「自分と社会との関係」を考える
「自分と社会との関係」において、まず<社会>に視点をおいたとき、<社会>から<自分>は何を期待されているのかを知るのは、社会的存在である私たちにとって重要なことです。また<自分>に視点をおくならば、<自分>は<社会>の中で、何ができ何をしたいと思っている人間なのかを理解するのは、主体的に人生を送るうえで大切であるといえます。
この『社会からの期待』と『自分の望み』を、現実的に折り合いをつけながら、納得のいくかたちで、『社会の中での自分の役割』として捉え、社会のさまざまな場で、この役割を行っていくことが必要になってきます。
そして、この『社会からの期待』と『自分の望み』は、定年直後だけではなく、その後の人生のさまざまな転機のなかで変化していくかもしれません。しかし、そのたびごとに、これから何をしていくことが自分の役割なのかと自分に問いかけ、『社会の中での自分の役割』を捉え直していくことが、<自分>と<社会>とのよりよい関係をつくり上げるアプローチだといえるでしょう。
このシリーズでは、全部で11のステップを提示してみました。11のステップで取り上げた課題と関連付けて整理しますと、『社会からの期待』については第10回で取り組みました。『自分の望み』については、<Stage2>「自分について深く知ろう」の中の第5回〜第8回で取り組んだ「自分の価値観や能力、興味の点検」を思い出してください。そして、『社会の中での自分の役割』は、前回の第11回で考えてきました。
このように、実は、本シリーズは全体として「自分と社会との関係」を、段階を追っていろいろ詳しく見つめるためのものでした。言いかえますと、キャリア・ライフデザインとは、「自分と社会との関係を考え、社会の中における自分の役割をどのように果たしていくか」ということでもあると思います。
「社会の中における自分の役割」を考えるうえで
次に、これからの役割を考えるうえで、幾つかの視点について皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
(1)自分から役割を見つける
中高年(特に男性ですが)の多くが、定年退職を契機に直面する大きな問題の一つは、役割喪失だといわれています。今まで、会社中心の生活を送り、職場の中ではそれなりの肩書きをもち、責任ある役割を担ってきた人が、会社の定年を境にして、「自分の居場所がなくなり、周囲からも必要とされなくなった」と感じてしまうことによって、この役割喪失感は生じるのだと思います。
「自分から会社を取ったら何も残らない」、これほど極端ではないにしても、これに近い思いをもっている方は少なくないかもしれません。
やはり、定年を迎える以前から、定年後の自分の役割を考えておくことが大切だといえるでしょう。第11回で、人生には主に6つの役割(職業人、学ぶ人、子供、家庭人、余暇を過ごす人、市民)があることを紹介しましたが、それぞれにおいて、私たちは他者からも喜ばれ、自分も生き生きできる具体的な役割を見つけておく準備をしたいものです。
「自分から会社を取ったら何も残らない」、これほど極端ではないにしても、これに近い思いをもっている方は少なくないかもしれません。
やはり、定年を迎える以前から、定年後の自分の役割を考えておくことが大切だといえるでしょう。第11回で、人生には主に6つの役割(職業人、学ぶ人、子供、家庭人、余暇を過ごす人、市民)があることを紹介しましたが、それぞれにおいて、私たちは他者からも喜ばれ、自分も生き生きできる具体的な役割を見つけておく準備をしたいものです。
(2)パートナーとの役割分担
また、性役割について考えることも、これからの自分の役割を検討するうえで必要でしょう。
日本では伝統的に、「男性は外で仕事をして家族を養う。女性は家事や育児を行い家庭を守る」という意識を人々はもっていると言われています。最近では、女性の社会進出や、若年男性の家事・育児の参加によって、この性役割意識も変化していますが、やはり多くの中高年の方は、従来の性役割意識で長年生活してきたわけですから、そう簡単に、この意識を変えることは難しいかもしれません。
ですが、定年後のライフスタイルは、以前のように会社中心ではなくなり、家庭や地域で過す時間も多くなってきます。そのときに、自分のパートナーとどのように役割分担をするのがよいのかを考えてみる必要があるかもしれません。
日本では伝統的に、「男性は外で仕事をして家族を養う。女性は家事や育児を行い家庭を守る」という意識を人々はもっていると言われています。最近では、女性の社会進出や、若年男性の家事・育児の参加によって、この性役割意識も変化していますが、やはり多くの中高年の方は、従来の性役割意識で長年生活してきたわけですから、そう簡単に、この意識を変えることは難しいかもしれません。
ですが、定年後のライフスタイルは、以前のように会社中心ではなくなり、家庭や地域で過す時間も多くなってきます。そのときに、自分のパートナーとどのように役割分担をするのがよいのかを考えてみる必要があるかもしれません。
(3)経験や知見を若い世代へ伝える
皆さん方は、長年、職業人生を歩んでこられ多くの経験を積重ねてきました。職場の中では、この経験を部下や後輩に伝え、彼らが成長するのを支援してきたのではないでしょうか。
定年後においても、専門能力や人生経験で培った知見を、新たな職場や地域で、次の世代を担う人たちと交流しながら伝えることは、社会的に意義がありますし、皆さんの生活をいきいきさせることにも繋がるといえます。
アメリカの心理学者エリクソンは、中高年のこの役割を「世代性」と呼び、自らの人生を充実させ創造的に生きるうえで大切であるといっています。
皆さんにとって、この世代性を意識した活動には、どのようなものが考えられるでしょうか。人によっては、なかなか見つけるのが難しいかもしれませんが、身近なところでの若い世代との交流など、できるところからまず実践してみてはいかがでしょうか。
今回で、このシリーズは終了となります。今まで、このキャリア・ライフデザインに熱心に取り組んでいただき、本当にありがとうございます。
これからの人生を考えるうえでのヒントが1つでも見つけられたのなら、とてもうれしく思います。
定年後においても、専門能力や人生経験で培った知見を、新たな職場や地域で、次の世代を担う人たちと交流しながら伝えることは、社会的に意義がありますし、皆さんの生活をいきいきさせることにも繋がるといえます。
アメリカの心理学者エリクソンは、中高年のこの役割を「世代性」と呼び、自らの人生を充実させ創造的に生きるうえで大切であるといっています。
皆さんにとって、この世代性を意識した活動には、どのようなものが考えられるでしょうか。人によっては、なかなか見つけるのが難しいかもしれませんが、身近なところでの若い世代との交流など、できるところからまず実践してみてはいかがでしょうか。
今回で、このシリーズは終了となります。今まで、このキャリア・ライフデザインに熱心に取り組んでいただき、本当にありがとうございます。
これからの人生を考えるうえでのヒントが1つでも見つけられたのなら、とてもうれしく思います。
(2008年10月21日)