第10回から、ナツさんの事例をとおして、生活(いき)ること支援の第1ステップ「相手の生活(いき)る思いを察することの大切さ(援助者の主観で決めつけないように!)」と、第2ステップ「相手の現状(事実)を確認すること(援助者の思い込みに注意しよう!)」についてまとめてきました。そして今回はいよいよ、最終段階の第3ステップとして「社会資源」に関することをお話しします。
第12回 事例から学ぶ…生活(いき)ること支援の第3ステップ
〜必要な社会資源を考えよう!
社会資源とは?
「社会資源」というとみなさんはまず何を思い浮かべるでしょうか? 教科書的には、利用者がニーズを充足し、問題解決するために活用される各種の制度・施設・機関・設備・資金・物質・法律・情報・集団・個人の有する知識や技術の総称であるとされています。
私は、生活(いき)ること支援の専門職(ソーシャルワーカー)にとって、これらの社会資源をどのようにとらえ、どのように活かしていけるかが重要であると考えています。
多くの専門職は、児童福祉・障害者福祉・高齢者福祉などの専門分野に分かれて働いており、それぞれの分野に関する制度やサービスには精通していても、他の分野のことに関してはよくわからないという現実もあります。そのため、意識していないと自分が詳しい社会資源の分野に偏って、援助の方向性を考えてしまうことも起こりうるのです。結果的に、限られた制度やサービスという型に、利用者の生活をはめ込んでしまう危険性もあります。
私は、生活(いき)ること支援の専門職(ソーシャルワーカー)にとって、これらの社会資源をどのようにとらえ、どのように活かしていけるかが重要であると考えています。
多くの専門職は、児童福祉・障害者福祉・高齢者福祉などの専門分野に分かれて働いており、それぞれの分野に関する制度やサービスには精通していても、他の分野のことに関してはよくわからないという現実もあります。そのため、意識していないと自分が詳しい社会資源の分野に偏って、援助の方向性を考えてしまうことも起こりうるのです。結果的に、限られた制度やサービスという型に、利用者の生活をはめ込んでしまう危険性もあります。
ナツさんの事例から…社会資源と自己資源の連携
それでは、第10回と第11回のナツさんの事例を振り返りながら、ソーシャルワーカーは社会資源をどのようにとらえ、活かしていったら良いのかのポイントをお伝えしていきたいと思います。
援助開始当初には「できる限り自宅で暮らしたい」という思いを伝えてくれたナツさんも、認知症の進行とともに混乱は強まり、日常生活上の支障が現れてきました。介護保険のサービス利用などでサポートしていく必要性は考えられましたが、しばらくの間、ナツさんは「私にはまだ必要ありません」と話されていました。
その間も私は、今後ナツさんの生活を支援するうえで必要となる社会資源について考え、医師、民生委員、地域包括支援センター、ケアマネジャー、入居施設職員、社会福祉協議会、自治会の皆さん、近隣に住むナツさんの友人、権利擁護として弁護士による任意後見人を確保し、生活支援の働きかけをしていました。いつでも必要になったときに、迅速に対応できるための生活支援ネットワークです。
このネットワークを活かしていくためには、ナツさんの思いを察していくことが重要です。表面的な変化のみをみていくのではなく、揺れ動く思いを察していくことで、ナツさんの心身変化から生じる生活模様の変化に気づくことができます。このように必察しながらネットワークを活用していくことで、ナツさんも納得いくような自然な流れのなかで、ホールヘルプサービスの利用にもつながっていったのです。
その頃にはすでにナツさんの言動は近所にとっても心配の種となっていましたが、地区担当の民生委員を中心とした積極的な働きかけによって、ナツさんは地域の人に見守られながら自宅で生活を続けることができました。
それは、ナツさんがこれまで築いてきたナツさんと地域社会資源とのつながりがあったからこそだと考えます。ソーシャルワーカーによるネットワークとナツさん個人が築いてきた自己資源がつながって初めて、ナツさん自身が生活(いき)ることに連なってくるのです。
援助開始当初には「できる限り自宅で暮らしたい」という思いを伝えてくれたナツさんも、認知症の進行とともに混乱は強まり、日常生活上の支障が現れてきました。介護保険のサービス利用などでサポートしていく必要性は考えられましたが、しばらくの間、ナツさんは「私にはまだ必要ありません」と話されていました。
その間も私は、今後ナツさんの生活を支援するうえで必要となる社会資源について考え、医師、民生委員、地域包括支援センター、ケアマネジャー、入居施設職員、社会福祉協議会、自治会の皆さん、近隣に住むナツさんの友人、権利擁護として弁護士による任意後見人を確保し、生活支援の働きかけをしていました。いつでも必要になったときに、迅速に対応できるための生活支援ネットワークです。
このネットワークを活かしていくためには、ナツさんの思いを察していくことが重要です。表面的な変化のみをみていくのではなく、揺れ動く思いを察していくことで、ナツさんの心身変化から生じる生活模様の変化に気づくことができます。このように必察しながらネットワークを活用していくことで、ナツさんも納得いくような自然な流れのなかで、ホールヘルプサービスの利用にもつながっていったのです。
その頃にはすでにナツさんの言動は近所にとっても心配の種となっていましたが、地区担当の民生委員を中心とした積極的な働きかけによって、ナツさんは地域の人に見守られながら自宅で生活を続けることができました。
それは、ナツさんがこれまで築いてきたナツさんと地域社会資源とのつながりがあったからこそだと考えます。ソーシャルワーカーによるネットワークとナツさん個人が築いてきた自己資源がつながって初めて、ナツさん自身が生活(いき)ることに連なってくるのです。
このことは、次のようなナツさんとのやりとりやナツさんの変化からもわかります。
* * *
ナツさんの言動から、次第に一人で暮らすことの不安が察しられたので、ナツさんのもつこれまで築いてきた自己資源と、新たな社会資源の連携支援を試みました。そして、ナツさんにも納得してもらえるように次のようなポイントで話をしました。
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ナツさんの言動から、次第に一人で暮らすことの不安が察しられたので、ナツさんのもつこれまで築いてきた自己資源と、新たな社会資源の連携支援を試みました。そして、ナツさんにも納得してもらえるように次のようなポイントで話をしました。
(1) | 「ナツさんの家は変わらずここにあり、いつまでもナツさんが居られるところです」 →現在の居場所の確認(自身の家という資源) |
(2) | 「ただ、どうしても不安になってしまうことがあるときは、いつも側に穏やかに見守ってくれる人がいる別宅を考えてみてはどうでしょうか?」 →別宅という安心できる居場所の確認(新たな安心できる場所という資源) |
(3) | 「別宅では食事も作ってくれます。お風呂も入れます。そして、いつでも相談できる人がいます」 →理解者や応援者がいる居場所の確認(新たな人的資源) |
(4) | 「別宅からは、いつでもナツさんの自宅に行ったり来たりできますよ。その時には、私にもお手伝いさせてください。私たちはナツさんの応援団ですから」 →ナツさんの意思を聴いて対応するという安心感(これまでの人的資源の確認) |
するとナツさんは、「そんな贅沢なことができるの」と話されました。矢継ぎ早にナツさんは話します。「それは良いことを聞いたわ」「それで、いつから行けるの?」「今から行きましょうよ!」とテンポよく話が進み、不安そうだった表情がみるみるうちに明るい表情になりました。その変容ぶりもさることながら、さらに驚いたことは、押し入れにはすでにボストンバック2つと風呂敷包みが用意されており、いつでも行ける準備ができていたのです。
(第13回(最終回)に続きます)
(第13回(最終回)に続きます)