第4回から数回に分けて、ソーシャルワーカーの「知識」「技術」「価値」についてお伝えしています。生活(いき)ることを支援する専門職にとって必要な「知識」「技術」「価値」とはどのようなものなのか…。今回は、前回お話しした内省力・想像力について、具体的にどのように働かせていくのか、事例を通して深めていくことにします。
第7回 ニーズを明確にする内省力と想像力
なぜそう思ったのか? −内省力
前回のKさんの事例を思い出してみてください。同居する実母の変化を心配し専門職に相談してきたKさん。「もしかして認知症?!」と思われる、このような相談は専門職が多く受ける相談の一つだと思います。
Kさんは「母の妹が心配して、このままだと大変だから介護のサービスでも利用できるようにしたほうがいいと言われて」「何かサービスを利用できるでしょうか?」と話しています。さあ、まずは内省力を働かせてみましょう。
この時点で相談を受けた専門職には、すでにさまざまな「思いこみ」が生じていると思われます。例えば次のようなものです。
(1)恐らくお母さんは認知症だろう、という思いこみ
(2)大変そうだからできるだけ早くサービスを利用をしたほうが良い、という思いこみ
(3)サービスを利用したほうがいいと思っているのは叔母であって、娘はそれほどでもない、という思いこみ
ここで、自身の頭に思い浮かんだ考えをまずチェックです。どのような考えにせよ、自分はなぜそう考えたのか、自身と向き合うことが重要です。相手の言葉(訴え)や声のトーン、話し方からも、聞き手が受ける影響は少なからずあります。例えばKさんの言葉(その話し方や声のトーンなど)から、(3)のような考えが浮かんだ人は、内省することで、「他人任せな考え方は好まないという価値観が強い」という自身の特徴に、気づくことができます。専門職が自身の特徴に気づいていくことで、思いこみにとらわることが少なくなり、支援の方向性も広がっていきます。
Kさんは「母の妹が心配して、このままだと大変だから介護のサービスでも利用できるようにしたほうがいいと言われて」「何かサービスを利用できるでしょうか?」と話しています。さあ、まずは内省力を働かせてみましょう。
この時点で相談を受けた専門職には、すでにさまざまな「思いこみ」が生じていると思われます。例えば次のようなものです。
(1)恐らくお母さんは認知症だろう、という思いこみ
(2)大変そうだからできるだけ早くサービスを利用をしたほうが良い、という思いこみ
(3)サービスを利用したほうがいいと思っているのは叔母であって、娘はそれほどでもない、という思いこみ
ここで、自身の頭に思い浮かんだ考えをまずチェックです。どのような考えにせよ、自分はなぜそう考えたのか、自身と向き合うことが重要です。相手の言葉(訴え)や声のトーン、話し方からも、聞き手が受ける影響は少なからずあります。例えばKさんの言葉(その話し方や声のトーンなど)から、(3)のような考えが浮かんだ人は、内省することで、「他人任せな考え方は好まないという価値観が強い」という自身の特徴に、気づくことができます。専門職が自身の特徴に気づいていくことで、思いこみにとらわることが少なくなり、支援の方向性も広がっていきます。
3つのステップに従って想像力を働かせる
また、相談を受ける時に押さえておきたいポイントがあります。それは、「誰が、何を欲しているのか?」ということです。ついつい、表面的な言葉(訴え)に応えて支援を始めてしまいがちですが、事実を確認し、さまざまな背景要因から想像力を働かせて相手の思いを察していくという過程が重要です。図では、その過程を3つのステップにまとめました。
Kさんの事例では、「何か言うとうるさがってものすごい剣幕で怒鳴ったりもする」「母の妹が心配して…介護のサービスでも利用できるようにしたほうがいいと言われて」「何かサービスを利用できるでしょうか?」というKさんの言葉(訴え)に応えて、サービスに関する説明などを急いでしまうと、Kさんが消化不良※を起こしてしまうことにもなりかねません。話を伺ったうえで、さらに事実・現象をていねいに確認していくことが大切です。
例えば事実の確認として、次のようなことが考えられます。
(1)お母さんは食事、着替え、排泄などの日常必要な生活行為はどのようにされているのか
(2)お母さんが一人でできること、一人では難しいことは何か
(3)母の妹は実際にどの程度かかわってくれているのか など
事実を確認していくことで、Kさんのニーズや生活支援の課題がより整理されていきます。それにより、サービス利用ができるかどうかよりも、「本当に困っていること」が見えてくるのです。例えば、「Kさん自身も母の変化を不安に感じているが、どうしたらよいのかわからない」「母親は一人ではうまくできないことが増えてきていてとても心配だが、それ以上に叔母から言われることが負担になっている」など…つまりKさんのニーズが見えてくるのです。
ここで、さらに「背景要因」をとらえていく視点が必要です。
背景要因には、心身的要因や人的要因、経済的要因、環境的要因などが考えられます。Kさんの事例でも、「今後主介護者となっていくであろうKさんの心身状態はどうか」「身近に信頼でき、いざという時に力になってくれるようなマンパワーはあるか?」「サービス利用のための経済的負担はどの程度か?」などといった背景要因を整理していくことで、より、事実や訴えの元が明確になり、相談者の表面的なニーズのみならず、背景に潜むニーズについても明確化でき、よりよい生活支援につながっていくと考えます。
次回はご本人へのかかわりに焦点を当て、Kさんの母親への支援(伝達力など)について伝えていければと思います。
※相談者が必要以上の情報やサービス利用をした場合、相談者の意図しない結果になる状況の表現。
例えば事実の確認として、次のようなことが考えられます。
(1)お母さんは食事、着替え、排泄などの日常必要な生活行為はどのようにされているのか
(2)お母さんが一人でできること、一人では難しいことは何か
(3)母の妹は実際にどの程度かかわってくれているのか など
事実を確認していくことで、Kさんのニーズや生活支援の課題がより整理されていきます。それにより、サービス利用ができるかどうかよりも、「本当に困っていること」が見えてくるのです。例えば、「Kさん自身も母の変化を不安に感じているが、どうしたらよいのかわからない」「母親は一人ではうまくできないことが増えてきていてとても心配だが、それ以上に叔母から言われることが負担になっている」など…つまりKさんのニーズが見えてくるのです。
ここで、さらに「背景要因」をとらえていく視点が必要です。
背景要因には、心身的要因や人的要因、経済的要因、環境的要因などが考えられます。Kさんの事例でも、「今後主介護者となっていくであろうKさんの心身状態はどうか」「身近に信頼でき、いざという時に力になってくれるようなマンパワーはあるか?」「サービス利用のための経済的負担はどの程度か?」などといった背景要因を整理していくことで、より、事実や訴えの元が明確になり、相談者の表面的なニーズのみならず、背景に潜むニーズについても明確化でき、よりよい生活支援につながっていくと考えます。
次回はご本人へのかかわりに焦点を当て、Kさんの母親への支援(伝達力など)について伝えていければと思います。
※相談者が必要以上の情報やサービス利用をした場合、相談者の意図しない結果になる状況の表現。