今回は、専門職にとって必要な3つの力のうちの「伝達力」について、前回からの事例を使いながら進めたいと思います。
ここでの「伝達力」とは、「一方的にならずに、自分の思いや考えを伝え、相手との関係性を築いていくことのできる力」のことをいいます。要するに、相手を説得するための力ではなく、当事者である利用者や家族が納得して、現実の課題に取り組んでいけるよう、生活支援を進めるために必要な力なのです。
ここでの「伝達力」とは、「一方的にならずに、自分の思いや考えを伝え、相手との関係性を築いていくことのできる力」のことをいいます。要するに、相手を説得するための力ではなく、当事者である利用者や家族が納得して、現実の課題に取り組んでいけるよう、生活支援を進めるために必要な力なのです。
第8回 「伝達力」で相手の力を引き出す
まずは「現状」を確認する
改めてもう一度、Kさんの事例について確認してみましょう。
復習ですが、相談を受ける時に押さえておきたいポイントは、「誰が、何を欲しているのか?」ということでした。ついつい、表面的な言葉(訴え)に応えて支援を始めてしまいがちですが、援助者自身の思いこみをできるだけ避けるように(内省)して、「訴え」→「事実・現象」→「背景要因」のステップで現状を確認していきます。
現状の確認の際には、次の2点に留意しましょう。
(1)事実を確認し、さまざまな背景要因から想像力を働かせて相手の思いを察していく
(2)思考の過程で、まず援助者の頭に思い浮かんだ考えをチェックする。さらに相手の言葉(訴え)、相手の声のトーン、話し方からも、聞き手が受ける影響(思い込みにつながりやすい)も考えていく。自分がなぜそう考えたのか、自身と向き合うことを忘れずに。
相談者Kさん(45才・会社員)は一人娘で、実母Tさん(70才)と二人で生活している。
「私の母のことなのですが、まめできれい好きな人だったのに、片づけもしなくなって、家でごろごろしてばかり。恥ずかしいことに、最近では汚れた服を何日も平気で着ているし、おっくうがってお風呂にもしばらく入らないのです。大便がついた下着がタンスに入っていることもたびたびです。私が何か言うとうるさがって、ものすごい剣幕で怒鳴ったりもするんです。約束していたことも覚えていないようです。そんな様子を母の妹が心配して、『このままだと大変だから、介護のサービスでも利用できるようにしたほうがいい』と言われて。寝たきりというわけではないのですが、何かサービスを利用できるでしょうか?」
復習ですが、相談を受ける時に押さえておきたいポイントは、「誰が、何を欲しているのか?」ということでした。ついつい、表面的な言葉(訴え)に応えて支援を始めてしまいがちですが、援助者自身の思いこみをできるだけ避けるように(内省)して、「訴え」→「事実・現象」→「背景要因」のステップで現状を確認していきます。
現状の確認の際には、次の2点に留意しましょう。
(1)事実を確認し、さまざまな背景要因から想像力を働かせて相手の思いを察していく
(2)思考の過程で、まず援助者の頭に思い浮かんだ考えをチェックする。さらに相手の言葉(訴え)、相手の声のトーン、話し方からも、聞き手が受ける影響(思い込みにつながりやすい)も考えていく。自分がなぜそう考えたのか、自身と向き合うことを忘れずに。
最初の面接が勝負!
それでは具体的にどのようにKさんと面接を進めていったらよいか、専門職に必要な「伝達力」に重点を置いてみていきましょう。
相談者の多くは、言葉にはできないけれど、今の状況を打開したいという思いをもたれています。その思いがあるからこそ相談に来られるのです。面接では、相談者が訴えることの一つひとつ、動作にも注意をはらい、「相手が発している言葉」や「なじみの言い回し」を上手に活用していきます。例えば、Kさんの「まめできれい好きな人だったのに」という言葉を活用して、「まめできれい好きなお母さんだったとのことですが、他にどのようなことをよくされていたのですか?」などと返していきます。
このような問いかけにより、Kさんは元気だった頃の母親を思い出す作業を始めます。そして、これまでの自分と母親との関係を振り返ることで、良くも悪くもさまざまな思いがよぎってきます。援助者はこの思いを察しながら働きかけていくことが重要です。つまり、専門職である援助者は、相談者が自身の思いに気づき、向き合い、その思いをふまえて、これからどうしていきたいのかを整理できるように働きかけていくのです。
この過程でKさんがていねいに回想していけるよう、寄り添いながら面接をすることで、Kさんの困惑していた気持ちは落ち着きを取り戻してくるでしょう。Kさん自身の課題解決する力(ストレングス)の活性化がはじまり、今まで悲観的になっていた気持ちから、改めてスタートラインに立てるような行動変容がみられてきます。
相談者の多くは、言葉にはできないけれど、今の状況を打開したいという思いをもたれています。その思いがあるからこそ相談に来られるのです。面接では、相談者が訴えることの一つひとつ、動作にも注意をはらい、「相手が発している言葉」や「なじみの言い回し」を上手に活用していきます。例えば、Kさんの「まめできれい好きな人だったのに」という言葉を活用して、「まめできれい好きなお母さんだったとのことですが、他にどのようなことをよくされていたのですか?」などと返していきます。
このような問いかけにより、Kさんは元気だった頃の母親を思い出す作業を始めます。そして、これまでの自分と母親との関係を振り返ることで、良くも悪くもさまざまな思いがよぎってきます。援助者はこの思いを察しながら働きかけていくことが重要です。つまり、専門職である援助者は、相談者が自身の思いに気づき、向き合い、その思いをふまえて、これからどうしていきたいのかを整理できるように働きかけていくのです。
この過程でKさんがていねいに回想していけるよう、寄り添いながら面接をすることで、Kさんの困惑していた気持ちは落ち着きを取り戻してくるでしょう。Kさん自身の課題解決する力(ストレングス)の活性化がはじまり、今まで悲観的になっていた気持ちから、改めてスタートラインに立てるような行動変容がみられてきます。
相手の力を引き出す「伝達力」
課題を解決していくのは、相談者、当事者自身です。その人たちが本来もつ課題解決する力を発揮していけることが大切なのです。
相談者の多くは、「今の自分の思いを聴いて欲しい」「私の思いをわかって欲しい」と、とりあえずの共感的な理解を求めている一面があります。しかし、専門職が相手の表面的な訴えばかりに反応して、知識や情報を提供することを急いでしまえば、相談者はその場は納得したようにみえても根本的な解決にはなっていないので、結局は不完全な思いにかられることになるでしょう。
面接のはじまりの段階で必要な伝達力は、相談者や当事者が発する言葉の背景にある思いを察しながら、相手の本来もつ課題解決力を発揮できるように働きかけていくことなのです。
次回は、相手の変化に応じた具体的対応について考えていきます。
相談者の多くは、「今の自分の思いを聴いて欲しい」「私の思いをわかって欲しい」と、とりあえずの共感的な理解を求めている一面があります。しかし、専門職が相手の表面的な訴えばかりに反応して、知識や情報を提供することを急いでしまえば、相談者はその場は納得したようにみえても根本的な解決にはなっていないので、結局は不完全な思いにかられることになるでしょう。
面接のはじまりの段階で必要な伝達力は、相談者や当事者が発する言葉の背景にある思いを察しながら、相手の本来もつ課題解決力を発揮できるように働きかけていくことなのです。
次回は、相手の変化に応じた具体的対応について考えていきます。