是枝さんは、特別養護老人ホーム「福音の家」勤務を経て、大妻女子大学で介護福祉学の教鞭をとってこられました。東京都介護福祉士会会長を長く務めるなど、介護の世界にはとても造詣が深い方です。
せっかく介護の仕事に就いたのにもかかわらず、辞めてしまう人が多いと聞きます。「もう辞めてしまおうか」などとお考えの人もいらっしゃるのではないでしょうか。
そうした人に向けて、是枝さんには、介護に関するコメントとともに、介護の仕事の素晴らしさが実感できるような、さまざまなエピソードをご紹介いただきます。
是枝さんご自身も、決してこの仕事が楽しくて楽しくて仕方がないということばかりではなかったとおっしゃいます。ご自身の経験も踏まえながら、そんな悩みに対して、一緒に考えていっていただきましょう。
せっかく介護の仕事に就いたのにもかかわらず、辞めてしまう人が多いと聞きます。「もう辞めてしまおうか」などとお考えの人もいらっしゃるのではないでしょうか。
そうした人に向けて、是枝さんには、介護に関するコメントとともに、介護の仕事の素晴らしさが実感できるような、さまざまなエピソードをご紹介いただきます。
是枝さんご自身も、決してこの仕事が楽しくて楽しくて仕方がないということばかりではなかったとおっしゃいます。ご自身の経験も踏まえながら、そんな悩みに対して、一緒に考えていっていただきましょう。
第6回 手間暇かけた先にあるもの
サービス担当責任者(サ責)を押しつけられた
福祉系の学校を出て介護福祉士になると、就職してすぐサービス担当責任者(サ責)を任されることがあります。そうでなくても、仕事に慣れてくると2〜3年でサ責の仕事が回ってきます。
でも、最近の若い人は、リーダーになるのをいやがるのですね。リーダーになると、いろいろな責任を負うことになるし、特に事務仕事が増える。
「リーダーシップをとるどころじゃないです。まだ仕事をきちんと覚えていないのに、さまざまな人間関係のゴタゴタに分け入って、仲裁したり、指示したり、面倒なことがいっぱいある」。そんな気持ちだと思います。仲間を差し置いて、自分だけリーダーになるのはおこがましいと考える人もいるかもしれません。
そんなことから、「ほかの事業所に移っちゃおう」と結論づけてしまう人もいます。
管理者にしてみれば、サ責がいないと困るから、「サ責という名前だけでいいのよ」とか何とかいってサ責を押しつけようとする。でも、そんなわけにはいかないし、そういういい方で人事を回すのはそもそもよくない。
まずサ責がなぜ必要か、サ責はどんな仕事かを理解することが大切です。実はサ責の仕事って魅力的なんです。
サ責になると、ヘルパーのシフトを組んだり、訪問介護計画を立てたり、デスクワークが増えます。でも、何のためのデスクワークかを考えてください。デスクワークの先にあるのは、利用者一人ひとりの生活です。
サ責は、ヘルパー一人ひとりの人間性を判断して、利用者の価値観や生活スタイルを考えながら、訪問介護計画を組み立てます。自分の立てた訪問介護計画通りにケアが行われているかどうか、その結果、利用者の生活はどう変わったかを評価します。サ責の訪問介護計画とその活動によって、利用者の生活の質は変わります。ヘルパーに不足するものがあるなら、ヘルパーを育てることもサ責の仕事です。
でも、最近の若い人は、リーダーになるのをいやがるのですね。リーダーになると、いろいろな責任を負うことになるし、特に事務仕事が増える。
「リーダーシップをとるどころじゃないです。まだ仕事をきちんと覚えていないのに、さまざまな人間関係のゴタゴタに分け入って、仲裁したり、指示したり、面倒なことがいっぱいある」。そんな気持ちだと思います。仲間を差し置いて、自分だけリーダーになるのはおこがましいと考える人もいるかもしれません。
そんなことから、「ほかの事業所に移っちゃおう」と結論づけてしまう人もいます。
管理者にしてみれば、サ責がいないと困るから、「サ責という名前だけでいいのよ」とか何とかいってサ責を押しつけようとする。でも、そんなわけにはいかないし、そういういい方で人事を回すのはそもそもよくない。
まずサ責がなぜ必要か、サ責はどんな仕事かを理解することが大切です。実はサ責の仕事って魅力的なんです。
サ責になると、ヘルパーのシフトを組んだり、訪問介護計画を立てたり、デスクワークが増えます。でも、何のためのデスクワークかを考えてください。デスクワークの先にあるのは、利用者一人ひとりの生活です。
サ責は、ヘルパー一人ひとりの人間性を判断して、利用者の価値観や生活スタイルを考えながら、訪問介護計画を組み立てます。自分の立てた訪問介護計画通りにケアが行われているかどうか、その結果、利用者の生活はどう変わったかを評価します。サ責の訪問介護計画とその活動によって、利用者の生活の質は変わります。ヘルパーに不足するものがあるなら、ヘルパーを育てることもサ責の仕事です。
役に立つミーティングは楽しい
サ責の仕事だけではないのですが、ミーティングやコミュニケーションが苦手な人がいます。ユニット会議などで反論できない、説明が下手、人前で話すのが嫌い、などなどで、なかなか発言できず、会議に振り回され、仕事が思うようにできないと考えてしまうようです。
サ責は、会議で決まったことを現場に持って帰って、それを仲間に指示します。自分に自信がないと、上の意向や他の人の意見をそのまま受け入れてしまい、仲間に対していやな責任を負うことになってしまいます。
ミーティングが嫌いな人は、ミーティングで自分や仲間に対して(さらに利用者に対して)いい結果を導くことが難しくなります。でも、そういう「いやなミーティング」は、ミーティングを運営する人もうまくないのです。いやなミーティングは、なぜいやに思うのかを考えながら参加しましょう。ここでも「アセスメント能力」が必要になります。
たとえば、「強引に自分の意見を押し通そうとする人がいる」「人の話を聞かない人がいる」「反対にみんながいろいろなことをいって、なかなかまとまらない」など、理由はさまざまです。
ミーティングをまとめるには、よいまとめ役が必要です。
まとめ役は、小さな意見を見逃さないで、いろいろな人の話をきちんと聞き(引き出し)、みんなでその意見を咀嚼し合い、何よりみんなで「いい結論を出そう」という雰囲気をつくり出すことが大切です。そうなると、ミーティングはとてもいい時間になります。あまりダラダラ長くなってはいけませんが、「もっとやりたい」という気持ちになります。
サ責は、会議で決まったことを現場に持って帰って、それを仲間に指示します。自分に自信がないと、上の意向や他の人の意見をそのまま受け入れてしまい、仲間に対していやな責任を負うことになってしまいます。
ミーティングが嫌いな人は、ミーティングで自分や仲間に対して(さらに利用者に対して)いい結果を導くことが難しくなります。でも、そういう「いやなミーティング」は、ミーティングを運営する人もうまくないのです。いやなミーティングは、なぜいやに思うのかを考えながら参加しましょう。ここでも「アセスメント能力」が必要になります。
たとえば、「強引に自分の意見を押し通そうとする人がいる」「人の話を聞かない人がいる」「反対にみんながいろいろなことをいって、なかなかまとまらない」など、理由はさまざまです。
ミーティングをまとめるには、よいまとめ役が必要です。
まとめ役は、小さな意見を見逃さないで、いろいろな人の話をきちんと聞き(引き出し)、みんなでその意見を咀嚼し合い、何よりみんなで「いい結論を出そう」という雰囲気をつくり出すことが大切です。そうなると、ミーティングはとてもいい時間になります。あまりダラダラ長くなってはいけませんが、「もっとやりたい」という気持ちになります。
ミーティングはケアの心構えで
ミーティングがつまらないのは、まず「生産的でない」ことです。
つまり、せっかくみんなが時間の都合をつけて集まっても、「参加してよかった。いろいろな収穫があった」という気持ちになれないことです。時間だけ決めて型通りに終わらせるミーティングは、ミーティングではなく、説明会(ブリーフィング)です。
一人だけの発言が押し通るのは、その人がたとえ目上の人でも、ミーティングを非生産的にします。いろいろ話をしているうちに、突然、「そういえばこんなことがあったよ」という思いつきの発言がとても大切なことがあります。それで、会議の流れが一気に変わることがあります。
ミーティングを運営する人にとって、ミーティングはケアそのものなんです。一人ひとりの心を開いて、自信をつけてもらい、発言してもらい、どんな対策をとったらいいかを考えることですから、ケアをするときの心構えと同じではありませんか。
だから、ミーティングをうまく運営できないということは、ケアもきちんとできないことにつながってしまいます。
「ダメなミーティング」に参加するときは、それはそれできちんと評価して、自分はこんなことはしない、という教訓に生かしましょう。そして、ダメミーティングの流れを変える発言を思い切ってしましょう。一度や二度の失敗は構いません。それで地球は滅んだりしません。それより、自分の心を頼もしく養うことができます。ミーティングに上手に参加することができれば、利用者や家族ともいい関係をつくることができるし、いいケアをすることができます。何より勉強になります。
いいケアをするには、いいミーティングに参加し、そしていいミーティングを自分でつくることです。
つまり、せっかくみんなが時間の都合をつけて集まっても、「参加してよかった。いろいろな収穫があった」という気持ちになれないことです。時間だけ決めて型通りに終わらせるミーティングは、ミーティングではなく、説明会(ブリーフィング)です。
一人だけの発言が押し通るのは、その人がたとえ目上の人でも、ミーティングを非生産的にします。いろいろ話をしているうちに、突然、「そういえばこんなことがあったよ」という思いつきの発言がとても大切なことがあります。それで、会議の流れが一気に変わることがあります。
ミーティングを運営する人にとって、ミーティングはケアそのものなんです。一人ひとりの心を開いて、自信をつけてもらい、発言してもらい、どんな対策をとったらいいかを考えることですから、ケアをするときの心構えと同じではありませんか。
だから、ミーティングをうまく運営できないということは、ケアもきちんとできないことにつながってしまいます。
「ダメなミーティング」に参加するときは、それはそれできちんと評価して、自分はこんなことはしない、という教訓に生かしましょう。そして、ダメミーティングの流れを変える発言を思い切ってしましょう。一度や二度の失敗は構いません。それで地球は滅んだりしません。それより、自分の心を頼もしく養うことができます。ミーティングに上手に参加することができれば、利用者や家族ともいい関係をつくることができるし、いいケアをすることができます。何より勉強になります。
いいケアをするには、いいミーティングに参加し、そしていいミーティングを自分でつくることです。