自分だけに暴言・暴力をふるう利用者
私は今、グループホームに勤めています。入居して約2か月の男性利用者がいますが、私に対する暴力・暴言がひどく、困っています…。
私がどんなにていねいに接しても、いきなり手をあげられたり、目が合うだけで舌打ちして「生意気だ!」と言われます。相手が利用者なので、言い返すこともできません。また、ずっと私のほうを見ているため、監視されている気分になり、仕事に行くことさえ嫌になってきました。嫌われているのかなと思い、私が距離を置こうとすると、「大変だね」と言って私のほうに来ます。
最近では、毎日のように暴言・暴力が続くため、その利用者と話すことも、顔を見ることさえもつらくなってきました。暴言だけならまだしも、暴力となると、その利用者に対する恐怖心が大きくなっていく一方で、困っています。他の職員に対してはそのような行動はなく、私にだけ暴力・暴言があるので、精神的にまいってきました。認知症の人はやはり、自分の中にターゲットを作るものなんでしょうか?
暴力・暴言はエスカレートしてきているように感じますが、我慢していればいつかは他の職員と同様に接してくれるのでしょうか?
スタッフ間で共有し、自分の言動も振り返ってみよう
毎日のグループホーム勤務、お疲れさまです。問い合わせを拝見し、日々試行錯誤しながら入居者をていねいに考え、かかわっている様子がうかがえました。
そのような日々の勤務の中で、入居して2か月程経過した男性利用者(以後、仮名:太郎さん)の言動に対して、今後どのように考え、対応していったらよいかについてお応えします。
介護スタッフの立場としては、すぐに状況の改善を図りたいと思いますが、その気持ちがあせりとなって、状況を悪化させてしまうことになります。そのため、かかわる専門職も一人で考えず、上司や同僚に相談していくことが重要です。一人で考えていると、「思い込み」が強くなり、考え方や解決策などの発想も狭くなりがちです。
相談に『認知症の人はやはり、自分の中にターゲットを作るものなんでしょうか?』とありますが、認知症だからそうだということはないと思います。『私にだけ暴言・暴力がある』という記述もありました。私はその現場を見たわけではありませんが、本当に一人だけなのでしょうか。そのようにしか考えられなくなっているとしたら、少し注意が必要だと思われます。「思い込み」が強くなりすぎ、自分自身を振り返ったり、さまざまな視点で物事をとらえることができにくくなっていると考えられます。
グループホームに勤務する介護職については、次のような例があります。
入居したばかりの方との関係性を良好にしていきたいと考え、とてもていねいに「〜してください」という言い方で接していました。しかし、どうしても良好な関係性がとれずに悩んでいました。
そこで、改めて同僚や上司に相談して意見を求めたところ、この介護職の言動に対する印象はとても指示的にみえると指摘を受けたそうです。「○○してください」という言い方は、一見ていねいなようですが、実は命令形の言葉です。さらに声のトーンや身振り手振り、表情から、威圧的な雰囲気も感じられたそうです。このことに気づかず、必死に取り組んでいた介護職は、良好な関係性が図れず、気持ちに余裕もなくなり、いつも張り詰めた思いでかかわっていたのです。そこで、改めて周囲の同僚や上司のサポートを得ながら、言葉づかいを変えてかかわったところ、良好な関係が図れたそうです。
このようなことに気づくためには、周囲の意見がとても大切です。「認知症だから」と思い込んだり決めつけることなく、なぜそうするのか、相手の言動をさまざまな視点で考え理解していくことが大切です。そのためには、介護職自身が心身ともに余裕がなく疲労していては、「思い込み」になりやすく、周囲の意見すら受け止めがたくなってしまいます。
一人で無理をせず、仲間たちと今の思いを分かち合い、自己覚知をしながら、これからも充実したサービスを続けてください。
(回答者:NPO法人風の詩 副理事長 永島徹)
そのような日々の勤務の中で、入居して2か月程経過した男性利用者(以後、仮名:太郎さん)の言動に対して、今後どのように考え、対応していったらよいかについてお応えします。
介護スタッフの立場としては、すぐに状況の改善を図りたいと思いますが、その気持ちがあせりとなって、状況を悪化させてしまうことになります。そのため、かかわる専門職も一人で考えず、上司や同僚に相談していくことが重要です。一人で考えていると、「思い込み」が強くなり、考え方や解決策などの発想も狭くなりがちです。
相談に『認知症の人はやはり、自分の中にターゲットを作るものなんでしょうか?』とありますが、認知症だからそうだということはないと思います。『私にだけ暴言・暴力がある』という記述もありました。私はその現場を見たわけではありませんが、本当に一人だけなのでしょうか。そのようにしか考えられなくなっているとしたら、少し注意が必要だと思われます。「思い込み」が強くなりすぎ、自分自身を振り返ったり、さまざまな視点で物事をとらえることができにくくなっていると考えられます。
グループホームに勤務する介護職については、次のような例があります。
入居したばかりの方との関係性を良好にしていきたいと考え、とてもていねいに「〜してください」という言い方で接していました。しかし、どうしても良好な関係性がとれずに悩んでいました。
そこで、改めて同僚や上司に相談して意見を求めたところ、この介護職の言動に対する印象はとても指示的にみえると指摘を受けたそうです。「○○してください」という言い方は、一見ていねいなようですが、実は命令形の言葉です。さらに声のトーンや身振り手振り、表情から、威圧的な雰囲気も感じられたそうです。このことに気づかず、必死に取り組んでいた介護職は、良好な関係性が図れず、気持ちに余裕もなくなり、いつも張り詰めた思いでかかわっていたのです。そこで、改めて周囲の同僚や上司のサポートを得ながら、言葉づかいを変えてかかわったところ、良好な関係が図れたそうです。
このようなことに気づくためには、周囲の意見がとても大切です。「認知症だから」と思い込んだり決めつけることなく、なぜそうするのか、相手の言動をさまざまな視点で考え理解していくことが大切です。そのためには、介護職自身が心身ともに余裕がなく疲労していては、「思い込み」になりやすく、周囲の意見すら受け止めがたくなってしまいます。
一人で無理をせず、仲間たちと今の思いを分かち合い、自己覚知をしながら、これからも充実したサービスを続けてください。
(回答者:NPO法人風の詩 副理事長 永島徹)