第8回 医師との関係
「家族に迷惑をかけずに家で死にたい」
末期の胃がんのSさんは、初診の時に言いました。
「数年前に夫ががんにより自宅で急死した際、救急車を呼んだことで警察が来て、私たち家族は殺人犯のような取り調べを受けました。ですから私は、自分ががんになったら絶対に在宅の主治医をもとうと決めていたのです」
それから数か月後、Sさんは家族全員が見守る中、自宅で息を引き取りました。最後の言葉は、途切れ途切れの「あ、り、が、と、う」でした。
末期の胃がんのSさんは、初診の時に言いました。
「数年前に夫ががんにより自宅で急死した際、救急車を呼んだことで警察が来て、私たち家族は殺人犯のような取り調べを受けました。ですから私は、自分ががんになったら絶対に在宅の主治医をもとうと決めていたのです」
それから数か月後、Sさんは家族全員が見守る中、自宅で息を引き取りました。最後の言葉は、途切れ途切れの「あ、り、が、と、う」でした。
担当の在宅医師をもつメリット
自宅で急に具合が悪くなれば、たとえ担当の在宅医がいても、家族が慌てて救急車を呼ぶことがあります。たとえば、認知症で寝たきりのTさんを介護していた奥さんは「家で看取ってあげたい」と口癖のように言っていました。医療は24時間いつでも駆けつけられる体制をとっていましたが、目の前で呼吸が止まりそうになった時、パニックになった奥さんは、慌てて救急車を呼びました。運ばれた病院では「異状死」という不審死扱いになり、奥さんは警察に一日拘束されたそうです。
駆けつけた救急隊が自宅で死亡を確認した場合、かかりつけの医師が往診で対応しない限り、警察が介入する「検視」という手続きをとることになります。自宅がまるで殺人現場のようになり、本人も家族も望まない形の最期になってしまうことがあるのです。
また、死の間際に救急病院に搬送され、医師が「自分の病院で診察を受けていない患者の死」として、警察に検案を要請することも少なくありません。ですから、穏やかな在宅死を望むのであれば、往診して死亡確認してくれる医師が必要です。
普段からその医師の診察を受けていれば、たとえ死亡から多少時間が経過しても、生前の診察により推察された死因のときは、「死体」を対象とした「診察」という概念に含めます。すなわち、死後の「診察」をしたかかりつけの医師は、病死あるいは自然死として死亡診断書を作成することができるのです。
駆けつけた救急隊が自宅で死亡を確認した場合、かかりつけの医師が往診で対応しない限り、警察が介入する「検視」という手続きをとることになります。自宅がまるで殺人現場のようになり、本人も家族も望まない形の最期になってしまうことがあるのです。
また、死の間際に救急病院に搬送され、医師が「自分の病院で診察を受けていない患者の死」として、警察に検案を要請することも少なくありません。ですから、穏やかな在宅死を望むのであれば、往診して死亡確認してくれる医師が必要です。
普段からその医師の診察を受けていれば、たとえ死亡から多少時間が経過しても、生前の診察により推察された死因のときは、「死体」を対象とした「診察」という概念に含めます。すなわち、死後の「診察」をしたかかりつけの医師は、病死あるいは自然死として死亡診断書を作成することができるのです。
在宅医師の見つけ方
それでは、在宅医はどうすればみつけられるでしょうか。すでにかかりつけ医がいる場合は、まずはその医師に、自宅に往診してもらえるか相談しましょう。多くの地域では、市町村役場や在宅支援センター、地域包括支援センター、医師会、保健所などで在宅医療の相談を受け付けています。また、訪問看護師やケアマネジャーなどに教えてもらったり、インターネットや書籍で探すことも可能です。
脳卒中などの疾患で緊急入院し、退院後に在宅療養を始めたり、病気の進行で通院が困難となり訪問診療を希望する場合は、病院内にある医療連携室や相談室の医療ソーシャルワーカーに相談するのもよいでしょう。
このとき忘れてはならないのは、各医療機関の診療所スタイルの確認です。在宅医療の中心的役割を果たす在宅支援診療所は現在、全国に1万2000か所以上ありますが、そのうちのおよそ50%は、1年間で在宅の看取りに一度も立ち合わなかったというデータが出ています。
自分がどのような医療や死を望んでいるのか、医師に対して普段から意思表示をしっかりしておきましょう。そして周囲の人は、急変時にも慌てずに在宅医や訪問看護師に連絡し、指示を仰ぐことが必要です。
「死」という未知なる人生最大の局面に向かうとき、皆さんの心の深い部分を理解し、ともにあろうとする医師の姿勢は、勇気と安心をもたらします。皆さんにとって何より大切なことは、自分の心を偽りなく表現し、医師との間に信頼関係を築いていくことです。
次回は、5月17日(金)更新予定です。
脳卒中などの疾患で緊急入院し、退院後に在宅療養を始めたり、病気の進行で通院が困難となり訪問診療を希望する場合は、病院内にある医療連携室や相談室の医療ソーシャルワーカーに相談するのもよいでしょう。
このとき忘れてはならないのは、各医療機関の診療所スタイルの確認です。在宅医療の中心的役割を果たす在宅支援診療所は現在、全国に1万2000か所以上ありますが、そのうちのおよそ50%は、1年間で在宅の看取りに一度も立ち合わなかったというデータが出ています。
自分がどのような医療や死を望んでいるのか、医師に対して普段から意思表示をしっかりしておきましょう。そして周囲の人は、急変時にも慌てずに在宅医や訪問看護師に連絡し、指示を仰ぐことが必要です。
「死」という未知なる人生最大の局面に向かうとき、皆さんの心の深い部分を理解し、ともにあろうとする医師の姿勢は、勇気と安心をもたらします。皆さんにとって何より大切なことは、自分の心を偽りなく表現し、医師との間に信頼関係を築いていくことです。
次回は、5月17日(金)更新予定です。