第3回 在宅医療の課題 その1
在宅医療を阻む3つの壁
在宅医療=大変なお仕事?
私が「在宅医療が専門です」と言うと、よく「大変なお仕事ですね」と言われます。「この仕事はいつまで続けられるか分かりません」と言う在宅支援診療所の先生も少なくありません。
連載第1回目に示したグラフにあるように、1970年代に病院死が在宅死を上まわった頃から、日本の医療の将来を危惧する人々からは「在宅医療を充実させていくべきだ」という声が少なからずありました。しかしその後も在宅死は減少を続け、病院死は増加の一途をたどりました。未だ、社会が必要とするだけの在宅医療が広まっていく気配は一向にありません。
皆が住み慣れた地域で人々が暮らし続けるために在宅医療が担う役割は大きいものがあります。できるだけ多くの地域のかかりつけ医に在宅医療に携わってほしいという現場からの要望は日々高まりつつあります。
それなのに、在宅医療を実践する医師は思うように増えていません。いったい在宅医療は何が大変で、どうして実践する医師は増えないのでしょうか。
連載第1回目に示したグラフにあるように、1970年代に病院死が在宅死を上まわった頃から、日本の医療の将来を危惧する人々からは「在宅医療を充実させていくべきだ」という声が少なからずありました。しかしその後も在宅死は減少を続け、病院死は増加の一途をたどりました。未だ、社会が必要とするだけの在宅医療が広まっていく気配は一向にありません。
皆が住み慣れた地域で人々が暮らし続けるために在宅医療が担う役割は大きいものがあります。できるだけ多くの地域のかかりつけ医に在宅医療に携わってほしいという現場からの要望は日々高まりつつあります。
それなのに、在宅医療を実践する医師は思うように増えていません。いったい在宅医療は何が大変で、どうして実践する医師は増えないのでしょうか。
24時間365日という壁
在宅医療を行ううえで大きく立ちはだかるのは、24時間365日という壁です。在宅療養支援診療所の要件「緊急時の連絡体制及び24時間往診できる体制等を確保していること」というのは、患者側の安心であり希望です。
では、その希望をかなえようとする時の医師の負担を想像してみてください。在宅医療を実践する医師の多くが、外来診療と在宅医療をかけ持ちで行っています。ですから、外来中の緊急往診の依頼に応じれば、来ている患者をほったらかしにすることになりかねません。また、医師のほとんどが常勤医一人の診療所の院長です。夜中や明け方にいつ起こされるか分からない、休日も呼び出されます。いつでも往診に駆けつけなければならないのであれば、お酒も飲めないし旅行にも行けないかもしれないのです。
このように患者側の希望に沿うべく、24時間365日いつでも対応できる体制を一人で行うというのは、医師にとっては精神的にも肉体的にも大きな負担であることは間違いありません。
では、その希望をかなえようとする時の医師の負担を想像してみてください。在宅医療を実践する医師の多くが、外来診療と在宅医療をかけ持ちで行っています。ですから、外来中の緊急往診の依頼に応じれば、来ている患者をほったらかしにすることになりかねません。また、医師のほとんどが常勤医一人の診療所の院長です。夜中や明け方にいつ起こされるか分からない、休日も呼び出されます。いつでも往診に駆けつけなければならないのであれば、お酒も飲めないし旅行にも行けないかもしれないのです。
このように患者側の希望に沿うべく、24時間365日いつでも対応できる体制を一人で行うというのは、医師にとっては精神的にも肉体的にも大きな負担であることは間違いありません。
チーム医療の中心として
2つ目は医療の内容における特徴です。在宅医療では、多様な疾患や病状に対応できる幅広い知識や技術が要求されます。また、家族関係や経済状況も視野に入れた生活支援や精神面のケアも役割の一つです。これらが、細分化された医学教育を受け、より専門的な医療の実践を行ってきた医師にとっては、在宅医療への参入をためらう理由になり得るのです。
3つ目は、多職種連携という地域における役割です。在宅医療は地域におけるチーム医療ですから、在宅を担う地域のかかりつけ医は、ケアマネジャーや訪問看護師、薬剤師、理学療法士、介護職員、病院職員などさまざまの職種と連携する必要性があります。一国一城の主として診療所の経営を行ってきた医師にとって、介護保険という未知の世界で、チームの一員として他のメンバーと同じ立場で動くのは、実は容易なことではありません。
国は在宅医療を実践する医療機関に高い報酬を与えることで、医師の数を増やそうとします。しかし、その場しのぎではない本物の在宅医療を地域に根づかせるためには、それを担う医師にとってどこが負担で、壁やハードルは何かをきちんと把握し、問題点を解決するためのシステムづくりを進めていくことが最も大切なのです。
次回は、3月2日(金)更新予定です。
3つ目は、多職種連携という地域における役割です。在宅医療は地域におけるチーム医療ですから、在宅を担う地域のかかりつけ医は、ケアマネジャーや訪問看護師、薬剤師、理学療法士、介護職員、病院職員などさまざまの職種と連携する必要性があります。一国一城の主として診療所の経営を行ってきた医師にとって、介護保険という未知の世界で、チームの一員として他のメンバーと同じ立場で動くのは、実は容易なことではありません。
国は在宅医療を実践する医療機関に高い報酬を与えることで、医師の数を増やそうとします。しかし、その場しのぎではない本物の在宅医療を地域に根づかせるためには、それを担う医師にとってどこが負担で、壁やハードルは何かをきちんと把握し、問題点を解決するためのシステムづくりを進めていくことが最も大切なのです。
次回は、3月2日(金)更新予定です。