第7回 家族との関係 家族に思いを伝えよう
「家で死なれたら気味が悪い」
肺がん末期のSさんの在宅療養は、退院時の奥さんのこの言葉からスタートしました。
病気の進行は速く、様子が変わるたびに奥さんは不安気に「もう看れません」と訴えましたが、病院はそのつど満床でした。「自分が頑張るしかない」と気持ちを切り替えた奥さんは、少しずつ介護のコツをつかみ、やがて少々のことではうろたえなくなりました。
自宅での療養を開始して3か月後、Sさんは安らかな最期を自宅で迎えました。「夫は何も言いませんでしたけど、本当は家にずっといたかったんです。不安ばかりでしたが、自宅で最期を迎えさせてあげることができて本当によかったです」
その表情は、大事な仕事をやり遂げたという満足感に満ちていました。
肺がん末期のSさんの在宅療養は、退院時の奥さんのこの言葉からスタートしました。
病気の進行は速く、様子が変わるたびに奥さんは不安気に「もう看れません」と訴えましたが、病院はそのつど満床でした。「自分が頑張るしかない」と気持ちを切り替えた奥さんは、少しずつ介護のコツをつかみ、やがて少々のことではうろたえなくなりました。
自宅での療養を開始して3か月後、Sさんは安らかな最期を自宅で迎えました。「夫は何も言いませんでしたけど、本当は家にずっといたかったんです。不安ばかりでしたが、自宅で最期を迎えさせてあげることができて本当によかったです」
その表情は、大事な仕事をやり遂げたという満足感に満ちていました。
自宅で死ねない理由
「家で死にたい」と考えているあなたは、その意思を家族に伝えてありますか? 自分の希望を身近な人にしっかり伝えておくことが、「家で死ぬ」ことのスタートです。そして、ゴールまで常にあなたの側を離れず、一緒に走り、一緒に立ち止まり、時には温もりを、時には励ましをくれていざとなったらあなたをおぶってくれる存在は、家族かそれに近い人ではないでしょうか。
その家族の負担を思った時、「家で死にたい」と簡単に伝えられないのが人情です。調査によると、日本人が自宅で死を迎えることができないと考えている最も大きな理由は「家族に迷惑をかけるから」です。
その家族の負担を思った時、「家で死にたい」と簡単に伝えられないのが人情です。調査によると、日本人が自宅で死を迎えることができないと考えている最も大きな理由は「家族に迷惑をかけるから」です。
看取るのは家族
在宅では、死の過程で現われるさまざまな症状に対して、どのように対処すればよいのかという大切な判断を家族が行うことになります。家族は、間もなく訪れる死という別れのつらさや悲しさを全身で感じながら、身体的、精神的症状の変化に正面から向き合わなければなりません。
また、介護による疲労も蓄積します。そのときに支えとなるのは、深い信頼関係と強い絆で結ばれた「家で死なせてあげたい」という心からの思いです。
どれだけの医療や介護の知識・経験をもってしても、家族の愛情に勝るものはありません。在宅の場合、医師が看取るのではなく、本当の意味で看取るのは家族です。だからこそ、死に向かう旅路においてどのように生きたいのか、最期の瞬間をどこでどのように迎えたいのか、あなたの本音を普段から家族にしっかり伝えておきましょう。
また、介護による疲労も蓄積します。そのときに支えとなるのは、深い信頼関係と強い絆で結ばれた「家で死なせてあげたい」という心からの思いです。
どれだけの医療や介護の知識・経験をもってしても、家族の愛情に勝るものはありません。在宅の場合、医師が看取るのではなく、本当の意味で看取るのは家族です。だからこそ、死に向かう旅路においてどのように生きたいのか、最期の瞬間をどこでどのように迎えたいのか、あなたの本音を普段から家族にしっかり伝えておきましょう。
医療職との関係づくり
一方、よく家族から「看取りの過程で何が起こるかわからない。そのときにきちんと対応できるか不安」という相談があります。現代の日本人の大多数は、家族を自宅で看取った経験がないため、死に向かう時に人はどのように弱るのか、起こり得る症状はどのようなもので、どう対処すればよいのかなどはほとんど知りません。いざというとき慌てないために、「死の過程」について事前に調べたり聞いておく必要があります。
人が死ぬのは自然の摂理であり、死の瞬間が近づけば近づくほど医療が関与することは減っていきます。しかし、家族が判断や対応に迷う場面で頼りになるのは、普段から状況をよく把握している医師や看護師です。いつでも連絡ができて、必要な時にはすぐに来てもらえる関係を作っておくことが、介護する家族の安心につながります。
あるアンケートによると、自宅で看取った家族のほとんどが、「満足を感じている」「在宅を選んだことに後悔はない」と答えています。「家で死ぬ」こと自体が、看取った人にとって心のケアとなり、その後の人生における大きな支えになります。「死」は本人の最後の成長であると同時に、周囲を成長させる最後の仕事なのです。
次回は、5月7日(月)更新予定です。
人が死ぬのは自然の摂理であり、死の瞬間が近づけば近づくほど医療が関与することは減っていきます。しかし、家族が判断や対応に迷う場面で頼りになるのは、普段から状況をよく把握している医師や看護師です。いつでも連絡ができて、必要な時にはすぐに来てもらえる関係を作っておくことが、介護する家族の安心につながります。
あるアンケートによると、自宅で看取った家族のほとんどが、「満足を感じている」「在宅を選んだことに後悔はない」と答えています。「家で死ぬ」こと自体が、看取った人にとって心のケアとなり、その後の人生における大きな支えになります。「死」は本人の最後の成長であると同時に、周囲を成長させる最後の仕事なのです。
次回は、5月7日(月)更新予定です。