第91回 病気からみる長寿の秘訣
昭和25年までは結核が日本人の死因の第一位でした。私も大学2年に進級する春に結核を病み、1年間の休学を余儀なくされました。そしてそのうち6カ月は自分でトイレにいくこともできない絶対安静の日々を送りました。1年遅れて大学に復学しましたが、しばらくは病後の体のだるさに悩まされました。
いったん治癒した結核は、私が39歳のときに再発しました。アメリカの医科大学への留学が決まり、あと3週間でアメリカに出発するときでした。聖路加国際病院で喀痰検査を受けたところ、結核菌が見つかったのです。
すでに送別会も終わっているのでもう仕方がありません。私は家内にも話さずに、こっそりストレプトマイシンを注射したり、パスを飲んだりして、自分で治療に努めました。そして渡米する船に乗っている間もずっとそれを続けていたのですが、どうも依然として結核菌はなくなってはいないようでした。
サンフランシスコに着いたときに、検疫官から、「どうもあやしいから8週間隔離します」と言われ、これは大変だと思いました。私は必死の思いで「私は医者ですから」と頼んで、ようやく上陸が許されました。それは私の一生の中でもっとも嬉しい出来事の一つでした。
昭和56年からは日本人の死因の第一位は「がん」が占めるようになりました。統計上は、日本人の2人に1人はがんになり、3人に1人はがんで亡くなることになります。たとえば喫煙のように、生活習慣によってがんになることがありますが、私の家内のように、タバコを吸ったことがなく、また側にいる私もタバコは吸わないのに肺がんになったのは、家内が肺がんの遺伝子を持っていたからです。
幸い私の家内は早期発見してがんを摘出することができたために肺がんで死ぬことを免れました。ところが手術をしてから20年後、NHKのテレビドキュメンタリーでも放映されましたが、左の肺ががんのために摘出されているところに右肺に気胸が起こりました。呼吸困難のために病院に緊急入院しましたが、幸い今は状態が落ち着いて、いい方向に向かっています。
身近にいる人を思い浮かべて見て下さい。いかにがんを体験した人が多いかに気づくでしょう。
しかし、現在は早期発見が進んだことと、治療の方法が進歩したこともあって、がんは必ずしも死をもたらす病気ではなくなってきました。もし、あなたががんにかかりましたら、どうすればがんをもちながら長く生きていくかを考えてください。がんとともに生きることです。がんとともに平均寿命まで、またはそれを超えて生きることができるようになりました。そのためには、症状がなくてもしっかり健診を受けてほしいと思います。
ところで、やっかいながんもあります。その一つはすい臓がんです。アメリカのアップル社のCEOでコンピューターの天才といわれたスティーブ・ジョブズが56歳という若さで亡くなりましたが、死因はすい臓がんでした。
それは、すい臓がんはなかなか健診では見つけにくいために、発見できたときには既に手遅れということが多いからです。また、すい臓がんはすぐに症状が現れないことが少なくありません。腰や背中が痛いとか、食欲がなく体がだるいので、検査を受けて胃がんの心配はないといわれて安心したら、それはすい臓がんが原因だったというようなことがあります。体重が減って、なんとなく元気が出ない、腰や背中が痛いというときには、医師に「すい臓がんではないでしょうか」と聞いてみるのもよいかもしれません。
次に女性に最も多いのは乳がんです。最近は早期発見による早期乳がん手術が増えてきました。そのため長期生存が可能になりましたが、20年経っても再発することがありますから、長期の経過観察が必要です。
がんの次に多い原因疾患は心臓病です。約18.6%の人が心臓病で亡くなります。現在、アメリカ人の死因の第一位は心臓病です。医師でも心筋梗塞で死ぬことが多いのが特徴です。日本人も以前は心臓病になるのは外交官や商社マンなど欧米に住んでいる人たちや、大企業の役職者など毎晩のようにパーティや接待で欧米風の食事をとっている人たちでした。これからも心臓病には脂肪分や糖分の多い食事が原因の一つであることがわかります。
日本人の死因の三番目は肺炎、そして四番目が脳卒中(脳血管疾患)です。12.9%の人が脳卒中で亡くなっています。脳卒中による死亡者は以前に比べると減ってきているのですが、脳の機能が障害されるために、四肢にマヒが生じることが多いのです。
これらのがん、心臓病、脳卒中など含んだ全体の死因の3分の2は、メタボリックシンドロームと関係があるといわれています。前回では、ローカロリーの食事が長寿の遺伝子に影響を与えるという説を紹介しましたが、この点からも長寿のためには年をとっても体重を上手にコントロールする食習慣を身につけることが大切だということを強調しておきたいと思います。
いったん治癒した結核は、私が39歳のときに再発しました。アメリカの医科大学への留学が決まり、あと3週間でアメリカに出発するときでした。聖路加国際病院で喀痰検査を受けたところ、結核菌が見つかったのです。
すでに送別会も終わっているのでもう仕方がありません。私は家内にも話さずに、こっそりストレプトマイシンを注射したり、パスを飲んだりして、自分で治療に努めました。そして渡米する船に乗っている間もずっとそれを続けていたのですが、どうも依然として結核菌はなくなってはいないようでした。
サンフランシスコに着いたときに、検疫官から、「どうもあやしいから8週間隔離します」と言われ、これは大変だと思いました。私は必死の思いで「私は医者ですから」と頼んで、ようやく上陸が許されました。それは私の一生の中でもっとも嬉しい出来事の一つでした。
昭和56年からは日本人の死因の第一位は「がん」が占めるようになりました。統計上は、日本人の2人に1人はがんになり、3人に1人はがんで亡くなることになります。たとえば喫煙のように、生活習慣によってがんになることがありますが、私の家内のように、タバコを吸ったことがなく、また側にいる私もタバコは吸わないのに肺がんになったのは、家内が肺がんの遺伝子を持っていたからです。
幸い私の家内は早期発見してがんを摘出することができたために肺がんで死ぬことを免れました。ところが手術をしてから20年後、NHKのテレビドキュメンタリーでも放映されましたが、左の肺ががんのために摘出されているところに右肺に気胸が起こりました。呼吸困難のために病院に緊急入院しましたが、幸い今は状態が落ち着いて、いい方向に向かっています。
身近にいる人を思い浮かべて見て下さい。いかにがんを体験した人が多いかに気づくでしょう。
しかし、現在は早期発見が進んだことと、治療の方法が進歩したこともあって、がんは必ずしも死をもたらす病気ではなくなってきました。もし、あなたががんにかかりましたら、どうすればがんをもちながら長く生きていくかを考えてください。がんとともに生きることです。がんとともに平均寿命まで、またはそれを超えて生きることができるようになりました。そのためには、症状がなくてもしっかり健診を受けてほしいと思います。
ところで、やっかいながんもあります。その一つはすい臓がんです。アメリカのアップル社のCEOでコンピューターの天才といわれたスティーブ・ジョブズが56歳という若さで亡くなりましたが、死因はすい臓がんでした。
それは、すい臓がんはなかなか健診では見つけにくいために、発見できたときには既に手遅れということが多いからです。また、すい臓がんはすぐに症状が現れないことが少なくありません。腰や背中が痛いとか、食欲がなく体がだるいので、検査を受けて胃がんの心配はないといわれて安心したら、それはすい臓がんが原因だったというようなことがあります。体重が減って、なんとなく元気が出ない、腰や背中が痛いというときには、医師に「すい臓がんではないでしょうか」と聞いてみるのもよいかもしれません。
次に女性に最も多いのは乳がんです。最近は早期発見による早期乳がん手術が増えてきました。そのため長期生存が可能になりましたが、20年経っても再発することがありますから、長期の経過観察が必要です。
がんの次に多い原因疾患は心臓病です。約18.6%の人が心臓病で亡くなります。現在、アメリカ人の死因の第一位は心臓病です。医師でも心筋梗塞で死ぬことが多いのが特徴です。日本人も以前は心臓病になるのは外交官や商社マンなど欧米に住んでいる人たちや、大企業の役職者など毎晩のようにパーティや接待で欧米風の食事をとっている人たちでした。これからも心臓病には脂肪分や糖分の多い食事が原因の一つであることがわかります。
日本人の死因の三番目は肺炎、そして四番目が脳卒中(脳血管疾患)です。12.9%の人が脳卒中で亡くなっています。脳卒中による死亡者は以前に比べると減ってきているのですが、脳の機能が障害されるために、四肢にマヒが生じることが多いのです。
これらのがん、心臓病、脳卒中など含んだ全体の死因の3分の2は、メタボリックシンドロームと関係があるといわれています。前回では、ローカロリーの食事が長寿の遺伝子に影響を与えるという説を紹介しましたが、この点からも長寿のためには年をとっても体重を上手にコントロールする食習慣を身につけることが大切だということを強調しておきたいと思います。
(2012年4月18日)
■セミナーのお知らせ
【テーマ】 | 基礎から学ぶフィジカルアセスメント2012――(3)基礎から学ぶ循環器 |
【講師】 | 高橋敦彦先生(日本大学医学部総合健診センター医長) |
【対象】 | 看護師、保健師、看護教員、介護支援専門員など |
【日程】 | 2012年7月20日(土)10:00〜16:00 |
【定員】 | 50名 |
【会場】 | 健康教育サービスセンター(地下鉄・永田町駅下車徒歩4分) |
【参加費】 | 7,000円(LPC会員5,000円) |
【関連URL】 | http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm |
【主催・問い合わせ先(平日9:00〜17:30)】 (財)ライフ・プランニング・センター TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5砂防会館5階 HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp |
■セミナーのお知らせ
【テーマ】 | 基礎から学ぶフィジカルアセスメント2012――(2)呼吸器総論/胸部の打診・聴診 |
【講師】 | 馬島徹先生((財)化学療法研究会化研病院呼吸器センター長/国際医療福祉大学教授) |
【対象】 | 看護師、保健師、看護教員、介護支援専門員など |
【日程】 | 6月30日(土)10:00〜16:00 |
【会場】 | 健康教育サービスセンター(地下鉄・永田町駅下車徒歩4分) |
【参加費】 | 7,000円(LPC会員5,000円) |
【関連URL】 | http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm |
【主催・問い合わせ先(平日9:00〜17:30)】 (財)ライフ・プランニング・センター TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5砂防会館5階 HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp |
■セミナーのお知らせ
【テーマ】 | 認知行動療法の理解と実践 |
【講師】 | 丸屋真也(IFM家族・結婚研究所 代表・相談室長) |
【日程】 |
(1)2012年6月22日(金)13:30〜16:00 認知行動療法の理解 (2)2012年7月13日(金)13:30〜16:00 認知行動療法の実践1 (3)2012年9月14日(金)13:30〜16:00 認知行動療法の実践2 (4)2012年10月12日(金)13:30〜16:00 認知行動療法の実践3 |
【定員】 | 50名 |
【会場】 | 健康教育サービスセンター(地下鉄・永田町駅下車徒歩4分) |
【参加費】 |
全4回分12,000円(LPC会員8,500円) *参加費には資料「認知行動療法の理解と実践」(一般財団法人ライフ・プランニング・センター刊)の代金も含まれます。 |
【関連URL】 | http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm |
【主催・問い合わせ先(平日9:00〜17:30)】 (財)ライフ・プランニング・センター TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5砂防会館5階 HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp |
■セミナーのお知らせ
【テーマ】 | 基礎から学ぶフィジカルアセスメント2012――(1)バイタルサインの異常からアセスメントできること |
【講師】 | 徳田安春先生(筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター総合診療科教授) |
【対象】 | 看護師、保健師、看護教員、介護支援専門員など |
【日程】 | 5月26日(土)10:00〜16:00 |
【会場】 | 健康教育サービスセンター(地下鉄・永田町駅下車徒歩4分) |
【参加費】 | 7,000円(LPC会員5,000円) |
【関連URL】 | http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm |
【主催・問い合わせ先(平日9:00〜17:30)】 (財)ライフ・プランニング・センター TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5砂防会館5階 HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp |
■セミナーのお知らせ
【テーマ】 | 第39回財団設立記念講演会――「いのち」つなげる「いのち」つながる |
【講師】 |
講演1「より添いささえる」――震災から1年私の想い 菅野武先生 丸森町国民健康保険丸森病院内科医長・東北大学大学院医学系研究科博士課程。仙台市出身。東日本大震災時、同院において患者の治療・搬送に当たった。2011年4月には米国TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれる。2011年12月に『寄り添い支える 公立志津川病院 若き内科医の3・11』を上梓した。 講演2「いのちつなげる いのちつながる」 日野原重明先生 聖路加国際病院理事長・同名誉院長。(財)ライフ・プランニング・センター理事長。東京都名誉都民、文化功労者、文化勲章を受章。2000年秋「新老人の会」を立ち上げ会長に。作年からは日本ユニセフ協会大使を務める。 |
【日程】 | 2012年5月19日(土)13:30〜16:30 |
【会場】 | 笹川記念会館 国際会議場(都営浅草線・泉岳寺駅より徒歩6分・JR田町駅より徒歩10分) |
【参加費】 | 1,000円。事前に往復ハガキでの申し込み(5/12消印有効、ただし満席になり次第締め切り)。 |
【定員】 | 800名 |
【関連URL】 | http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm |
【詳細】 | ファイルをダウンロード(PDF:887KB) |
【主催・問い合わせ先(平日9:00〜17:30)】 (財)ライフ・プランニング・センター TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5砂防会館5階 HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp |
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【参加要綱】 ひとり1枚の往復ハガキに、(1)郵便番号・住所、(2)氏名(ふりがな)、(3)電話番号、(4)会員の方は会員番号(LPC会員・新老人の会)を、会員で無い方は非会員と明記、返信用には住所・氏名を明記の上、下記までお送り下さい。 |
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【申し込み先】(5/12消印有効、ただし満席になり次第締め切り) 〒102−0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階 ライフ・プランニング・センター 「財団設立記念講演会」 係 |
■セミナーのお知らせ
【テーマ】 | 日野原重明先生の指導による東京都訪問介護員養成研修2級課程 |
【日程】 | 2012年4月24日(火)〜10月9日(火) |
【会場】 | 健康教育サービスセンター(地下鉄・永田町駅下車徒歩4分) |
【講師】 | 各領域の専門職 |
【関連URL】 | http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm |
【詳細】 | ファイルをダウンロード |
【主催・問い合わせ先(平日9:00〜17:30)】 (財)ライフ・プランニング・センター TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5砂防会館5階 HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp |
- この連載に関するお問い合わせ先
-
◆「新老人の会」に関するお問い合わせ先◆
財団法人ライフ・プランニング・センター「新老人の会」事業部
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5 砂防会館5F
TEL:03-3265-1907
FAX:03-3265-1909
ホームページ:http://www.lpc.or.jp/senior_soc/ -
◆日野原重明先生が顧問をつとめている「NPO法人医療教育情報センター」に関するお問い合わせ先◆
医療教育情報センター事務所
〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-27-16 ハイシティ代々木303
TEL:03-5333-0083
FAX:03-5333-0084
ホームページ:http://www.c-mei.jp/