第22回 実技試験問題
試験課題
金子薫さん(80歳)は左上下肢に麻痺があり、歩行はできません。起き上がりと立位には一部介助が必要です。
金子さんは、ポータブルトイレでの排せつを希望しています。ベッドで仰臥位になっている状態からポータブルトイレに座るまでの介助を行ってください。
なお、金子さんは、あなたの介助に同意しています。
金子さんは「はい」または「うなずく」のみです。
(モデルはズボンの下にスパッツをはいていますが、下ろすのはズボンだけです。)
金子さんは、ポータブルトイレでの排せつを希望しています。ベッドで仰臥位になっている状態からポータブルトイレに座るまでの介助を行ってください。
なお、金子さんは、あなたの介助に同意しています。
金子さんは「はい」または「うなずく」のみです。
(モデルはズボンの下にスパッツをはいていますが、下ろすのはズボンだけです。)
(試験時間は5分間以内です。)
試験室見取図
(注)試験室の出入口、試験委員等の位置は、見取図と異なる場合があります。
ポイント解説
介護福祉士国家試験「実技試験」を受験されたみなさま、お疲れさまでした。
試験開始直前まで課題の内容がわかりませんので、どのような問題が出題されるのかドキドキされたことと思います。今回は、第13回試験以来となる「排せつ」の場面でした。いつもどおりの力が発揮できたでしょうか。
早速、第22回介護福祉士国家試験「実技試験」について、問題の整理とポイントの解説をしていきたいと思います。
試験開始直前まで課題の内容がわかりませんので、どのような問題が出題されるのかドキドキされたことと思います。今回は、第13回試験以来となる「排せつ」の場面でした。いつもどおりの力が発揮できたでしょうか。
早速、第22回介護福祉士国家試験「実技試験」について、問題の整理とポイントの解説をしていきたいと思います。
問題の整理
1.「利用者」について
(1)金子薫さん(80歳)
(2)左上下肢に麻痺がある
(3)歩行はできない。起き上がり・立位に一部介助が必要
(4)金子さんは「はい」または「うなずく」のみ
2.介護内容
ベッドに「仰臥位」になっている金子さんを「ポータブルトイレに移乗」するまでの介助を行う。
3.試験室の環境(課題文には、表記されていないもの)
(1)ポータブルトイレはベッドの下方に置かれている。
(2)ベッド柵はない。
(3)ベッドの足元に掛け物が用意されている。
4.試験時間
5分間以内
(1)金子薫さん(80歳)
(2)左上下肢に麻痺がある
(3)歩行はできない。起き上がり・立位に一部介助が必要
(4)金子さんは「はい」または「うなずく」のみ
2.介護内容
ベッドに「仰臥位」になっている金子さんを「ポータブルトイレに移乗」するまでの介助を行う。
3.試験室の環境(課題文には、表記されていないもの)
(1)ポータブルトイレはベッドの下方に置かれている。
(2)ベッド柵はない。
(3)ベッドの足元に掛け物が用意されている。
4.試験時間
5分間以内
ポイント解説
採点のポイントになりそうな点を「出題基準」と「介護内容」「制限時間」に分けて考えてみたいと思います。
1.出題基準の点から
(1)安全・安楽
○ベッドから起き上がるとき、ベッドに端座位になるとき、ポータブルトイレに移乗するときなどに、転落・転倒・強打などの危険を伴う行為はなかったか。
○麻痺側の保護(膝折れの防止など)は適切に行うことができたか。
(2)自立支援
○「起き上がる」「端座位になる」「ズボンを下ろす」などの際に、利用者の残存機能を活用する介護を行うことができたか。
(3)個人の尊厳
○言葉遣いは適切であったか。
○「金子さん」と名前で呼ぶことができたか。
○ベッド上、ポータブルトイレに腰掛けているときなどに、目線を揃えて話しかけたか。
○羞恥心への配慮(掛け物を使用する)は適切に行うことができたか。
(4)事前の説明と同意
○介護を実施する前に、利用者に介護内容を「説明」し、「同意」を得ることができたか(課題文には「介助に同意している」と書かれているが、「具体的に」どのように移乗・移動をするのかなどを説明することができたか)。
(5)自己決定
○ポータブルトイレの位置(ベッドの頭側か足側か)を決めるときなど、利用者に選択してもらったか。
(6)健康状態の把握
○「介護開始前」「起き上がったとき」「ポータブルトイレに移乗したとき」などに「気分は悪くないですか」など、体調に配慮する声かけができたか。
2.介護内容の点から
(1)ベッドからの起き上がりから端座位
○利用者の右側(健側)から介助したか(健側から介助するのが一般的)。
○起き上がりの際、残存機能(右の肘や前腕)を使って行うことができたか(いろいろな方法があるので、適切であればどのような方法でも大丈夫だと思います)。
○下肢を整え、床に足底がきちんと着くようにして、座位を安定させることができたか。
(2)ポータブルトイレの準備
○ポータブルトイレの準備・設置は適切に行うことができたか。(※)
(3)ポータブルトイレへの移乗
○ベッドからの「立ち上がり」の際は、利用者の足を引き、麻痺側は保護するなど安全・安楽に行うことができたか。
○ポータブルトイレに腰掛けるときは、利用者にポータブルトイレの位置を確認してもらうなど、安全・安楽に行うことができたか。
(4)ズボンの着脱
○右側(健側)を利用者に下ろしてもらうなど、自立支援を意識しながら、適切にズボンを下ろす介助ができたか。
(5)羞恥心への配慮
○ポータブルトイレに腰掛けた後、掛け物をかけるなど、羞恥心への配慮を適切に行うことができたか。
3.制限時間
「5分間以内」に課題を終了することができたか。
1.出題基準の点から
(1)安全・安楽
○ベッドから起き上がるとき、ベッドに端座位になるとき、ポータブルトイレに移乗するときなどに、転落・転倒・強打などの危険を伴う行為はなかったか。
○麻痺側の保護(膝折れの防止など)は適切に行うことができたか。
(2)自立支援
○「起き上がる」「端座位になる」「ズボンを下ろす」などの際に、利用者の残存機能を活用する介護を行うことができたか。
(3)個人の尊厳
○言葉遣いは適切であったか。
○「金子さん」と名前で呼ぶことができたか。
○ベッド上、ポータブルトイレに腰掛けているときなどに、目線を揃えて話しかけたか。
○羞恥心への配慮(掛け物を使用する)は適切に行うことができたか。
(4)事前の説明と同意
○介護を実施する前に、利用者に介護内容を「説明」し、「同意」を得ることができたか(課題文には「介助に同意している」と書かれているが、「具体的に」どのように移乗・移動をするのかなどを説明することができたか)。
(5)自己決定
○ポータブルトイレの位置(ベッドの頭側か足側か)を決めるときなど、利用者に選択してもらったか。
(6)健康状態の把握
○「介護開始前」「起き上がったとき」「ポータブルトイレに移乗したとき」などに「気分は悪くないですか」など、体調に配慮する声かけができたか。
2.介護内容の点から
(1)ベッドからの起き上がりから端座位
○利用者の右側(健側)から介助したか(健側から介助するのが一般的)。
○起き上がりの際、残存機能(右の肘や前腕)を使って行うことができたか(いろいろな方法があるので、適切であればどのような方法でも大丈夫だと思います)。
○下肢を整え、床に足底がきちんと着くようにして、座位を安定させることができたか。
(2)ポータブルトイレの準備
○ポータブルトイレの準備・設置は適切に行うことができたか。(※)
※ポータブルトイレの準備・設置は、ベッドから起き上がる前に行っても、座位の安定を確認してから行ってもよいと思います。
※今回の試験では、ポータブルトイレに移乗するまでが課題でしたので、ポータブルトイレは、健側(ベットの上方)に設置するほうが介助しやすかったと思います。
※一般的に、移乗するときは健側に設置しますが、ポータブルトイレには車いす等と異なり「車輪」がついていません。ベッドからポータブルトイレへの移乗の際に健側から移乗すると、ベッドに戻る際は患側から移乗することになりますので、今回の試験では、患側(ベッドの下方)に設置して、患側から移乗してもよいと思われます。
※ポータブルトイレを常設している場合は、衛生面などから頭側(上方)に設置しないほうがよいといわれることもありますが、今回は常設せずに、排せつのたびに設置するという場面設定なので、ベッドの頭側(上方)に設置してもよいと思われます。
※今回の試験では、ポータブルトイレに移乗するまでが課題でしたので、ポータブルトイレは、健側(ベットの上方)に設置するほうが介助しやすかったと思います。
※一般的に、移乗するときは健側に設置しますが、ポータブルトイレには車いす等と異なり「車輪」がついていません。ベッドからポータブルトイレへの移乗の際に健側から移乗すると、ベッドに戻る際は患側から移乗することになりますので、今回の試験では、患側(ベッドの下方)に設置して、患側から移乗してもよいと思われます。
※ポータブルトイレを常設している場合は、衛生面などから頭側(上方)に設置しないほうがよいといわれることもありますが、今回は常設せずに、排せつのたびに設置するという場面設定なので、ベッドの頭側(上方)に設置してもよいと思われます。
(3)ポータブルトイレへの移乗
○ベッドからの「立ち上がり」の際は、利用者の足を引き、麻痺側は保護するなど安全・安楽に行うことができたか。
○ポータブルトイレに腰掛けるときは、利用者にポータブルトイレの位置を確認してもらうなど、安全・安楽に行うことができたか。
(4)ズボンの着脱
○右側(健側)を利用者に下ろしてもらうなど、自立支援を意識しながら、適切にズボンを下ろす介助ができたか。
(5)羞恥心への配慮
○ポータブルトイレに腰掛けた後、掛け物をかけるなど、羞恥心への配慮を適切に行うことができたか。
3.制限時間
「5分間以内」に課題を終了することができたか。
合格基準
実技試験の合格基準(何点以上が合格)が毎年発表されています。過去6年分を見てみると、次のとおり、およそ40〜60%の得点で、合格していることがわかります。
◇第16回 60.00点/100点
◇第17回 46.67点/100点
◇第18回 46.67点/100点
◇第19回 40.00点/100点
◇第20回 53.33点/100点
◇第21回 53.33点/100点
今回の試験は、比較的オーソドックスな問題でしたが、ベッドの左右どちらから介助するのか、ポータブルトイレをどのように置くかなど、「考えさせる」問題でしたのでとまどわれた方も多かったと思います。
実技試験の「緊張感」は受験した人にしかわからないものです。「平常心で臨むことができた人」「緊張のあまりふだんの力が発揮できなかった人」「何をしたか覚えていない人」などいろいろな方がいらっしゃると思います。
しかし、過去の合格基準を見ても分かるとおり、採点のチェックポイントのすべてを満たさなくても合格します。「緊張のあまりできなかった」という項目が4割くらいあっても大丈夫なのです。どのような介護方法でも何とか「最後まで」「安全に」できたのであれば、合格する可能性は十分にあります。
3月31日の合格発表までドキドキする日々が続きますが、試験の結果は運命にまかせて、疲れた体をいたわってくださいね。
本当にお疲れさまでした。
◇第16回 60.00点/100点
◇第17回 46.67点/100点
◇第18回 46.67点/100点
◇第19回 40.00点/100点
◇第20回 53.33点/100点
◇第21回 53.33点/100点
今回の試験は、比較的オーソドックスな問題でしたが、ベッドの左右どちらから介助するのか、ポータブルトイレをどのように置くかなど、「考えさせる」問題でしたのでとまどわれた方も多かったと思います。
実技試験の「緊張感」は受験した人にしかわからないものです。「平常心で臨むことができた人」「緊張のあまりふだんの力が発揮できなかった人」「何をしたか覚えていない人」などいろいろな方がいらっしゃると思います。
しかし、過去の合格基準を見ても分かるとおり、採点のチェックポイントのすべてを満たさなくても合格します。「緊張のあまりできなかった」という項目が4割くらいあっても大丈夫なのです。どのような介護方法でも何とか「最後まで」「安全に」できたのであれば、合格する可能性は十分にあります。
3月31日の合格発表までドキドキする日々が続きますが、試験の結果は運命にまかせて、疲れた体をいたわってくださいね。
本当にお疲れさまでした。