第21回 実技試験問題
試験課題
田村としさん(79歳)は右上下肢に麻痺があります。つかまれば立位はとれますが、歩行はできません。衣服の着脱や車いすへの移乗には一部介助が必要です。車いすの移動は全介助です。
昼食時に食べこぼして上衣が汚れました。自室に戻って着替えることを望んでいます。
食堂のいすに座っている田村さんを自室まで車いすで移動介助し、上衣を着替えるまでの介助をしてください。
なお、車いすの点検は済んでいます。
田村さんは「はい」または「うなずく」のみです。
昼食時に食べこぼして上衣が汚れました。自室に戻って着替えることを望んでいます。
食堂のいすに座っている田村さんを自室まで車いすで移動介助し、上衣を着替えるまでの介助をしてください。
なお、車いすの点検は済んでいます。
田村さんは「はい」または「うなずく」のみです。
(試験時間は5分間以内です。)
試験室見取図
(注)
1.モデルの着衣は、汚れているものとみなします。
2.試験室の出入口、試験委員等の位置は、見取図と異なる場合があります。
1.モデルの着衣は、汚れているものとみなします。
2.試験室の出入口、試験委員等の位置は、見取図と異なる場合があります。
ポイント解説
第21回介護福祉士国家試験「実技試験」を受験されたみなさま、お疲れさまでした。
第19回は「入浴の場面」、第20回は「食事の場面」でしたが、今年は、「衣服の着脱の場面」の設定でした。普段どおりの力が発揮できたでしょうか。
早速、第21回介護福祉士国家試験「実技試験」について、問題の整理とポイントの解説をしていきたいと思います。
第19回は「入浴の場面」、第20回は「食事の場面」でしたが、今年は、「衣服の着脱の場面」の設定でした。普段どおりの力が発揮できたでしょうか。
早速、第21回介護福祉士国家試験「実技試験」について、問題の整理とポイントの解説をしていきたいと思います。
問題の整理
1.「利用者」について
(1)田村とし さん(79歳)
(2)右上下肢に麻痺がある
(3)つかまれば立位がとれるが、歩行はできない
(4)衣服の着脱や車いすへの移乗には一部介助が必要
(5)車いすの移動は全介助
(6)昼食時に食べこぼして上衣が汚れている
2.介護内容
(1)いすから車いすに移乗する
(2)車いすで自室に移動する
(3)上衣を着替える
3.試験時間
5分間以内
(1)田村とし さん(79歳)
(2)右上下肢に麻痺がある
(3)つかまれば立位がとれるが、歩行はできない
(4)衣服の着脱や車いすへの移乗には一部介助が必要
(5)車いすの移動は全介助
(6)昼食時に食べこぼして上衣が汚れている
2.介護内容
(1)いすから車いすに移乗する
(2)車いすで自室に移動する
(3)上衣を着替える
3.試験時間
5分間以内
ポイント解説
以下、採点のポイントになりそうな点を「出題基準」と「介護内容」「制限時間」にわけて考えてみたいと思います。
1.出題基準の点から
(1)安全・安楽
○車いすへの移乗、自室への移動時に、転落・転倒・強打などの危険を伴う行為はなかったか。
○移乗・移動時、上衣の着脱時に、麻痺側の保護は適切に行えたか。
(2)自立支援
○車いすへの移乗時、上衣の着脱時などに、利用者の残存機能を活用する介護を行うことができたか。
(3)個人の尊厳
○言葉遣いは適切であったか。
○「田村さん」と名前で呼ぶことができたか。
○目線を揃えて話しかけたか。
(4)事前の説明と同意
○介護を実施する前に、利用者に介護内容を「説明」し「承諾」を得ることができたか(上衣を着替えるために自室に移動することの説明と承諾など)。
(5)自己決定
○上衣を選択する際に、「どちらがよろしいですか」などと質問し、利用者に選択してもらったか。
(6)健康状態の把握
○介護開始前、車いすへの移乗時や移動時、着脱時などに「気分は悪くないですか」など、体調に配慮する声掛けができたか。
2.「介護内容」の点から
(1)いすからの車いすへの移乗
設定として、「前にテーブルがある」「いすには肘掛けがない」「つかまれば立位が可能」という条件から、主に次の方法が考えられます。
どの方法でも利用者に事前に説明し、同意を得たうえで行い、安全・安楽であれば大丈夫だと思います(途中で中止されなければ大丈夫だったと判断できます)。
【Aの場合】
○左側(健側)に車いすを20〜45度を目安にセッティングしブレーキをかけたか。
○車いすのアームレストを活用して立ち上がったり、座ったりするなど、残存機能を活用できたか。
○右側(麻痺側)下肢を適切に保護したか。
○フットレストに足を乗せ、安楽な姿勢であることを確認したか。
【Bの場合】
○右側(麻痺側)から介助する、健側の足を引く、麻痺側の膝折れを防止するなど、立ち上がりの介助は適切に行えたか。
○立ち上がりの際にテーブルを活用するなど、残存機能を活用できたか。
○安定した立位をとることができたか。
○あらかじめ手の届く位置に車いすを移動し、安全に配慮しながら車いすをセッティングできたか。
○車いすに座る際に、位置を確認してもらうなど、安全に配慮して行うことができたか。
○フットレストに足を乗せ、安楽な姿勢であることを確認したか。
(2)自室への移動
○適切なスピードで車いすを操作することができたか。
○到着後は、ブレーキをかけたか。
(3)着脱の介助
○足を床に着け、安定した姿勢を確保したか。
○「脱健着患」の順に適切に行うことができたか。
○左側(健側)上肢を活用したか。
○右側(麻痺側)上肢を適切に保護したか。
3.制限時間
○「5分間以内」に課題を終了することができたか。
1.出題基準の点から
(1)安全・安楽
○車いすへの移乗、自室への移動時に、転落・転倒・強打などの危険を伴う行為はなかったか。
○移乗・移動時、上衣の着脱時に、麻痺側の保護は適切に行えたか。
(2)自立支援
○車いすへの移乗時、上衣の着脱時などに、利用者の残存機能を活用する介護を行うことができたか。
(3)個人の尊厳
○言葉遣いは適切であったか。
○「田村さん」と名前で呼ぶことができたか。
○目線を揃えて話しかけたか。
(4)事前の説明と同意
○介護を実施する前に、利用者に介護内容を「説明」し「承諾」を得ることができたか(上衣を着替えるために自室に移動することの説明と承諾など)。
(5)自己決定
○上衣を選択する際に、「どちらがよろしいですか」などと質問し、利用者に選択してもらったか。
(6)健康状態の把握
○介護開始前、車いすへの移乗時や移動時、着脱時などに「気分は悪くないですか」など、体調に配慮する声掛けができたか。
2.「介護内容」の点から
(1)いすからの車いすへの移乗
設定として、「前にテーブルがある」「いすには肘掛けがない」「つかまれば立位が可能」という条件から、主に次の方法が考えられます。
A テーブル、いすの位置はそのままで、いすに座った状態で身体を左に90度回転させ、車いすに移乗する。
B テーブルを支えに立位をとり、車いすに移乗する。
B テーブルを支えに立位をとり、車いすに移乗する。
どの方法でも利用者に事前に説明し、同意を得たうえで行い、安全・安楽であれば大丈夫だと思います(途中で中止されなければ大丈夫だったと判断できます)。
【Aの場合】
○左側(健側)に車いすを20〜45度を目安にセッティングしブレーキをかけたか。
○車いすのアームレストを活用して立ち上がったり、座ったりするなど、残存機能を活用できたか。
○右側(麻痺側)下肢を適切に保護したか。
○フットレストに足を乗せ、安楽な姿勢であることを確認したか。
【Bの場合】
○右側(麻痺側)から介助する、健側の足を引く、麻痺側の膝折れを防止するなど、立ち上がりの介助は適切に行えたか。
○立ち上がりの際にテーブルを活用するなど、残存機能を活用できたか。
○安定した立位をとることができたか。
○あらかじめ手の届く位置に車いすを移動し、安全に配慮しながら車いすをセッティングできたか。
○車いすに座る際に、位置を確認してもらうなど、安全に配慮して行うことができたか。
○フットレストに足を乗せ、安楽な姿勢であることを確認したか。
(2)自室への移動
○適切なスピードで車いすを操作することができたか。
○到着後は、ブレーキをかけたか。
(3)着脱の介助
○足を床に着け、安定した姿勢を確保したか。
○「脱健着患」の順に適切に行うことができたか。
○左側(健側)上肢を活用したか。
○右側(麻痺側)上肢を適切に保護したか。
3.制限時間
○「5分間以内」に課題を終了することができたか。
合格基準
実技試験の合格基準は、「課題の総得点の60%程度を基準として、課題の難易度で補正した点数以上の得点の者」となっています。
直近の動向を見てみると、次のとおりです。
◇第16回 60.00点/100点(衣服の着脱・なし)
◇第17回 46.67点/100点(衣服の着脱・あり)
◇第18回 46.67点/100点(衣服の着脱・あり)
◇第19回 40.00点/100点(衣服の着脱・あり)
◇第20回 53.33点/100点(衣服の着脱・なし)
★第21回 ???点/100点(衣服の着脱・あり)
「衣服の着脱」がある年の合格基準は低くなる傾向がありますので、今年の合格基準は、50点を下回るような気がします。
ですから、「途中で時間切れになった…」「右と左を間違えた…」「どのように介助したか全然覚えていない…」という方も合格基準を満たす可能性は十分にあると思います(ミスがあった方も希望は捨てないようにしましょう)。
筆記試験と異なり、実技試験は「何が正解」というポイントが見えにくいという特徴があります。受験生にとって合格発表までドキドキする日々が続きますが、結果は運命にまかせて、今はベストを尽くした自分を褒めてあげてくださいね。
筆記試験、実技試験と本当にお疲れ様でした。皆さまにとってよい結果であることをお祈りします。
直近の動向を見てみると、次のとおりです。
◇第16回 60.00点/100点(衣服の着脱・なし)
◇第17回 46.67点/100点(衣服の着脱・あり)
◇第18回 46.67点/100点(衣服の着脱・あり)
◇第19回 40.00点/100点(衣服の着脱・あり)
◇第20回 53.33点/100点(衣服の着脱・なし)
★第21回 ???点/100点(衣服の着脱・あり)
「衣服の着脱」がある年の合格基準は低くなる傾向がありますので、今年の合格基準は、50点を下回るような気がします。
ですから、「途中で時間切れになった…」「右と左を間違えた…」「どのように介助したか全然覚えていない…」という方も合格基準を満たす可能性は十分にあると思います(ミスがあった方も希望は捨てないようにしましょう)。
筆記試験と異なり、実技試験は「何が正解」というポイントが見えにくいという特徴があります。受験生にとって合格発表までドキドキする日々が続きますが、結果は運命にまかせて、今はベストを尽くした自分を褒めてあげてくださいね。
筆記試験、実技試験と本当にお疲れ様でした。皆さまにとってよい結果であることをお祈りします。