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保護者クレーム 劇的解決「話術」

内容紹介

教員を蝕む保護者の理不尽なクレーム

 学校では、保護者からのクレームが常軌を逸したものになっており、対応に当たる教員が疲弊しています。たとえば「給食のときに『いただきます』と言わせるな」「運動会を見そびれたからもう一回やれ」「教員は何があっても教室から一歩も離れず子どもを見ていろ」など、個人の主義主張の押し付けや無理難題、驚くようなクレームが保護者から寄せられます。いったん保護者の言いなりに対応してしまうと、クレームがさらにヒートアップしたり、学校や地域を巻き込んだトラブルに発展することもあります。そうなる前に、最初の窓口である担任の先生のところで、しっかりと手を打つことが必要です。

保護者のタイプとクレームのパターンがある

 著者の齋藤浩氏は、長年、公立小学校で保護者対応を担当してきました。毎日のように保護者に対応しているうちに、「理不尽な保護者にはある傾向(タイプ)がある」こと、また、「持ち込んでくるクレームにはいくつかパターンがあり、それぞれに対処すべき方法がある」ことをつかみ、話術で解決する方法を編み出しました。
 本書では、保護者のタイプを「シゾイド型(なんでも悪くとる)」と「ナルシスティック型(他者を打ちのめして優位に立ちたい)」に分類し、やってくるクレームのパターンごとに、24の「話術」を詳しく解説していきます。例えば、「不信感で凝り固まっている」「現実とかけ離れた論点に固執する」「教員をギャフンと言わせたい」「用意周到な保護者」などのクレームパターンに対する話術が3通りずつ、紹介されています。誰も勝たない、でも、誰も負けない、そして引きずらない。そんな劇的なスッキリ解決を目指します。

編集者から読者へのメッセージ

話の通じない相手を制していく「話術」スキル

 本書の24の「話術」と、ケースごとのダイアログ(対話例)を見ると、保護者が教師の揚げ足を取り、ちょっとした一言から教員が窮地に追い込まれてぐうの音も出なくなる…そんな背筋が寒くなるような情景が何度も出てきます。
 しかし、著者のスタンスは一貫して淡々としており、保護者と戦うわけでも相手をやっつけるわけでもありません。保護者の話の中から、矛盾や葛藤、不安や望みを汲み取って、そこを糸口にしながら、相手の怒りや悲しみが収まるように、また、落としどころへと話が向かうように仕向けて行くという、すばらしいスキルを展開しています。ぜひ、全国の学校の先生方に、この「話術」を身につけていただいて、先生方が保護者対応に疲弊せず、子どものために全力投球できるようになることを願っています。

主な目次

第1章 敵を知り、己を知れば百戦危うからず
1 まずは相手を知ること/2 まずは理不尽な保護者のタイプを分析する/3 教員の心を蝕んでいくクレーマー/4 何でも悪く受け取るシゾイド型クレーマー/5 教員をギャフンと言わせたいナルシスティック型クレーマー

第2章 シゾイド型クレーマーに対する話術
1 シゾイド型クレーマーを相手に知っておくべきこと
2 同じ話題(クレーム)に終止する場合の話術
 話術① 論点を焦点化する/話術② 無理なことは無理だと伝える/話術③ 解決していない部分の具体的対策を提示する
3 不信感で凝り固まっている場合の話術
 話術④ 代替案を求める/話術⑤ 適切な教職員を同席させる/話術⑥ 保護者の不信感情を子ども中心の議論に切り替える
4 現実とかけ離れた論点に固執する場合の話術
 話術⑦ 具体的資料を提示する/話術⑧ 専門家を同席させる/話術⑨ ポジティブな側面を見つけ視点を移行する
5 解決策を提示しても受け入れない場合の話術
 話術⑩ 子どものリスクをほのめかす/話術⑪ 試行期間を提示する/話術⑫ 子どもとの合意を提案する

第3章 ナルシスティック型クレーマーに対する話術
1 ナルシスティック型クレーマーの特徴
2 教員をギャフンと言わせたい相手への話術
 話術⑬ 堂々と爽やかに謝罪する/話術⑭ 謝罪と反論のバランスをとる/話術⑮ 主語を「子ども」にして伝える
3 用意周到な相手への話術
 話術⑯ 面談までの時間を確保する/話術⑰ 論理性を重視する/話術⑱ 聞くだけ聞いて矛盾点を探る
4 絶対的な答えが存在しない問いへの話術
 話術⑲ 主訴の内容を整理して可能なものを選択する/話術⑳ ときに弁証法的な帰結にする/話術㉑ 今回限定だというニュアンスで他の解決例を出す
5 揚げ足を取る相手への話術
 話術㉒ 話し合いの本筋に立ち返る/話術㉓ 問題の軽重を整理する/話術㉔ 子どもの声を織り交ぜる

著者情報

1963(昭和38)年、東京都生まれ。横浜国立大学教育学部初等国語科卒業。佛教大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)。佛教大学研究員、日本獣医生命科学大学非常勤講師を歴任。現在、神奈川県内公立小学校児童支援専任教諭。日本国語教育学会、日本生涯教育学会会員。2024年10月財務大臣表彰を受彰。著書に『教師という接客業』『追いつめられる教師たち』『お母さんが知らない伸びる子の意外な行動』(いずれも草思社)、『ひとりで解決!理不尽な保護者トラブル対応術』『チームで解決!理不尽な保護者トラブル対応術』(いずれも学事出版)などがある。