道なき道をゆく! オルタナコンサルがめざす 強度行動障害の標準的支援 第26回 コンサル導入事例❸ 避けて通れない障害者福祉コンサルのお金の話

2026/03/26

この記事を監修した人

竹矢 恒(たけや・わたる)

一般社団法人あんぷ 代表 社会福祉法人で長年、障害のある方(主に自閉スペクトラム症)の支援に従事。厚生労働省「強度行動障害支援者養成研修」のプログラム作成にも携わる。2024年3月に一般社団法人あんぷを設立し、支援に困っている事業所へのコンサルテーションや、強度行動障害・虐待防止などの研修を主な活動領域とする。強度行動障害のある人々を取り巻く業界に、新たな価値や仕事を創出するべく、新しい道を切り拓いている。

 

一般社団法人あんぷ

 


 第24回と25回は、コンサルを導入いただいた2つの事業所での実際の声をご紹介しました。今回は、誰もが気になるコンサルに関する「お金の話」をしてみたいと思います。


相場がないという構造的な課題

 私が仕事としている障害者福祉におけるコンサルテーションは、まだ業界の中で十分に文化として定着しているとは言い難い状況です。コンサルタント側も、依頼する事業所側も、「いくらが妥当か」という相場観を持ちづらいのが実情ではないでしょうか。

 

 一般的なコンサルティングは、経営戦略や組織改革、マーケティングなど広範な領域を扱い、その成果に応じて高額な報酬が設定されることもあります。一方で、障害者福祉のコンサルテーションは、支援の質の向上やケース対応、職員のかかわり方の見直しといった、より実践的で限定された領域が中心です。そのため、「部分的な支援である」という認識が先行し、結果として価格も抑えられやすくなっています。

 

 また、成果の可視化が難しいという点も影響しています。売上や利益のように数値で直接示しにくい領域であるため、「どれだけの価値があったのか」が伝わりづらく、価格設定の根拠も曖昧になりがちです。

 

 さらに、社会福祉法人の収入の多くが給付費によって成り立っているという構造も見逃せません。限られた財源の中では、人件費や日々の運営費が優先され、外部への支出は慎重にならざるを得ません。その結果、「コンサルにお金を払う」という意思決定自体が難しくなり、相場が形成されにくいという循環が生まれています。


それでもコンサルテーションが必要な理由

 しかし、現場の課題は確実に高度化しています。

 

 支援力の低下、虐待リスクの顕在化、強度行動障害への対応など、現場が抱える課題は一層複雑になってきています。経験や勘だけでは対応しきれない場面も増え、体系的な知識や専門的な視点が求められるようになりました。

 

 こうした状況において、外部の専門家によるコンサルテーションは、現場に新たな視点をもたらすだけでなく、支援の再構築を進めるきっかけにもなります。内部にいるだけでは見えにくい課題を言語化し、構造的に整理し、実行可能な形に落とし込む。このプロセスそのものに価値があるのだと思っています。

 

 また、コンサルテーションは単なる助言にとどまりません。実際の支援場面に即した具体的な改善策の提示や、職員へのフィードバック、さらには組織としての意思決定の支援まで含まれることが多く、現場にとっては「外部の知恵を取り入れる装置」として機能するのだと思っています。


「片手間のコンサル」でいいのかな?

 現在、全国で支援のコンサルテーションを担う多くの方は、現場職員が本業の傍ら兼業で行う「兼業型」が主流だと思います。日常の業務の延長線上で、他法人の相談に乗る、研修を行うなどのかたちでかかわるケースが多く見られます。

 

 しかし、コンサルテーションという仕事は、本来そこまで簡単なものではありません。対象となる現場の状況を把握するためのアセスメント、課題の構造化、優先順位の設定、実行可能な改善策の設計、そしてそれが定着するまでのフォローが必要です。この一連のプロセスには、時間も労力も、そして高度な専門性も求められます。

 

 さらにいえば、コンサルテーションは「人」にも「組織」にも働きかける仕事です。支援方法の変更だけでなく、職員の認識やチームの関係性、意思決定の仕組みなどにも影響を与えます。その意味では、非常に責任の重い仕事だと認識しています。

 

 こうした営みを片手間で担う構造のままでよいのでしょうか。私はいつもこのことに危機感を感じています。この問いは、業界として真剣に考える必要があるのではないでしょうか。

 

 このままでは、「コンサルは一時的なアドバイス」という位置づけにとどまり、本来の価値が発揮されないまま終わってしまう可能性があります。


人材不足時代における「投資の転換」

 現在、障害福祉分野に限らず、福祉業界は深刻な人材不足に直面しています。業務負担の大きさや支援の難しさから離職が続き、その補填のために採用コストが増え続けています。

 

 しかし、ここで一度立ち止まって考える必要があります。

 

 そのコストの使い方は本当に適切なのか。人が辞めた後に新しい人材を採用するための費用と、今いる職員を育成し、働き続けられる環境を整えるための費用。この二つを比較したとき、どちらがより持続可能な投資なのか。

 

 支援の質が高まり、職員が自信をもって働けるようになれば、少なくとも今よりは離職は減少します。職員が育ち、組織としての対応力が上がれば、結果としてサービスの質も向上します。

 

 コンサルテーションは、そのための有効な手段の一つです。

 

 外部の専門性を活用することで、育成のスピードと質を高めることができます。つまり、コンサルにお金をかけるということは、「余裕がある法人の選択」ではなく、「将来のコストを抑えるための戦略的投資」ととらえることができるのではないでしょうか。


コンサルを「福祉の仕事」にするために

 コンサルテーションを福祉の中で一つの仕事として定着させるためには、適切な対価の設定が不可欠です。専門性の高い支援を継続的に提供するためには、コンサルタント側にも安定した収入基盤が必要です。

 

 もし十分な報酬が得られないのであれば、この分野に人材が集まらず、結果として質の高いコンサルテーション自体が提供されにくくなります。それは、業界全体にとって大きな損失です。同時に、制度的な整備も求められます。コンサルテーションの価値が公的に評価され、一定の枠組みの中で活用できるようになれば、導入のハードルも下がるでしょう。

 

 しかし、それ以上に重要なのは、福祉業界の意識の変化です。外部にお金を払うことを「贅沢」や「例外」ととらえるのではなく、「支援の質を高めるための当然の投資」として位置づけ直す必要があります。

 

 コンサルテーションは特別なものではなく、本来は日常的に活用されるべき資源です。その価値をコンサルタントが可視化し、事業所側が投資として理解する。この双方の変化があって初めて、この文化は根づいていきます。

 

 福祉の仕事は、人の人生に深くかかわる仕事です。

 

 だからこそ、その質を高めるための仕組みにも、適切にお金をかける必要があります。コンサルテーションに対価を支払うという行為は、単なる外注ではありません。

 

 それは、「よりよい支援を実現するために学び続ける」という意思表示だと思います。そして何より、この「支援コンサルタント」という仕事そのものが「福祉の仕事」として成立していくことには、大きな可能性と夢があると私は感じています。

 

 現場で培われた知識や実践が、別の現場を支え、さらに広がっていく。その過程で専門家の卵たちが現場で実践を積む。現場で育った専門家が、キャリアパスとしてコンサルテーションの仕事に就く。

 

 そうした循環が生まれることで、福祉の質そのものが底上げされていくはずです。

 

 この文化が根づくかどうかが、これからの福祉の質を大きく左右していくのではないでしょうか。