精神疾患のある本人もその家族も生きやすい社会をつくるために 第5回:高校生時代①――希望に満ち溢れていた高校生活のスタート
2025/04/01

第5回は、高校時代に焦点を当てます。
みなさん、こんにちは。2001年生まれの大学生で、精神疾患の親をもつ子ども・若者支援を行うNPO法人CoCoTELIの代表をしている平井登威(ひらい・とおい)です。
「精神疾患の親をもつ子ども」をテーマに連載を担当させていただいています。この連載では、n=1である僕自身の経験から、社会の課題としての精神疾患の親をもつ子ども・若者を取り巻く困難、当事者の声や支援の現状、そしてこれからの課題までお話ししていきます。
第4回では、中学生時代の支えについて焦点を当てました。今振り返ってみると、中学生時代に学校が居場所だったということは本当に意外でした。時間が経って、少し余裕が出て、俯瞰できるようになってから過去の経験を見つめてみると、また違った見方が出てくることを改めて認識しています。それは、この記事で書いている内容は、あくまでも現在悩んでいる当事者の書いた記事ではないことも意味しています。だからこそ、読んでくださっている皆さんには、この記事に書かれていることがあくまでも僕自身のn=1の経験や感じ方であり、現在悩み・葛藤している子ども・若者全員に共通するものと錯覚しないでいただけたらと思っています。
第5回となる今回は、高校時代に焦点を当てたいと思います。この時期は、サッカー中心の生活のなかで、家族に関する悩みにも小さな変化があった時期でした。
【著者】
平井登威(ひらい・とおい)
2001年静岡県浜松市生まれ。幼稚園の年長時に父親がうつ病になり、虐待や情緒的ケアを経験。その経験から、精神疾患の親をもつ子ども・若者のサポートを行う学生団体CoCoTELI(ココテリ)を、仲間とともに2020年に立ち上げた。2023年5月、より本格的な活動を進めるため、NPO法人化。現在は代表を務めている。2024年、Forbes JAPANが選ぶ「世界を変える30歳未満」30人に選ばれる。
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NPO法人CoCoTELI
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プロを目指した夢のスタート
プロサッカー選手になる――。
子どもの頃からの夢を叶えるために、希望と期待を胸にサッカー強豪校といわれる高校に入学しました。
とても希望に満ち溢れた入学ではありましたが、もちろん進学時の葛藤もありました。
自身の家庭環境のなかでそういった進学先を選ぶということに対する葛藤。
もしかしたら、自分は家族に元気になってもらうために、家族のために、プロサッカー選手という偽りの夢を描き、進学先を決めているのではないかという葛藤。
そんな大きな葛藤のなかでも、最後にサッカーを中心に進学先を選んだということは、当時の僕にとって大好きなサッカー、夢の力は本当に大きかったのだと思います。
しかし、現実は甘くありませんでした。高校生活が始まって間もなく、怪我をしてしまいました。その怪我は一度や二度では終わらず、繰り返され、加えて問題行動もあり、入学してからの数か月間はほとんどサッカーができない状態でした。
当時の父は僕がサッカーをする姿を見ることを何より楽しみにしていたこともあり、毎週のようにAチームの公式戦を見に来ては、将来の僕の活躍を期待していました。それなのに僕は、怪我や自分自身の問題で期待に応えることができていませんでした。
当時の自分は、「自分のサッカーがうまくいっていないと家庭が荒れる」というそんな不安から、親に部活のことを聞かれたときは「うまくいってるよ」と嘘をついて、平気なふりをしていましたが、本当は不安や情けなさ、焦りで心はいっぱいでした。
家庭環境の変化
そんな高校生活のスタートでしたが、高校に入ってから生活リズムが大きく変わりました。
朝練で早く家を出て、夜は自主練などで遅く帰る日々。自然と家族と過ごす時間は減りました。中学の頃は頻繁にあった親同士の喧嘩や家族内の衝突も、目にする機会は少なくなっていきます。しかし、それは家族の衝突が減ったことを意味してはいません。
そんな状況を目の当たりにするたびに、自分が家庭の現状から目を背け、逃げているのではないか? という罪悪感や、学校や部活で家にいない時間の大きな不安は大きくなっていきました。
高校生活がスタートし、中学時代と比べると俯瞰的に自身を見ることができるようになっても、家族の問題を相談するハードルは高いままでした。
両親はよく、僕が試合に出ているか否かにかかわらず試合を観にきていたので、周囲から「とーいの親、仲良いよね」と言われることもあり、そのたびに「そんなことないない。よく喧嘩してるよ!」と仲良いことは否定しつつ、本当に悩んでいることは悟られないよう誤魔化したりもしていました。
当時の自分にとっては、周囲のコミュニティがすべてであり、そのなかで自分の弱さを晒すのが怖くて、ずっと心の奥底にしまい込んでいたんだと思います。
改めて振り返って
希望に満ち溢れていたはずの高校のスタートが一転。サッカーが家庭を安定させるはずが、サッカーすらうまくいかず、サッカーも家庭も地獄のような状況だった高校1年生でした。
学校や部活の影響で家族と過ごす時間が減ったということはポジティブであった反面、物理的な接触時間が減っても精神的な部分においての変化は大きくなく、逆に罪悪感や不安にもつながっていたのかもしれません。
今回は高校入学〜1年生くらいまでについて振り返りましたが、次回は高校2年、3年時代について振り返っていけたらと思います。
プロを夢見て,強豪の高校に入学しました