用語解説 障害者手帳とは

2025/04/08

 障害者手帳制度は、障害のある人の生活支援と社会参加を促進するための重要な制度です。3種類の手帳があり、それぞれ対象者や申請方法、メリットが異なります。以下、対象者、取得方法、手帳があることで得られるメリットなどをお伝えします。

 

障害者手帳の種類と対象者

 障害者手帳には、「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の3つの種類があります。具体的な対象疾患などは以下のようになっています。

 

1.身体障害者手帳
対象と等級:
・視覚障害(1~6級)
・聴覚障害、平衡機能の障害、音声言語・そしゃく機能障害(1~6級)
・肢体不自由-上肢、下肢、体幹(1~7級)
・内臓または免疫機能の障害-心臓機能、じん臓機能、呼吸器機能、ぼうこう・直腸機能、小腸機能、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能、肝臓機能の障害がある方(1~4級)。
上記の疾患等が一定期間以上持続し、日常生活や就労に支援が必要とされる方が交付の対象となります。

 

2.療育手帳(自治体によって名称が異なります)
対象:知的障害のある方。原則18歳未満の方。
等級:重度「A」と中軽度「B」に大別されることが多い。
 知的障害の判定基準や手帳交付基準は自治体により異なるため、市区町村の障害福祉担当窓口に確認してください。

 

3.精神障害者保健福祉手帳
対象:統合失調症、気分障害、てんかん、発達障害、高次脳機能障害などの精神疾患がある方。
等級:1級から3級まで。
上記の疾患が初診から6か月以上経過しており、日常生活や就労に支援が必要とされる方が交付の対象となります。

 

手帳の申請方法

 手帳取得の対象になるかどうか、必要やメリットがあるかどうかも含めて、まずは市区町村の障害福祉窓口に相談してみましょう。下記の手続き方法や必要なものは市区町村によって異なる場合もありますので、確認しながら進めてください。

 

1.身体障害者手帳
①市区町村の障害福祉窓口で申請書を入手する。
②身体障害者福祉法第15条による指定を受けた医師(15条指定医)に診断書・意見書を作成してもらう。(15条指定医かどうかは、主治医に聞くか、市区町村窓口で確認)。
③必要書類を市区町村の障害福祉窓口に持参して申請する。
(申請書、診断書・意見書、顔写真、マイナンバーカード)
④申請から交付まで約1か月程度。

 

2.療育手帳(自治体により、手帳の名称、申請方法や手順が異なります)
①市区町村の障害福祉担当窓口で申請書類を入手する。
②必要書類を市区町村の障害福祉窓口に持参して申請、判定予約を申し込む。
(申請書、顔写真、マイナンバーカード、自治体や年齢によっては診断書)
③判定機関(児童相談所など)で判定(知能検査や診断)を受ける。
④申請から交付まで約2~4か月程度。
療育手帳は、取得後も一定期間ごとに再判定が必要になります。

 

3.精神障害者保健福祉手帳
①市区町村の障害福祉担当窓口で申請書類を入手する。
②主治医に診断書を作成してもらう。
③必要書類を市区町村の障害福祉窓口に持参して申請する。
(申請書、診断書、顔写真、マイナンバーカード)
④申請から交付まで約2か月程度。

 

利用可能な福祉・医療サービス

1.身体障害者手帳
・補装具費の支給
・自立支援医療費の支給
・重度障害者医療費助成制度

 

2.療育手帳
・自立支援医療費の支給
・重度障害者医療費助成制度

 

3.精神障害者保健福祉手帳
・自立支援医療費の支給

 

4.共通サービス
・公共サービスや通信料等の減免(次の「そのほかの手帳取得のメリット・活用法」参照)
・障害者総合支援法に基づく各種サービス
・就労支援の利用(ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センターなど)

 

そのほかの手帳取得のメリット・活用法

 公的な医療や福祉サービスのほか、税の減免、公共料金の減免、公共施設利用料の割引などのサービスを受けることができます。自治体の窓口や勤務先、サービス提供業者に申請が必要なものや、その場で手帳を提示すれば受けられるものなど、さまざまです。

 

1.税金の控除
・所得税・住民税:障害者控除、特別障害者控除、同居特別障害者控除
・相続税・贈与税:特例あり
・自動車税:自動車取得税、自動車税、軽自動車税の減免

 

2.公共料金の減免
・水道料金:基本料または使用料の減免(自治体により異なる)
・NHK受信料:全額または半額免除
・携帯電話料金:基本使用料や各種サービス使用料が割引
・郵便料金:葉書の無料配布や、点字郵便物等の郵便料金が無料
・ガソリン代:助成(自治体により異なる)

 

3.公共交通機関の割引
・JR:長距離乗車券の割引等(精神障害者保健福祉手帳は対象外)
・航空券:国内線の運賃が3~5割引(航空会社により異なる)
・バス:運賃が3割引~無料(自治体やバス会社により異なる)
・タクシー:運賃が1割引(自治体やタクシー会社により異なる)
・高速道路料金の割引(事前申請必要。精神障害者保健福祉手帳は対象外)

 

4.公共施設の利用料割引(施設や自治体による)
・宿泊施設:宿泊料割引や助成(施設による)
・テーマパーク:入場料の割引(同伴者1名も適用される場合あり)
・映画館:映画代が割引(同伴者1名も適用の場合あり)
・動物園・美術館:入場料が半額~無料
・カラオケ:利用料が割引(グループ全員に適用される場合あり)

 

5.その他のサービス
・住宅リフォーム費用の給付(自治体による)
・就労支援サービス(就労移行支援、就労継続支援A型・B型事業、就労定着支援事業)
・預貯金の元本350万円までの利子が非課税
・ネットスーパーの配送料の減免(企業による)

 

 これらのサービスや控除は、障害者手帳の種類や等級、また居住地域によって適用範囲が異なります。詳細については、お住まいの自治体の担当窓口や、サービス提供業者にお問い合わせください。

 

障害者への就労支援

 障害者手帳を持っていることで、障害者雇用促進法に基づく企業の障害者採用枠を活用できます。これにより、一般採用枠に加えて就職や転職の機会が広がります。2025年、2026年には、障害者雇用を増やすための法改正施行が予定されています(2025年=障害者雇用の除外率の引き下げ、2026年=障害者雇用率を、常勤40人以上の企業2.5%⇒同37.5人以上の企業2.7%へ)。企業は障害者雇用率の達成に向けて、より積極的に障害者雇用に取り組むことが求められます。

 

障害者手帳のアプリ「MIRAIRO ID」

 「MIRAIRO(ミライロ)ID」は、障害者手帳を電子化したスマートフォン用アプリです。2019年にリリースされ、全国の約4,000事業所で使えるようになっています。スマホに情報を入れることで障害者手帳を持ち歩く負担を減らすことができ、個々人が受けられるサービスを探しやすくなるメリットもあります。

 

1.主な特徴
・身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の3種類を登録可能
・アプリのダウンロードや利用は無料
・アプリ提示で、公共交通機関、博物館、レジャー施設などで割引サービスを受けられる
・オンラインチケットの販売(障害者割引適用)
・障害種別に応じた生活情報の配信
・レジャー施設等の障害者向けクーポンの提供
・必要なサポート情報の登録、アシスト機能

 

2.登録・利用方法
・アプリをスマートフォンにダウンロード
・障害者手帳を撮影し登録
・導入施設でアプリを提示する

 

まとめ

 障害者手帳の取得に抵抗を感じる場合もあるかもしれませんが、手帳の取得によって、さまざまな経済的な支援や福祉サービスを受けられるようになり、生活の質の向上や就労機会の拡大につながるメリットもありますので、ご自身や家族に必要な支援やサービスを検討したうえで、取得について考えてみましょう。障害者手帳の取得を検討している方は、まず居住地の市区町村の障害福祉担当窓口に相談し、詳細な情報を得ることをお勧めします。
 また、障害者手帳制度以外にも、障害基礎年金や、居宅介護サービスなどの支援もあり、障害者手帳の等級とは別の等級・障害区分があります。混同しないようにして情報を収集し、障害の状態や生活環境に応じて適切な支援やサービスを選択し、活用することが重要です。