認知症とは? 種類・症状に合わせたかかわり方のポイント 第3回

2022/12/02

レビー小体型認知症の原因・症状・かかわり方のポイント

認知症のある人とかかわるうえでは、種類や症状などについての適切な医学知識を理解することが大切です。

 

この記事では、認知症看護のスペシャリストである石川容子さんに監修いただき、レビー小体型認知症に関する医学知識とそれをふまえたかかわり方のポイントを紹介します。

 

目次

 

レビー小体型認知症の基礎知識

レビー小体型認知症とは、レビー小体というたんぱく質が脳に蓄積し、神経細胞が壊れることによる進行性の認知症です。

 

症状は、アルツハイマー型認知症とは異なり、初期には記憶障害は目立たない一方で、注意力や視空間認知機能の低下、抑うつ症状が目立つことが多くあります

 

また、パーキンソニズムがみられるため、転倒に注意が必要です。

 

進行とともに身体機能が低下して嚥下機能障害が生じやすく、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性が高まります

 

 

特徴的な症状

レビー小体型認知症に特徴的な症状は、次の4つです。

 

認知機能の変動
→数時間~数日(もしくは数か月)で認知機能が明らかに変動する

具体的な幻視
→実際にはいないものがありありと見える
 (「子どもが座っている」「ヘビがいる」など)

レム睡眠⾏動障害
→睡眠中に突然叫ぶ、暴れる

パーキンソニズム
→手足がふるえる、筋肉がこわばる、動作がゆっくりになる、小刻み歩行になる

 

その他、よくみられる症状として、「自律神経障害(便秘、尿失禁など)」「抑うつ(何となく元気がない、気分が落ち込むなど)」「嗅覚の低下」などがあります。

 

また、比較的早期から「歩行が難しくなる」「座位がとりにくくなる」「誤嚥しやすくなる」などの身体症状がみられるのが大きな特徴です

 

以上の症状があることをふまえ、ケアの方針を立てるようにしましょう。

 

かかわり方のポイント

ここでは、レビー小体型認知症のある人へのかかわり方のポイントについて、特徴的な症状ごとに解説します。

 

認知機能の変動

数時間~数日(もしくは数か月)で認知機能が明らかに変動する「認知機能の変動」は、具体的には次のような行動につながります。

 

◆ 朝食は自力で全部食べたのに、昼食は何もしようとしない

◆ 前日は歩行もスムーズでレクリエーションに参加できたのに、今日はまったく動けない

 

このような場合に、できていたときを基準にして「本人にやる気がない」と考えてはいけません。

 

状態がよいときとダメなときの差が激しいのは症状によるものであるため、そのときの状態に合わせてかかわることが大切です

 

また、人によっては、よいときとダメなときの一定の変動周期がみられることもあります
どのような周期で状態が変化するのかを把握できると、よりよいかかわり方ができるため、そこに注目してみるのもよいかもしれません。

 

幻視

「幻視」がある人の具体的な訴えとして、

 

◆ 「ご飯に虫が入っている」

◆ 「私のベッドに黒い服を着た男の人が寝ている」

 

といったものがよく聞かれます。

 

実際にはいない人や動物、虫などがリアルに見える幻視の多くは、それと見間違うようなものがあるときや薄暗くて物がはっきり見えないときに出現しやすいです

 

幻視そのものをなくすことはできませんが、見間違いによる混乱を予防するために、環境を調整することが大切です

 

たとえば、「人がいると錯覚しないように洋服をかけたハンガーは片付ける」「ヘビと見間違えないようにコード類は目につかないようにする」などが効果的です。

 

また、レビー小体型認知症のある人は、幻視を自覚している場合と自覚していない場合のどちらもあります。

 

幻視を自覚している場合には、「幻の人がいるのですね。実際はいないから大丈夫ですよ」などと伝えると、安心してもらえます。

 

一方で、幻視を自覚していない場合には、否定せずに、「それは怖いですね」など、その人の不安や恐怖心に共感することが求められます。

 

レム睡眠行動障害

「レム睡眠行動障害」とは、眠りが浅い時間(レム睡眠時)に、大声を出したり暴れたりすることをいいます。

 

対応としては、本人や周囲に危険がなければそのまま見守りましょう

 

本人や周囲に危険が及びそうであれば、「照明をつけて明るくする」「目覚まし時計を鳴らす」などによって自然な目覚めをもたらすように働きかけることが必要です。

 

 

パーキンソニズム

 

レビー小体型認知症のある人は、パーキンソニズムがあるため、歩こうとするときに足がすくみ、最初の一歩が出にくいことがあります。

 

最初の一歩が出るとスムーズに歩行できることがあるため、横に並び、「大きく足を出しましょう。せーの、いちに、いちに……」などと声をかけて一緒に歩くことが効果的です。

 

また、歩行の途中で立ち止まったり、歩行のスピードがだんだんと上がって止まれなくなったりすることもあります。
転倒しないように見守ることが大切です

 

 

便秘しやすい

レビー小体型認知症のある人は、自律神経の不調によって腸の蠕動運動が弱まり、スムーズに排便できなくなるため、便秘しやすくなります。

 

日ごろから、排便の状況や食欲、お腹が張っていないかを注意して見ておくことが大切です

 

 

薬への過敏性

レビー小体型認知症のある人は、薬が効きすぎたり、薬によって症状が悪化したりすることがあるため、抗精神病薬による治療には注意が必要です。

 

様子がいつもと違う場合には、すぐに医療職に連絡しましょう

 

 

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ここまで、レビー小体型認知症の原因・症状と、それをふまえたかかわり方のポイントを解説しました。
利用者さんの日々の暮らしを支える実践の参考にしていただければ幸いです。

 

他の認知症の症状・かかわり方についても別記事で解説していますので、ぜひチェックしてみてください。

 

» アルツハイマー型認知症についてはコチラ!

» 前頭側頭型認知症についてはコチラ!

» 血管性認知症についてはコチラ!

 

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(監修)石川 容子 氏
 医療法人社団 翠会 和光病院 看護部長
日本看護協会看護研修学校認知症看護学科修了、認知症看護認定看護師取得。千葉大学大学院看護研究科修士課程修了。
認知症専門病院である、医療法人社団 翠会 和光病院にて、認知症看護のスペシャリストとして活躍。

 

※この記事は、「おはよう21」2021年4月号増刊pp.8~23をもとに作成したものです。