誌上ケース検討会 第113回 老健施設から認知症専門病棟へ転院となったケースへの支援を振り返る (2009年11月号掲載)
2026/09/15
このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。
スーパーバイザー
奥川 幸子
(プロフィールは下記)
事例提出者
Yさん(介護老人保健施設・社会福祉士)
クライアント
利用者:Bさん・81歳・男性
事例の提出理由
施設において「手のかかる利用者」は職員に暗に疎まれる。特にこの事例のB氏のように、他者に手を上げたり、常時目が離せない利用者は受け入れ先が限られてしまう。B氏のケアについては、「なぜそのような行動をとるのか」「どうすれば落ち着いた入所生活を送ってもらえるのか」という討議を職員間でかなり重ねた。しかし、その方法がわからなくなったときに職員の気持ちが分かれ「そのような人には退所してもらおう」という声が上がるようになった。
B氏の退所後、しばらくはB氏の話題に触れるのがタブーのような雰囲気だった。この事例から施設として学べることは何なのか、振り返りのために助言をいただけたらと思います。
施設の概要
・入所定員:100名(うち一般棟55名、認知症専門棟45名)
・国が拘束廃止をうたう前より取り組みが行われており、県の「身体拘束廃止推進モデル施設」の指定を受けている。
事例の概要
○既往歴・現病歴
・アルツハイマー型認知症
○心身状態
・要介護3
・ADL面で大きな問題はない。独歩可能。ただし、認知症状のために、以下の諸状況がある。
・尿・便意はあるがうまく排泄できないため、定時のトイレ誘導が必要。紙パンツを常時着用。
・記憶、記銘力の低下がある。
・コミュニケーションがうまくとれない。こちらが話しかけていることはわかるので何か喋ろうとはするが、つじつまが合わない。
・1対1の対応が必要な状態であるが、B氏は手伝ってもらうのを好まないため、介助をしようとする職員に対して暴言・暴力が見られる。
○家族
妻(78歳)と二人暮らし。息子(51歳・他県在住)と娘(48歳・隣市在住)がいる。娘の自宅は車で15分ほどと近いため、頻繁に実家を訪れるなど介護にはかなり協力的である。
ここから先は、誌面の PDFファイル にてご覧ください。
プロフィール
奥川 幸子(おくがわ さちこ)
対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。
