【第1回】困難な問題を抱える女性への支援に関する検討会

2026/08/12

第1回困難な問題を抱える女性への支援に関する検討会における報告・議論について紹介します。

 令和8年7月29日に、「第1回困難な問題を抱える女性への支援に関する検討会」が開催されました。

 「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が令和6年4月に施行されて以降、検討会の開催は初めてです。そのため、検討会の趣旨説明、施策の現状、課題の確認がなされた後に、検討会での「検討の視点(案)」等について協議が行われています。

 本記事では、その流れに沿って検討会の内容を紹介します。

 


1. 検討会の趣旨等

 困難な問題を抱える女性への支援については、売春防止法に基づく婦人保護事業から脱却し、支援対象者の意思の尊重と福祉の増進、人権の擁護等を理念とする新たな支援の仕組みを構築する「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(令和4年法律第52号、以下「法」)が令和6年4月より施行されています。

 この法律は、女性が日常生活又は社会生活を営むにあたって、女性であることで様々な困難な問題に直面することが多いことに鑑み、困難な問題を抱える女性への支援に関する必要な事項を定めることにより、施策を推進し、人権が尊重され女性が安心・自立して暮らせる社会の実現に寄与することを目的としています(法第1条より)。
 また、法附則第2条第2項において、施行後3年を目途として施行状況について検討を加え、必要であればその結果に基づいて所要の措置を講ずることとされています。「困難な問題を抱える女性への支援に関する検討会」は、現在の支援の実施状況、支援にかかわる人材の育成・支援者支援の状況等を踏まえ、より多くの対象者に必要な支援を届けるための体制や方策について検討することを目的として開催されます。

 加えて、「困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針」(令和5年厚生労働省告示第111号)の対象期間が令和6年度から令和10年度までとされていることを踏まえ、次期基本方針(令和11年度~令和15年度)の策定に向けた検討も行われます。

 


2.施策の現状と課題

 女性支援事業は、本人の立場に寄り添って相談に応じ、様々な機関と連携・協力して、一人一人のニーズに応じて包括的な支援を実施するものです。女性相談支援センター一時保護所女性自立支援施設(※)や、福祉事務所、そのほか民間シェルターや行政施設の連携・協力により、困難な問題を抱える女性の自立をサポートしています。

 

1. 女性相談支援センターの概況

 

 女性相談支援センター(全国50か所)と女性相談支援員による相談延べ件数は増加傾向で高水準を維持しています。令和6年度における相談内容は、配偶者や親族・交際相手からの暴力被害が約55%と過半数を占めますが、生活困窮や家庭問題、精神・妊娠等の医療関係など多岐にわたります。相談経路は本人からが約8割を占め、福祉事務所やその他の相談機関、警察を経由しての相談もみられます。
 課題として、一時保護所からの退所にあたり、関係機関と退所後の支援方針について十分な検討を経ずに単独で決定したり、退所先の市町村に伝えていなかったりするセンターが全体の2割程度あることや、退所後のフォロー体制に地域格差がある(小規模自治体ほどフォロー率が低い)ことが挙げられます。

   一方、女性相談支援員数は毎年増加傾向にあり、令和7年時点で全国に1,770人が配置されています。しかし、約8割が非常勤であることや、高年齢化の進行(60歳以上が約41%)が課題です。また、市区での配置率は55.8%である反面、町村での配置率は1.2%にとどまり、小規模自治体ほど配置が進んでいないことがわかります。配置していない理由としては、他部署で対応可能であることや、人員不足、ニーズがないことが挙げられています。さらに、女性相談支援員が配置されている職場の環境面をみてみると、約4割が「1人職場」であるため、支援員の孤立を防ぎ、専門性を向上させるスーパービジョン体制の整備が図られています。
 

2. 一時保護所・女性自立支援施設における支援の実施状況

 

 一時保護所(47か所)や女性自立支援施設(47か所)の入所者数は、10年前と比べ4〜5割減少しています。入所につながらない理由としては、本人の同意が得られないことや、施設側の受入が難しい場合があることが挙げられています。また、令和6年度の女性自立支援施設入所者のうち、6割以上の女性が何らかの障害や病気を抱えており、自傷行為の恐れがある人や、高齢者・障害者などの受入を制限している施設もあります。
 加えて、現在の一時保護所・女性自立支援施設では、DV加害者等からの追跡のおそれのある入所者を守るため、原則としてすべての入所者に対して厳しい生活制限(携帯電話の使用・外出・通勤通学の禁止)を一律に課しており、そのために本人の入所同意が得られず、個々の入所者の状況に応じた支援を行うことが困難な状況にあります。秘匿性のない入所者向けには、生活制限を大幅緩和したサテライト型の一時保護所・施設を確保するモデル事業を実施するなど、より柔軟な自立支援・地域移行支援が検討されています。

 

3. 関係団体との協働・連携

 

 複雑・複合化した女性の課題に対応するため、公的機関と民間団体が連携した「官民協働等女性支援事業」が実施されています。アウトリーチやSNS相談、安心・安全な居場所の提供、ステップハウスを通じた自立支援、アフターケアに至るまで、切れ目のない支援体制の構築を図っています。また、地域で支援を担うNPO等の民間団体を育成・強化するため、アドバイザーの派遣や実地訓練、立ち上げ支援を行う「民間団体支援強化・推進事業」を展開し、官民連携による地域支援基盤の拡充を進めています。
 また、地域で関係機関や民間団体が対等な立場で情報共有や支援方針を協議する「支援調整会議」の設置は自治体の努力義務となっていますが、特に小規模自治体では設置の遅れが顕著です。個別のニーズに応じた包括的支援のため、地域内での官官・官民ネットワークの構築が求められています。

 

4. その他

 

 上記以外にも、困難な問題を抱える女性への支援体制を強化するため、多角的な施策が展開されています。教育・啓発、人材育成の面では、特設サイト「 あなたのミカタ 」等による周知や、管理職・支援者向けの体系的な研修、資格要件の見直しを通して支援者の質の向上と確保を図っています。また、調査研究においては、実態把握や新たな支援モデルの検証を進めるとともに、支援の質の公正な評価と権利擁護を目的として、女性自立支援施設や一時保護所における第三者評価基準の策定と実施を進めています。
 自治体の基本計画策定状況は、策定が義務である都道府県基本計画は100%完了している一方、努力義務にとどまる市町村基本計画は、策定済みが16%程度にとどまり、特に人口が少ない小規模な自治体ほど、「策定の予定なし」である割合が高い傾向にあります。地域間の体制整備の格差は、依然として顕著な課題です。

 


3.今後の検討の視点

 現状を踏まえ、今後の検討会で着目すべき視点が、下記のとおり複数挙げられました。

 

<自治体における支援状況>
○ 都道府県・市・町村それぞれにおける相談支援体制の現状と適切な役割分担について
○ 他分野との連携による支援の現状と連携強化に向けた方策について
<公的支援機関における支援状況>
○ 一時保護所や女性自立支援施設における支援の実施状況と受入促進に向けた今後の方策について
○ 地域定着に向けた伴走支援の必要性と支援強化に向けた方策について
<民間団体との協働による支援状況>
○ 民間団体との協働による支援の実施状況と取組強化に向けた方策について
○ 地域における支援体制の強化に向けた官民協働のあり方について
<支援に関わる人材の育成・支援者支援の状況>
○ 支援に関わる人材の配置・育成の現状と、支援の継続や質の向上に向けた方策について
○ 支援者を支える体制や支援機関間の連携の強化に向けた方策について

 

 法の施行から2年が経過した今、基本方針にある「支援対象者が全国どこにいたとしても必要十分な支援を受ける体制を全国的に整備していく」ことを念頭に、法律の施行状況なども踏まえ、より多くの対象者に必要な支援を届けるための体制や方策について検討することが求められています。

 


4.まとめ

 今後は、来年(令和9年)3月の報告書のとりまとめに向け、全7回の検討会の開催が予定されており、令和9年12月ごろには、次期基本方針告示が公布される見込みです。
 検討会全体について知りたい方は、「 第1回 困難な問題を抱える女性への支援に関する検討会 会議資料 」をご覧ください。
 また、今後の検討会の開催予定は、 厚生労働省のホームページ をご確認ください。



※女性相談支援センター

 法第9条に基づき、都道府県が設置する(指定都市も任意で設置可能)。相談、情報提供、助言などの支援や、関係機関との連絡調整を行う。また、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(平成13年法律第31号、以下「DV防止法」)第3条に基づく配偶者暴力相談支援センターとしての機能を有する。

※一時保護所

 法第9条第3項第2号及び第6項に基づき、主に女性相談支援センターに併設され、緊急時における一時保護、心理的支援や衣食住の提供などを行う。また、DV防止法第3条第3項第3号及び第4項に基づく、配偶者からの暴力を受けた者の一時保護も担う。

※女性自立支援施設

 法第12条に基づき、都道府県や社会福祉法人などが設置している。困難な問題を抱える女性を入所させて、生活環境の整備や同伴家族への支援等の保護を行う。また、DV防止法第5条に基づく、配偶者からの暴力を受けた者の保護も担う。