誌上ケース検討会 第78回 知的障害者更生施設からの退所事例への支援を考える(2006年11月号掲載)
2025/05/13

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。
スーパーバイザー
野中 猛
(プロフィールは下記)
事例提出者
Nさん(知的障害者更生施設・生活相談員)
提出理由
施設に入所中の男性・Aさんから事例提出者に対し、「将来の生活について相談したいことがある」と申し出があった。Aさんは、軽度の知的障害者(療育手帳B-2)であり、就労を目指して職場実習(ミニトマト栽培)に行き始めて6カ月が経とうとしている。今後、Aさんが目標とする生活を実現するためには、どのようなケアプランを立てて支援をしていけばよいのか、アドバイスをいただければと思う。
事例の概要
○クライアント Aさん・26歳・男性
○生活歴 昭和55年、市内の病院にて出生。保育園に通っていた頃(5歳)に体調不良があり、受診すると腎臓疾患(ネフローゼ)と軽度の知的障害(療育手帳B-2)と診断される。その後は、入院しながら養護学校に通うようになる。高等部を卒業するまで入退院を繰り返す。平成13年(21歳)、知的障害者更生施設に入所し、現在に至る。
○コミュニケーションの状況
・意思表示:言葉での意思表示は十分に行える。しかし、内向的であり、積極的に自分から話すのは苦手である。
・他者からの意思伝達の理解:十分にできる。
・その他の意思伝達等:電話での連絡、手紙等での伝達はある程度行える。
○日常生活の状況
・ほとんどは自立している(衣服の着脱、食事、入浴、排泄、就寝時の配慮、移動、洗濯)
・一部支援が必要な項目:身だしなみ、衛生面(洗顔、歯磨き等)、衣服の整理、清掃、調理、シーツ交換・布団干し、金銭管理等
ここから先は、誌面の PDFファイル にてご覧ください。
プロフィール
野中 猛(のなか たけし)
1951年生まれ。弘前大学医学部卒業。藤代健生病院、代々木病院、みさと協立病院、埼玉県立精神保健総合センターを経て、日本福祉大学社会福祉学部教授。専攻は臨床精神医学、精神障害リハビリテーション、地域精神保健、精神分析学など。主な著書に『心の病 回復への道』(岩波新書)、『図説ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『多職種連携の技術(アート)』(以上、中央法規出版)、『ソーシャルワーカーのための医学』(有斐閣)などがある。 2013年7月逝去。