今月のおはよう21 摂食嚥下障害の人を支える 口からおいしく食べるためのケア

2025/04/25

『おはよう21』2025年6月号から、特集(摂食嚥下障害の人を支える 口からおいしく食べるためのケア)の内容を一部ご紹介いたします。

 

「口からおいしく食べること」は利用者のQOLに大きくかかわります。
特に摂食嚥下障害のある利用者ができるだけ長くそうした状態を続けるには、介護職のさまざまな支援が欠かせません。

 

本特集では、摂食嚥下機能が低下した利用者への食事ケアのポイントについて、現場でありがちなお悩みに答えていきます。


食事介助のお悩み解消Q&A

「食べる」という認識が起きず、なかなか食事が進みません

人それぞれに食事の好みは違いますが、私たちはふだん五感(視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚)を使って「食べる」という意識をもち、おいしさや幸せを感じ、健康な身体をつくっています。
しかし、認知機能の低下によって食べ物の認識が難しくなったり、疾患などによって感覚が失われると、食べるための動作(座位保持や食具を持って食べるなど)ができなくなります。
こうして食事摂取がスムーズにいかなくなると、食事介助が必要になります。

 

介助される側は、食べる準備が何もないまま、口に食べ物が入ってくると驚いてしまいます。食事介助は「今から食事が始まる」ということを認識してもらってから開始しましょう。
「これからご飯を食べますよ」と声をかけるだけでも認識が大きく変わります。

 

介助者の顔ばかりを見て、食べ物に目が向かないケースもよくあります。
そのような場合は、お皿を視野に入れたり、一口量に盛られたスプーンを見てもらうなどの工夫を声かけと一緒に行うことで、認識が促されて開口がスムーズになることもあります。

 

また、口に入れるものが、食べ物なのか飲み物なのかを認識できない場合もあります。
飲み物が入ったコップが唇に触れたときに「飲みますよ」のように声をかけると、飲み物であることが認識でき、自然と口が飲もうとする形になります。

 

さらに、食事介助を行う際は、利用者と目線の高さを合わせることが大切です。
上から見下ろす姿勢は利用者に恐怖感を与えやすく、スムーズに食事が進まなくなります。
また、真正面からではなく横から介助すると安心して食べられますので、介助者がどの位置にいるかも重要です。

 

 

食事形態が適切なのか、判断できないときがあります

「周りの方々と同じおいしいものを食べてほしい」という思いや、「ゆっくり食べれば全量食べられるから」などの理由で、毎回の食事に1時間以上を費やしているケースも少なくありません。
そんなときは食事形態の変更を検討します。

 

食事形態の種類には、噛む・まとめる・飲み込むという口の機能を助けるためのさまざまな食事形態(日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整分類2021の分類表)があるので、利用者の状態に合わせて選択します。
しかし、実際にはその日の覚醒状態や体調、食事のメニューなどによって利用者の状態は変化するため、「今の口の機能がどの程度の状態なのか」の判断は難しく、食事形態の変更に踏み切れないことも多いでしょう。

 

まずは、食事にかかる時間は30~40分を目安にして、食べ終えられるかを確認しましょう。
ただし、時間だけでなく、メニューによっても食べやすさは異なるので、疲労感が強くないか、食べる速度に変化がないかどうかなどの点についても観察し、食事がどの程度その人にとって負担になるのかを判断することが大切です。
そして利用者にとって負担が多いと判断されたら、食事形態を変更します。

 

どのような食事形態がふさわしいのかを考えるうえでは、口腔残渣の観察が有効です。
食後の口腔ケアで、奥歯と歯茎の間に食材が残っていたり、うがいをしたときに食べかすがたくさん出てくるといったことが増えてきたら、噛む力が弱くなっている兆候です。

 

この場合は噛む力が弱くても噛みつぶせるように、柔らかくなるまで加熱したり、薄くスライスしたりして、食材の切り方や加熱の仕方などで形態を工夫しましょう。

 

また、上顎に食べ物がべったりくっついていることもあります。これは、唾液が少なく、舌の動きが弱くなっているサインです。
水分が少なくパサパサしているもの、パンのようにモグモグしているうちにねっとりした団子状になるものが、上顎にくっつきやすくなります。

 

こうした場合には、水分やとろみを程度に加え、ふんわり・とろり・つるりとした形状にすることで、食べやすさが向上するでしょう。

 

 
執筆

五島朋幸 歯科医師/ふれあい歯科ごとう 代表(第1章)
赤木由紀子 管理栄養士/口腔栄養サポートチームレインボー(第2章)
越後雅史 理学療法士/江戸東京訪問看護リハビリステーション(第2章)
篠原弓月 歯科衛生士/口腔栄養サポートチーム レインボー代表(第3章)


以上は、『おはよう21』2025年6月号の特集の内容の一部です。このほかにも本誌では、下記のトピックを取り上げ解説しております。ぜひお手に取ってご覧ください。

 

特集

1 「 食べる」ケアはますます大事に!
2 食事介助のお悩み解消Q&A
3 おいしく食べるためにできること

 

『おはよう21 2025年6月号』

●本書のお買い求めは、 中央法規オンラインショップ が便利です。
年間購読(増刊号2冊含む計14冊)のお客様は、1冊あたりの割引に加えまして毎月の送料をサービスさせていただきます!
さらに、年間購読の方限定の動画配信サービスもご利用いただけます!

●電子版も好評発売中!
販売サイトは Amazon 富士山マガジンサービス から順次拡大予定!