Q&Aでわかる!介護施設の看護実務 【Q8】

2025/05/09

「看護師」の職場といえば、真っ先に病院が思い浮かぶと思います。しかし、実際の職場は多機にわたり、介護施設もその一つです。本連載では、介護施設に勤務する看護師の業務内容や考え方、介護職などの他職種との連携について、特に重要な項目をピックアップしてQ&Aの形で紹介していきます。

 

【著 者】

前川 静恵(まえかわ・しずえ)
社団法人是真会病院病棟師長、慈恵病院看護部長、長崎市医師会保健福祉センター、老人保健施設ハーモニーガーデン副施設長、有限会社Gracias かいごの花みずき施設長、株式会社パールの風代表取締役、社会福祉法人鳳彰會副理事長などを経て、現在社会福祉法人鳳彰會理事、特別養護老人ホームひこばえ施設長、ケアハウスひこばえの苑施設長。看護師、介護支援専門員。
主な著書に、『訪問介護事業所サービス提供責任者仕事ハンドブック』中央法規出版、2006、改訂版2009、三訂版2013、『デイサービス業務実践ハンドブック』中央法規出版、2014、改訂版2015、など。

 

Q8 主治医に報告するのはどんなとき?

[Answer]

 主治医に報告しなければならないのは、以下のときなどが考えられます。
・ 施設での看護師では利用者の状態変化に対応が困難と思われた場合の指示受け時
・ 状態変化に対して看護師が対処できた場合でも、その経過・結果などの報告
・いつもの状態と違いを感じ、主治医の判断を仰ぎたい場合

 

[解 説]

 医師が常勤でない施設では、看護師の判断力により利用者の状態が左右されることになります。例えば、普段から血圧変動のある利用者などに対して、具体的な数値に応じた対応(医師への報告の要否を含む)を事前に取り決めておくことが重要です。ただし、事前の取り決めに基づいて対応した場合でも、後日(往診時など)主治医への報告は必須です。看護師の中には、報告することにためらいを感じる人もいるかもしれませんが、「判断や対応に迷いがあり、自信が持てない」場合は、手遅れになることを防ぐために主治医に報告し指示を仰ぐべきです。主治医への報告は、利用者の健康を守り、苦痛の軽減、悪化の防止、他の疾患の併発防止、そして早期回復に繋がります。例えば、発熱に対して事前に指示された与薬で解熱した場合でも、その経過を報告することで主治医は利用者の状態をより深く把握できます。また、現時点では明らかな異常が見られなくても、「肺の雑音が気になる」「喘鳴が気になる」といった看護師の判断で主治医に報告することで、肺炎などの重篤な状態を未然に防ぐことができる可能性があります。介護職員の些細な気づきが重篤な疾患の早期発見に繋がった例もあります。
 報告する際は、「5W2H」を意識し、主治医に状態が正確に伝わるように、具体的に伝えることが重要です。

 

※本連載は、前川静恵先生の著書『Q&Aでわかる!介護施設の看護実務―特養の実地指導・連携・ケア』(中央法規出版、2022年10月発行)をもとに作成しています。施設看護師の業務をさらに深く知りたい方は、本書をぜひご覧ください。