対人支援に役立つ 会話例で納得!コーチングのすすめ 第2回 コーチングの2つの基本フロー

2025/04/17

 ケアマネジャーには、さまざまな場面で円滑なコミュニケーションをとることが求められます。一方、実際の場面では「困難さ」を抱えるケアマネジャーも少なくありません。本連載では、人間関係構築や多職種連携に役立つコーチングの手法を紹介します。

 

この記事の監修者

眞辺一範(株式会社ふくなかまジャパン代表取締役社長)
1998年、日本初のプロコーチを養成する「コーチ・トレーニング・プログラム」を履修し、認定コーチを取得。現在は国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ、(一財)生涯学習開発財団認定マスターコーチ、コーチ・エィ アカデミアクラスコーチ、日本コーチ協会京都チャプター事務局長としてコーチングの活動や実践に取り組んでいる。

 

コーチングの型のモデル「コーチングフロー」

 第1回では「コーチング」とは何かを学び、そのうえでコーチングには型があることを紹介しました。実は、この型にはモデルがあり、その代表的なモデルの1つが「コーチングフロー」といわれるものです。これはコーチングを進めるうえでベースとなるもので、8つのステップを会話の流れに取り入れながらコミュニケーションを展開します。

 

 

 

 また、コーチングフローに沿った典型的な質問例をまとめてみました。8つのステップを実際に進めていくにあたり、この質問例をみながら活用するだけでコーチングの基本的な対話を体感できます。

 

 

 

コーチング型のモデル「GROWモデル」

 もう1つの代表的なモデルは、「GROW(グロー)モデル」です。GROWモデルでは、最初に目標(Goal)を設定し、現状(Reality)を把握します。ここで目標と現状のギャップの分析と、どのようにその溝を埋めるのかという具体的な行動計画を立てます。そして、解決に役立つ資源(Resource)を見つけ、その目標達成に向けた選択肢や方法(Options)を可能な限り引き出します。そのうえで相手の意思(Will)を確認して行動を促すわけです。この頭文字をとってGROWモデルと呼ばれています。

 
ステップ 方法 質問例
GOAL(目標) 具体的な目標を明確化する ・解決すべき問題は何ですか? ・何を目標にしますか? ・締切日までに成果物を提出するための対策を一緒に考えましょうか?
R Reality(現状) 事実や本当の問題を把握 する ・何が起こっているのですか? ・現在、どんな状況にありますか? ・成果物の現状を教えてもらえますか?
Resource(資源) 人・モノ・金・情報・時間などの資源を発見する ・何があれば問題を解決できますか?
O Options(方法) 多くの可能性から対策の選択肢を考える ・対応策をいくつか抽出してみませんか? ・どのような方法で改善・実行しますか? ・具体的な対応策をほかにも考えてみましょうか?
W Will(意思) 本人のやる気や目標達成の意思を確認する ・対応策のうち、どの案を始めたいですか? ・いつから実行に移す予定ですか? ・いつ頃までに目標を達成しますか? ・対応策は全部で3つですね。ちなみにあなたはどれを試してみたいですか?
 

2つの基本を使いやすくしたものが眞辺流「コーチングの型」

 「コーチングフロー」も「GROWモデル」も、実践で使うには相当なトレーニングが必要です。そこで、2つのモデルに共通している「目標」「現状」「ギャップ」の明確化の部分を取り出して対人援助者が使いやすくなるようにつくったものが眞辺流の「コーチングの型」(第1回参照)です。
 一方向のコミュニケーションは一方的に指示をするだけのティーチングになりがちです。コーチングとして機能するためには、相手の意見を引き出す双方向的なコミュニケーションが必要なのです。