誌上ケース検討会 第76回 錯綜する家族関係のなか要介護高齢者夫婦の権利擁護をどうすすめるか(2006年9月号掲載)
2025/04/15

スーパーバイザー
奥川 幸子
(プロフィールは下記)
事例提出者
Yさん(地域福祉権利擁護事業・専門員)
提出理由
クライアントは要介護1の73歳の男性。妻は半年前に大腿骨を骨折し、現在寝たきりとなっている(要介護5)。孫娘が金銭管理等を支援しているが、滞納や借り入れなどもあり、経済的理由などからサービス導入が困難な状況にある。まだアセスメントが十分にできておらず、見えていない真実が隠されている可能性もあるが、精神的な支えになっている孫娘や親族との関係を保ちながら、医療・福祉サービスの導入を図ることが必要と考えている。金銭管理部分を本事業にスムーズに移行し、クライアント夫婦のために適切な金銭支出をしていくために、今後できることを検討したい。
クライアント
B氏(73歳・男性・要介護1)
妻(71歳・要介護5)
事例の概要
H17年8月、妻が大腿骨骨折により入院。退院後、寝たきりとなり、夫婦で介護保険を申請。夫は要介護1、妻は要介護5の認定となるが、金銭的な面からサービスを導入できず。行政(高齢福祉課)から本事業に相談が入り、H17年12月半ばから少しずつサービスの導入を図る。
隣県に住む長男がいるが、金銭管理などの本人たちの世話は長女(遠方に統合失調症で長期入院中)の21歳の娘が実施している。しかし、医療費等の滞納や消費者金融からの借入の返済などの対応が十分ではない。また、本人たちは食事摂取がきちんとなされていないため、妻は栄養失調と診断され、褥瘡が進む
1年ほど前から長男の息子が近くの職場に通うために、本人宅に寝泊まりしている。
ここから先は、誌面の PDFファイル にてご覧ください。
プロフィール
奥川 幸子(おくがわ さちこ)
対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。